sasa

好きな音楽やアイドルのはなしと、明日になったら忘れてそうなことをかきます

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最近の記事

七篠

おれはおれの名前が嫌いだ。字面は不恰好で気持ちが悪い。読み上げればおぞましく不快な響き。醜い姿に似合った醜い名前だ。親から授かった名前にそんなことを言うべきではないと言われるかもしれないが、名前を聞くだけで鳥肌が立つあの黒くて速い虫と同じで、名前すら不愉快に思える例なんていくらでもある。大した話ではない。 小学校高学年のとき、担任になった男性教師がいた。比較的ハンサムな顔立ちだったが、平成も折り返しの頃だったというのに躊躇なく平手打ちを喰らわすような教師だった。嘘をついてし

    • 映画メモ(23.10)

      気づいたら10月ももう半分終わっている。忙しい忙しいと思いながら意外と映画をちゃんと観ていたので、ここ最近で観たやつの感想を書こうと思います。Filmarksでやれという話なんだけど、最後に更新したのが今年の1月に観たやつだったので、溜まりすぎててめちゃくちゃめんどくさい。そっちはそのうち更新するとして、とりあえずネタバレしない程度に書いていくので、誰かの何かの参考になったらいいなと思います。 『悪魔の存在を証明した男』(2014) 占いを信じた結果妻を交通事故で失った男

      • 量子論

        自己嫌悪が空気より軽ければいいのに、と思う。溜め込めば溜め込んだだけ膨らんで宙に浮いて、そのうち大気圏にぶつかって燃えて死ぬ。地上から見たら流れ星みたいに映るかもしれない。 自分がいなくても世界が成立してしまうことに気づくたびに苦しい。そうでないはずがないことぐらい分かっているのに。今この瞬間、その場にいない自分のことを思い出す人間などひとりもいなくて、このまま貝殻の中にでも閉じ籠ってしまえば、誰からも忘れ去られて最初からどこにもいなかったのと同じになるのではないかと思う。

        • 棄論

          帰路、コインランドリーの前を通るたびに人恋しくなる。自分のものではない柔軟剤の匂いを嗅いで、壁一枚を隔てた隣の生活を意識するからだろうか。夜の住宅街を散歩しながら、知らない家庭の勝手口から漏れるカレーや石鹸の匂いを感じたときの感情に似ているのかもしれない。あの生暖かい香りに満ちた空間で、乾燥機にかけた毛布が仕上がるのを愛する誰かと待っているような土曜日の深夜なんかに憧れたりはするけれど、実際のところコインランドリーにまつわる幸せな記憶なんて持ち合わせていない。田舎町の真っ暗な

          日記('22.9.9)

          髪を切った。 と、わざわざ報告するほど空前の短さになったわけではないし、生まれてこのかた手つかずの髪色がついに開拓されたわけでもない。髪を乾かすのに時間がかかるようになってきたし、耳の上あたりの中途半端な長さの部分が、前にやるにも後ろにやるにも落ち着かなくて鬱陶しいので切ることにした。 少し前まで通っていた美容室がしれっと値上がりしていたので、先月だかその前の月あたりから、家からの距離がほとんど変わらない、前よりも安く、現金を持っていく必要もないところに行っている。怪しい

          日記('22.9.9)

          部屋の明かりを落としたあとに真っ暗なテレビの画面が黒く光るように、冷房の効いた部屋から聞くアブラゼミの声のように、コーヒーカップが残した円い足跡のように、いる と いない の境目で曖昧に確かに存在していたい

          部屋の明かりを落としたあとに真っ暗なテレビの画面が黒く光るように、冷房の効いた部屋から聞くアブラゼミの声のように、コーヒーカップが残した円い足跡のように、いる と いない の境目で曖昧に確かに存在していたい

          四月

          1 前の晩に調子に乗って酒を飲んだせいか、ひどい夢を続けざまに見た。もう死んだ人が現れたり、生きているのに死んでいるような扱いを受けたり、生きながら死んでいる人間に殺されそうになったりした。当分酒は飲むまいと決めた。 2 中途半端な時間に起き、中途半端な時間に朝食をとって、昼過ぎに電車に乗って出かけた。目当ての喫茶店は開いていた。サンドイッチを食べながら、窓際の席で店主の息子らしき少年が友達と喋っているのを聞いていた。時おり母親が近付いていって、二言三言たしなめるような物言

          2021.12.15

          千代田線を赤坂で降りる。よく歩いて真上を通り過ぎるのに、降りたことはない駅だったので、階段を上って外に出たとき、初めて来る場所のような感覚になる。 散歩をするときはいつも最初に地図を見て、画面上の方角と現実のそれを照合して、あとは目的地の方へなんとなくずんずん歩く。たぶん空の色や車の流れを感じながら進んでいるので、一度地下に潜ってしまうと途端に方向音痴になる。地元の地下街でもずっとそうだった。嫌いじゃないけれど苦手だ。 そのときも方角がまったく分からなくなったので、目の前

