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映画メモ(23.10)

気づいたら10月ももう半分終わっている。忙しい忙しいと思いながら意外と映画をちゃんと観ていたので、ここ最近で観たやつの感想を書こうと思います。Filmarksでやれという話なんだけど、最後に更新したのが今年の1月に観たやつだったので、溜まりすぎててめちゃくちゃめんどくさい。そっちはそのうち更新するとして、とりあえずネタバレしない程度に書いていくので、誰かの何かの参考になったらいいなと思います。

『悪魔の存在を証明した男』(2014)

占いを信じた結果妻を交通事故で失った男が超常現象ぜんぶ否定するマンと化し、最終的に自分の体を実験台に悪魔を召喚する、というモキュメンタリーの体裁をとったオカルト映画。主観で進むパラノーマル・アクティビティみたいな感じ。めちゃくちゃ面白かったかと言われるとそこまでではないけど、男がだんだん自我を失っていく過程がなかなかスリリングで雰囲気も良い。ジャンプスケアは何箇所かあったけど、これはたぶん怖がりでもギリ観れるくらいの怖さ。

『ホーリー・トイレット』(2021)

目が覚めたら横転した仮設トイレの中。右腕は太いワイヤーで串刺しにされていて動けない。トイレの外からは爆破解体のカウントダウン。どうやって出る?犯人は誰?というソリッド・シチュエーションの脱出物。開始すぐ画面いっぱいにヌードの女性が映し出されるんだけど、本編にはほぼ関係ない上にご丁寧に乳首だけモザイクがかかっていて、何だったんだ今の無駄すぎるエロは……と思った数分後には串刺しの痛々しい腕が映し出される。味覚がバカになった人間の作った料理かよ。全体的にちょっと刺激の強い映像が多いし、中盤くらいから展開があわただしくなるので、観終わったらなんか疲れてる。"Holy Shit!"(くそったれ!)と"トイレ"がかかった原題をなんとか邦題に落とし込もうとした努力は認めたい。

『ブッチャー・ボーイ』(1997)

母親は鬱病で自殺、父親は病死、変態神父に悪戯されそうになり、親友には裏切られ……全てを失い孤立した少年がついに凶行を起こす、というストーリー。こう書くと子供が殺人鬼と化すスプラッタ映画っぽく聞こえるけど、実際は無邪気だった悪ガキが”闇堕ち”してしまう過程を軽快に描いた、どちらかといえば『デリカテッセン』とかのブラックコメディに近い。悪童を演じたイーモン・オーウェンズがとにかく素晴らしくて、アイルランド訛りとチャーミングな表情のおかげで、ちょっと行き過ぎた悪戯ばかり繰り返す悪ガキなのになぜか憎めない。かなり好きな映画だった。

『アンテベラム』(2020)

あらすじとか予告とかを見ないほうがいいタイプの映画。ジョーダン・ピール監督『ゲット・アウト』『アス』のプロデューサーが手掛けた映画ということで、これもスリラーの皮をかぶった黒人差別がテーマの作品。……ではあるものの、ジョーダン・ピール作品が隠喩的であるのに対してこちらはストレートに黒人差別を扱ったもので、作品の奥行きとしては物足りなさを感じる。一応どんでん返し的なものがあって、それがこの作品の一番の見せ場ではあるんだけど、冷静に考えると設定に無理がある。トリックが先行して世界が破綻しているような映画は好きじゃないので正直かなり残念だった。JP監督抜きでJP作品をつくろうとして失敗しているな、という印象。

『レディ・プレイヤー1』(2018)

なんとなく「バーチャルリアリティ世界と連動したバトルロワイヤル映画」みたいなものだと思っていて、全然違ったのでびっくりした。世界最高の天才エンジニアがバーチャル世界に遺した財産を巡って繰り広げられる謎解きレースの話で、アドベンチャー要素や胸が熱くなる友情シーンもあり、エンタメとしてすごく良い映画だった。前情報を全く入れずに観たのでスピルバーグ作品だと知らなかったし、伝説のクソゲー会社「ATARI」が出てきたところで(なんかスピルバーグっぽいな……)とちょっと思った程度。それぐらいいわゆるスピルバーグらしさはほとんどないけど、さすがだなという仕上がりでとても良かった。ゴジラとかエヴァとかターミネーターとか、パロディどころかそのまんま登場したりするのも面白かった。

『ある殺人、落葉のころに』(2019)

大磯が舞台の作品。高校の同級生4人は、卒業後恩師の経営する会社で働くことになる。友達だったはずの恩師の息子との関係は歪になっていき、しかしどこにも行く場所のない田舎の閉塞感が息苦しく描かれている。”殺人”は起こったのか?起こらなかったのか? 起こりえた「悲劇」のifをいくつも重ね合わせた、難解だが意欲的な作品だと思った。決して観ていて楽しい作品ではないし、スッキリするオチが用意されているわけではないのでおすすめはしづらい。

『キラーカブトガニ』(2021)

