マガジンのカバー画像

【詩作】

13
10代の頃から書き溜めてきた詩を放出しています。 たまに新作もあり。
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩作】海を思う

【詩作】海を思う

トマトの裏側に夢を描いて
ヨーロッパの家具の上に置いた
昔の映画のような日々を
送りたかったと思う

銀色の自転車で川沿いを走りながら
時々海を思う
今日も頭痛がしてる

同じ猫を見つけた気がして
尻尾についていった午後
呼び鈴のような鳴き声と
空色の空が竜巻に消える瞬間
ステンドグラスのカケラと
真昼に見える惑星の液体を
冷えた指で混ぜ合わせたら
海が見える、と思った

誰にもわからない言葉を

もっとみる
【詩作】台風の日

【詩作】台風の日

園田駅を過ぎた頃に雨足は強まって
蒸した車内にリズムが鳴った
大きな川こえて いつだったか
君に会ったことを懐かしんだ
競馬場はがらんとしてて、
寒気がこっちまで来たようだよ
弱冷車のくせして 鳥肌が立った腕をさすって
スマホをいじりながら
人気のアイドルが恋愛してたって知った
興味ないなぁ、ああ、
思い出話のほうが面白いのは
年を食ったせいかしら
汗ばんだジーパンの内腿が気持ち悪いから
銭湯で熱

もっとみる
【詩作】金魚鉢

【詩作】金魚鉢

金魚のようなスカート
スーパーマーケットを泳ぐ
息継ぎもせずに 僕をわらう
たくさんの光が町に溢れる

スマホの中で手を繋いで
あの子の放ったパントマイムをよく見た
残像に目を凝らせば
気持ち良くなれそうな
眩暈の香りがした

ていねいなくらしの中で
雑な自慰をしている
それはいわゆる二律背反的なものではなく
正しい音色だと彼女はいう
その爆音に気がつく頃には
あの子の髪は少し伸びているだろう

もっとみる
【詩作】夏、流れて

【詩作】夏、流れて

夢、見てた気がするけど、忘れちゃって、
下着姿のまま、ベランダ立って、
ぬるい風、崩れた日和、過ぎる時間、
気付けば午後ね、うだるよな夏、
あたしは部屋の中

フラペチーノの氷に、溶ける、噂、
興味がないから、あたしは制服脱いで、
扇風機の前、寝そべって、
パーフリ聞いて、時代を上る
女の子はいつだって、可愛くて、
未来も昔も、今も、
いつだって、

真っ青って言葉はあんまり似合わないから、
青い

もっとみる
【詩作】スロウダイブ

【詩作】スロウダイブ

ガラガラに澄んだその声で
朝の日差しを掻き消した
白いシャツが乾いてないから
黒いセーターを羽織った
気怠さでカムフラージュした願いを
閉めたカーテンの内で育てた
新時代の風が吹き抜ける街のどこかで
彼女の髪だけが 靡かない

とっ散らかったかなしみよ
ネバつく空気の中で 凝縮されて
ダルい角度で寝そべった、
僕の腹の上に落ちてくる

白い肩に光が跳ねて
彼女はミルクのアイスを舐める
休日の自転車

もっとみる
【詩作】やさしい昼寝

【詩作】やさしい昼寝

夏休みみたいな冬が
すぎて、たそがれ、窓開けて

空隠す、高層雲
うそ泣きの向こうの向こうに
ほんとのきもち

飛んでゆけたなら、今すぐゆくよ
それはちょっと、かなしい言葉
僕ならこうやって、頭の中の地面を
歩いてゆくのに

微睡み、オレンジ、染められて
窓際、やわらか、綴じた日々
海眺む、随想、読了、山の上
時折、指折り、数えた、記号の渦
寝返り、返る、時の波
生き死に、ほとぼり、まだ此処に