          2021.12.15

          音楽(2021)

          2021年はかなり映画漬けの一年だったので、それほど新しい音楽を探したり新譜に敏感だったりというわけではなかったけれど、映画を多く観るようになったおかげで、語彙、というより共通言語をいくつか手に入れたり、情緒体験の言語化への強迫観念から脱却したりと、ただの蝉から鳴かぬ蛍くらいには進化できたような気がしています。もちろんそれは影響を与えてくれるひとたちに多く出会えたからでもあるし、首都圏というカルチャーの坩堝の隅っこに住むようになったからでもあるので、手放しで自分を褒めてやるこ

          音楽(2021)

          十一月

          日記 一 月が変わって最初に見た夢は、空港で傘を探す夢だった。人ごみを逆流しながら歩いていると、15年ぶりの顔が現れた。『なんか途中から気まずくなったけど、別にあなたのこと好きじゃなかったから』とわざわざ言われたので、「こちらこそ好きだと思ったことなんてなかったよ」とわざわざ言った。そのひとの隣には、何人かの顔見知りにまぎれて、初恋のひとがいた。うしろ頭しか向けてくれなかったけれど、そうでなくてもまともに顔は見られなかっただろうな、と思う。 夢から醒めたあと、なんであんな安

          十一月

          インディゴのはなし

          高校生のとき、2つ上にナナ先輩という人がいた。漢字は知らない。かわいらしい人だった。背は低く、華奢で、少し茶色がかった髪は肩にかからないショートボブ。泣きぼくろ、いや口元だったかもしれない、色白の肌にそれが際立っていた。小動物のような顔立ちだったような気がするが、ぼんやりとも思い出せない。ほくろも本当はなかったのかもしれない。 中学校からの友人にRというやつがいた。涼やかな狐目で、鼻が高く、感じの良い爽やかなやつで、音楽の趣味が合ったのでよく遊んだし、のちに何度かバンドを組

          インディゴのはなし

          Yellowのはなし

          RAYの2ndシングル『Yellow』が、6月23日にリリース決定! そろそろ新譜が出るんじゃないかという気配はなんとなく感じていましたが、正式に発表されると嬉しいものです。 やはり、というべきか、1stシングル『Blue』、1stアルバム『Pink』に続き、色の名前を冠したものになりました。紺青のバラ、薄桃の水面、そして今回は黄金色の雲という、ジャケットのモチーフと色遣いの組み合わせも絶妙で、もう芸術点だけで名盤カウントしてしまって良いのではないかと思うほどです。次に出る

          Yellowのはなし

          21.02

          仕事の休憩が明けて業務に戻る。左手が痺れている。それが気になった。 乾燥肌のせいか、よく左手の指がピリピリ痺れることがあるのでそれはいい。よくはない。だけどそのときは左足も痺れていて、妙に気になった。休憩中にスマホをいじっているとき、変な体勢でいただろうか。休憩している間の姿勢などまったく無意識なので、おおかた足でも組んで頬杖でも突いて、それで血流がおかしくなったのだろう。そういうときもある。 だがそこでふと、昔テレビで見た情報が脳裏に蘇る。『身体の片側だけに起こる手足の

          Re:pinkのはなし

          以前こういうnoteを書きまして。 要は、5月23日にリリースされたRAYのアルバム『Pink』について、初見レビューみたいなテイで感想とかを書いたことがあったのですが、それから9か月ほどたち、その頃からはだいぶ状況が変わりました。というのは、その記事を書いて1週間後に仕事を辞め、なんやかんやで転職が決まり、関東配属になり、RAYのライブに通えるようになり……そういうわけで音源としてだけでなくて、パフォーマンスについても繰り返し見ることができるようになったので、いま改めて、

          Re:pinkのはなし

          (~)21.01

          人はだれしも心にツッコミ芸人を飼っている。 少し前までは、(おそらく日本人の4割くらいがそうであるように)千鳥のノブが脳内で喚いていたのだが、12月中旬あたりから東京ホテイソンが入れ替わりで入居した。だから音量はあんまり変わっていない。今年のM-1が放送される少し前からYoutubeでお笑い芸人の動画をずっと観ていた。一番好きな芸人は、この半年くらいはコウテイ。ネタのナンセンスさとワードセンス、そして九条ジョーの顔が好き。梶原パセリちゃん、野村周平と同じ系統の顔立ち。顔とい

          (~)21.01

          20.11

          無事に引っ越しも終わり、晴れて関東の人間になりました。まあまあの都市部に住むことができたので、QOLの爆上がりっぷりに困惑しながら生活している。『定期的に転勤』という条件つきだから、期間限定の充足を謳歌するのは過ちではない、という免罪符を振りかざしながら経済をぶん回している。 前の会社を退職するまえに住んでいた家は会社の目の前だったので、朝が弱い自分にとって寝坊の心配がない点だけは良かったのだけど、最寄り駅は海に面した無人駅、そこからほぼ山道と言っていい坂を2kmほど登った