放射能汚染で凶暴化したカブトガニが人間を襲う!という、はいはい今度はカブトガニですね的なモンスターパニック系映画。前半はとにかくテンポが悪い。主人公の日常とかどうでもいいからもっと市民を襲え。同級生のいじめられっ子が覚醒するあたりからちょっと楽しくなってくるけど、そこからのカブトガニ襲撃は中だるみ。まあモンスターパニックなんて出オチだよな……と思っていたら突然巨大ロボが巨大カブトガニとバトルを始める特撮映画が始まってめちゃくちゃ笑ってしまった。主人公はカブトガニそっちのけでワクワク工作タイム始めるし、無人の車がドリフト決めるし、ロボが動く原理もビームの仕組みも謎だし、ていうかロボ弱いし、とにかく終盤の壊れっぷりが半端じゃない。ここまでやられるともう傑作にすら思えてくる。今年の1月に日本公開だったらしいので、一応クソ映画の最先端ではあると思います。観る必要は特にないですが。

『おばあちゃんの家』(2002)

母親が職を探す間、山奥に住むおばあちゃんの家に預けられることになったサンウ。娯楽もない、ケンタッキーもない不便すぎる生活にうんざりしたサンウは、耳が悪く口も利けないおばあちゃんに意地悪ばかりするが、おばあちゃんは全く怒らずサンウを受け入れようとする……。体の悪い祖母に意地悪ばかりするシーンは見ていてかなり胸が痛む。都会育ちの悪ガキが、次第に心を開いて祖母への接し方を変えていく姿は思わずウルっとしてしまうし、そういえば幼い頃は自分もわがままばっかり言っていたのになんでも受け入れてくれたなあ、と懐かしい気持ちになる。アジアの田舎が舞台の映画というと『冬冬の夏休み』みたいなイメージがあるけど、『おばあちゃんの家』はもっと、なんというか国語の教科書に載ってそうな感じ。心があたたかくなる良い映画でした。今年の頭にデジタルリマスター上映されたらしい。

『(r)adius/ラディウス』(2017)

交通事故から目を覚ました記憶喪失の男は、自分の半径50フィート以内に近づいた者が即死してしまうことに気づく。警察に追われながら、誰も死なせないよう物置に潜む彼のもとに、なぜか近づいても死なない女が現れる。大したネタバレじゃないので言ってしまうと、その女の半径50フィート以内にいれば自分の能力は発動しないことが分かる。2人は共に行動しながら、記憶を失ったとき何があったのかを探っていく……というSFサスペンス。「一緒にいないと周囲の人間がみんな死ぬ」×「警察に捕まったら引き離される」という条件が生み出す緊迫感が結構スリリングで面白い。真相は勘のいい人なら気づくかも。ラストは好き嫌いありそうだけど、自分は割と好きなやつでした。しかし日本版ポスターの煽り文句がダサすぎる。

『騙し絵の牙』(2021)

斜陽の兆し漂う出版業界大手「薫風社」の社長が亡くなったのをきっかけに始まる、ヒットと名声を奪い合う雑誌編集者たちの騙し合い。暗躍する編集長を演じる大泉洋と、出版への熱意で奔走する松岡茉優を中心としたコンゲームで、二転三転する裏切りのテンポが良い。良いんだけど、ちょっと現実味が薄いというか、それはちょっとおかしいんじゃないかみたいな箇所がいくつかあってどうしても気になる。あんまり細かいこと気にしないタイプの人なら普通に楽しめるやつだと思います。

『パージ』(2013)

年に1度、12時間だけどんな暴力も許される、という新政府の方策「パージ」をテーマにした現代風ディストピア映画。設定自体は面白いと思うんだけど、暴徒化した民衆が~~とか新政府を打倒~~みたいな感じではなく、よくわからんカルトが色々あって家に乗り込んできて、真暗な部屋のなかでひたすら隠れたり戦ったりするという、あまりにもスケールが小さいがっかり映画だった。主人公家族たちも「なんでそんなことするの????」と言いたくなる行動ばっかりするので途中からイライラしながら観てた。続編もあるらしいんだけど、ぶっちゃけ全然面白くないだろこれ……?

『バタリアン』(1985)

ゾンビ映画の傑作。軍が極秘で開発していた化学ガスをうっかり死体に噴射してしまい、大量のゾンビが発生!というお約束みたいな導入。ホラー要素とコメディ要素のバランスが天才的で、バカな若者集団はもちろん、仲間たちも、助けに来た警官たちも次々やられていくんだけど、絶望感より圧倒的な謎の小気味よさがある。かなりのスピードで走るゾンビというだけでも十分面白いのに、襲った警官の無線を使って次の警官をおびき出してまた襲うという知性まで持ってたりする。オバンバだのタールマンだの名前がついた個性的なゾンビも登場するし、ゾンビ映画界では伝説級の作品なんじゃないだろうか。豪快で無慈悲な終わらせ方と、半ばお約束と化したラスト。ゾンビ映画ってほぼテンプレをなぞってるだけなのに、面白いやつは本当に面白いから奥が深い。続編もあるらしいのでそのうち観たいです。


おわり。
月1とか隔週とかで更新できたらしたいし、途中で面倒くさくなってやめるかもしれません。次回作にご期待ください。