もっとみる
【詩作】鈍行

【詩作】鈍行

冬枯れの田園に
果て無く続く送電鉄塔の群れを
眺めて 眺める 鈍行列車の午後
わかんない言葉も いつの間にか
揺れて 軋んで 床に落ち
曖昧になる
曖昧になってしまう
こともくすぐられたなら
小さなカーブで 大袈裟に笑おうよ
上手く言えないけど
僕が会社を休んだ日は
たくさんの人の顔が立派に見える
駄々をこねるように大人になって
ポテチのカスのような感性が
世界に散っていった
ふらりとつむった眼の

もっとみる
【詩作】ねじまきの音

【詩作】ねじまきの音

僕は凍りつくように流れてた
冬が明ける頃の明け方に
薄青い光と 雑踏が
重なりあえば
流れ続けて 腹が減る

汚れたニューバランスで
階段を降りる
喉を潤すために飲んだリポDの
空き瓶を捨てたホームのゴミ箱から
友人のような言葉が溢れてた

ごうごう号号
空空からからり
ららるるららる
暗暗くらり
暮らしは続く

頭の中で ねじまきの音
どうしていつも、どうして
と、考える。
歯切れの悪い ねじま

もっとみる
【詩作】春

【詩作】春

春、風のない朝を横切って
旅の途中の猫に噂された
陽射しの香りにじゃれあって
君の行方を尋ねたら
空っぽの空を 指差した

想像の果ては広がって
この街の彼方を見つけるためのスニーカーが
擦り切れていくのも 止められない
桜の花びらが ひとつ落ちたら
そこが新しい季節の 始発駅
君と僕の影が 気難しい顔して
傾いたなら、
うたかたを纏った風に 縛られて生きよう
着崩れた体温を感じながら
いつまでも

もっとみる
【詩作】deep blue

【詩作】deep blue

まだ、隠れたままだよ
軽はずみな早起きで
ジオラマみたいな街を行く
朝未だきの空、
星ひとつ
一日の手前は静かに横たわり

100円のコーヒー
値上がりの煙草
湯気と煙
ゆらゆらと外気の中
寂しい味を、味わった

君の好きな店の前に立って
ガラスに映る顔を見つめたら
アーバンな生活が不意をつく
後ろめたい気持ちも歌にすれば
どうにかなると思ってた
すれ違う時ほど我慢して
それが正義と思ってた
“う

もっとみる
【詩作】死なない

【詩作】死なない

だるい花粉の嵐に
四月がくしゃみで消え飛んだ
遠くで聞こえる踏み切りの音
汗ばむ街の匂いを連れた西陽が
黄ばんだカーテンの裾から
滲み出る

風に吠える若い犬と
冷たい春
時代のコントラストは
やさしさと傷痕で成されて
同じ顔した人は 同じ血を巡らし
濡れた体を遊ばせる
路面に咲く季節を蹴飛ばして、往く
毎日早起きしても
僕は朝日を知らず
黴臭い畳の上で体液を零すだけ
宇宙を作ってはこわす この腕

もっとみる
【詩作】冬の夜

【詩作】冬の夜

チェーン店のファミレスで
胸の小さなウエイトレスが僕に寄る
しばらく僕は、目を逸らしながら考え込み
ドリンクバーを頼んだ

冷たい言葉をたくさん選んでも
心の中までは冷やせなかった
そびえ立つ妥協の壁に
安くて苦くて熱いコーヒーをぶちまけた
泥水みたい
ねえねえと甘ったるい声で彼女
ねえ、ねえ、湿っぽい関係を続けられるなら
誰かの尺度で生きるのも楽しいのかもね
しがない日々にロマンスは要らなかった

もっとみる
【詩作】月あかり

【詩作】月あかり

街角の低気圧と鉢合わせて
今日の私は アルマジロ
のんべんだらりと 生きていたら
バス停のとこに 君を見た気がするよ
あれって夢だったのかな
そんな時でも君は 後ろ姿なのね

人が死んだニュースを見たとき
安吾の文庫を手にとって
新しい気持ちに堕落した
Xの中に 埋もれた自由を
真っ当してるだけで、可笑しいかしら

新月と三日月の間の頃に
セーラー服を翻し、
スニーカーの踵を踏んだら
無灯火で自転

もっとみる