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毎週ショートショートnote 2024

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たらはかにさんの募集企画「#毎週ショートショートnote」参加作品の2024年分まとめです。 3月第2週から、ここまで1年皆勤です。 🤗 お気に入りがあったら、教えてくださいね。…
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#短編小説

【ショートショート】コンプラ不倫の終焉

【ショートショート】コンプラ不倫の終焉

「不倫て不思議よね」
 静江は朝食後のお茶をいれながら、夫の賢介に言った。
「……なんで?」
「だって悪いことだって言われてるのに、罰する法律がないんだもの」
「そりゃあ……な」
「コンプライアンスの問題がない罪ってことなのね」
 賢介はうつむいて湯呑みに口をつける。
「罪には違いないが、法律じゃなく倫理上の問題だからなあ」
「倫理と法律って、整合性が取れないのかしら?」
「それは、君の専門だろう

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【学園ショートショート】禁断の復習Tシャツ

【学園ショートショート】禁断の復習Tシャツ

「はーい、じゃあ今日はここまで。今日のポイント、しっかり復習しなさーい!」
 そう言って先生はスーツの上着を脱いだ。
 下はTシャツ。
 毎回、授業が終わると先生は上着を脱いで、その日の授業のまとめが書かれたシャツを晒す。
 僕は目を皿のようにして、先生のTシャツを見つめる。
 他の生徒も全員が血眼で見つめている。
 当然だ。
 スタイル抜群の美女、葛城先生の豊満な美ボディを包むTシャツから目を離

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【ショートショート】トラネキサム酸笑顔の悲劇

【ショートショート】トラネキサム酸笑顔の悲劇

 今咲舞子はその入院病棟で最も人気の看護師だった。
 理由は笑顔。

 舞子の人好きのする笑顔は相手もきれいな笑顔にすると言われた。
 まるでいい美容液を使ったような笑顔をくれるという噂から、舞子の看護を希望する女性患者も少なくなかった。
 しかも担当する患者は手術後の回復も早いという評判も立っていた。
 一人の医師は言った。
「彼女の笑顔はトラネキサム酸入りだね」

 しかし悲劇が起こった。
 

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【ショートショート】アメリカ製保健室と先生の幻想

【ショートショート】アメリカ製保健室と先生の幻想

 うちの高校の地元は、アメリカのとある地方都市と姉妹関係にある。

 なので、様々な相互交流の話が聞こえてくるが、この学校に関する話はとんとなかった。
 だが、新学期が始まった今日、はじめてアメリカからこの学校に来たものがあるという事実を知らされた。

 アメリカ製の保健室と、教師が一名来たという。

 保健室がアメリカ製というのは、設備の話だろう。
 だがその保健室の先生とは?
 男子は色めきた

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【ショートショート】出撃!機動ツノのある東館

【ショートショート】出撃!機動ツノのある東館

 K県鬼形市。

 家を災厄から守る鬼瓦の名産地として有名な街である。
 市章も鬼をイメージしたデザインで、街角には鬼の置物や鬼瓦形のポストなどが多く見られる。

 その中心部には、市庁舎をはじめとする公共施設の建物が整然と並んでいた。

 が、その最も東側に位置している建物だけは用途がはっきりしなかった。
 市外からの来訪者が地元民に「あの建物は何?」と尋ねても、意味ありげな笑みを浮かべて首を振

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【ショートショート】思い出のズ⚪︎ドコ節 または行列のできるリモコン

【ショートショート】思い出のズ⚪︎ドコ節 または行列のできるリモコン

 その中華料理屋は、ある歌の一節とともに私の青春の一ページと言えた。

 ♪そっと目配せ 焼き豚を ちょっと多めに2、3枚♪

 赤いチャイナ服を着て、店でウエイトレスとしていた彼女は、歌の通りに私に人知れぬサービスをしてくれていた。
 そんなサービスの一つが、店の表にかかっている電光掲示板だった。
 その店は地下にあり、外からは見えない行列が階段に続くことがあった。
 そこで、待っている客の数を

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【冒険ショートショート】印西ジョーンズと伝説のお子様ランチ または、洞窟の奥はお子様ランチ

【冒険ショートショート】印西ジョーンズと伝説のお子様ランチ または、洞窟の奥はお子様ランチ

 冒険派考古学者として名高い日系アメリカ人、印西ジョーンズ博士は南米某国のジャングルで、洞窟の奥深くへと足を踏み入れた。

 ついに発見したのだ。
 この洞窟はポヤチャチャン戦士の神殿と呼ばれ、最奥部に黄金の戦士像が祀られているはずだった。

 印西博士は、この洞窟を捜索中に行方不明となった仲間から短いメッセージを受け取っていた。

「洞窟の奥はお子様ランチ」

 これは黄金像をめぐる罠を示すもの

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【ショートショート】レトルト三角関係

【ショートショート】レトルト三角関係

「ちょっと、あんた。いい加減、彼から離れなさいよ!」
 辛口が言った。
「あんたこそ、どっか行っちゃいなよ。この泥棒猫!」
 中辛が言った。

 とある台所の戸棚の奥。
 3つのレトルトカレーが押し込まれたまま、持ち主に忘れ去られていた。
「甘口様は、私の方が好きなのよ!」
「何言ってるの! 私の方が甘口様とは気が合うのよ!」
 中辛と辛口に挟まれた甘口カレーは、長い間この痴話喧嘩に悩まされていた

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【ショートショート】箱入り娘猫ミームは突然に

【ショートショート】箱入り娘猫ミームは突然に

 友達から聞いた最近の猫ミーム。

 箱入り娘猫がいきなり人間になる……?
 あるある……って、そんなことあるわけないじゃない。

 ……と、思ってたらあった。

 うちの箱入り娘猫ユカが、いきなり人間になったのだ。

「リンちゃん、おはよー!」
 猫耳はそのままで明るくあいさつするユカ。
「いきなり話せるようになったのね」
 いつも何を考えてるんだか、気持ちもわからないような箱入り娘猫だったのに

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 【ショートショート】断捨離人形の館

【ショートショート】断捨離人形の館

 父が死んだ。

 私を捨てた父が。
 幼い頃から娘の私にほとんど興味を示さなかった父は、ある日忽然と姿を消したのだ。
 女手一つで私を育てた母は、苦労がたたって早くに世を去った。

 私が父のその後を知ったのは、成人後。

 遠い土地で商売に成功し、新しい家庭を築いていた。
 かつて母は、父があらゆる面で理想を追求し、家族すらそのための道具と思っている人間だと言っていた。
 その通りだった。
 

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