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#86 天と地の結婚 =「雷」が意味するもの

日本神話では、天の神(=天津神)が天孫降臨で地に降りたことになっている。地上の道案内をしたのは猿田彦大神、彼の妻となったのは天から降りた天之鈿女命(あめのうずめのみこと)。この二柱の神様は伊勢内宮参道の正面にある猿田彦神社に祀られている。天と地が交わることは、色々な場面で必要なのだと思う。



雷のメカニズムとその名前

雷は天から地へ落ちると思われがちだが、実は違う。天気予報大手の tenki.jp にとても分かりやすい説明があるので詳しくはそちらを読んでいただきたい。概要をまとめると、大気中のエネルギーがプラズマ放電の形で地へと腕を伸ばすと(この段階では光るだけ、かつエネルギーはマイナス電荷)、地表のプラス電荷がこのプラズマの腕をつかむ。ここで、天と地が空中で腕を取り合った瞬間にとてつもないエネルギーが流れ、「落雷」となる。落雷は天と地が手を繋いだ瞬間に起きる。

神道の世界観で重要視されるのは漢字ではなく音。雷は「神鳴り」であり、まさに天孫降臨の物語そのものだ。さらに、雷のことを「稲妻」と言うが、これは天から降りてくるマイナス電荷を「夫」とし、地上から腕を伸ばすプラス電荷を「妻」と考え、日本人の主食である「稲」の実りをもたらすもの、として考えられてきたそうだ(上記サイトによる)。
 大気中での強い放電によって窒素と酸素が結合して窒素酸化物となり、それが雨に溶けて地上にもたらされ、稲の生育に役立っていることが科学的にも分かりつつあるとのこと。そして、日本の米どころの多くは雷の多発地帯だそうだ。

教育を志したら、道は二つ

大学時代、教育学主専攻の仲間たちは大きく二つの道に分かれて行った。一つは「一教師になっても、社会に与えられる影響はたかが知れている。教育学の研究を通して、政治や行政に働きかけたい」というグループ。確かにその通り。もう一つは、「政治や行政は全体への影響力はあるが、一人一人の生徒には働きかけられない。だから教師になって、一人一人の生徒と向き合いたい」というグループ。これもその通り。僕は当初は第一のグループの発想だったが、徐々に考えが変わり、第二のグループに入って、教師になった。

例を挙げよう。具体的に英語の勉強で考えて、第一のグループの視点、つまり学問的に、「関係代名詞は難しい」と言うのはとても難しい。関係代名詞を含む問題と含まない問題を相当数作り、それを最低100人ほどの被験者に解かせて成績を統計処理し、関係代名詞のあるなしで有意差があるかどうかを検定する必要がある。
 反面、第二のグループの視点ならば、経験的に生徒は関係代名詞が苦手だと分かっていればそれでよく、指導にいろいろと工夫をすればいい。当時の僕はこの「機動性の良さ」に魅力を感じた。7年間の教師生活でいろいろな試行錯誤をして、多くの実体験を得た。


友の夢、我の夢

今は、AI の研究を通して、「日本をもっとしあわせな国にする」ことが僕の夢だ。「世界をしあわせにする」ではなく、「日本をしあわせにする」だ。なぜかというと、日本固有の文化的特徴があり、それが「幸福度向上」を妨げていると考えるに至ったからだ。
 AI 、特に ChatGPT など生成系 AI の進化で、世の中の構造が少しずつ変わっていくのは明らかだ。しかし「どう変わっていくか」は文化圏によって異なるだろうというのが僕の「読み」だ。そして、日本は生成系 AI によって、「あまり好ましくない方向」に変わっていく可能性があると考えている。この「AI が与えうる社会的影響(Social impact of AI)」は僕の研究の一つの大きな柱だ。

大切な友人が、上の雷の例で言うならば、「地上でプラス電荷を蓄える」ことにつながる活動を始めるらしい。教育関連分野なので、僕もとても興味がある。本音を言えば、「僕も入れて〜」とそのプロジェクトに入りたい気持ちだ。しかし、自分の仕事はそこではないと思っている。
 僕がすべきは「大気中でマイナス電荷を蓄える」こと、つまり日本をしあわせにする活動に必要な、学術的、文化的枠組みを整備することだ。切り口は、「AI による労働構造や学習環境の変化」。言うならば、若い頃に「地上でプラス電荷を蓄える」ことを経験したので、次はもう片方の役割を担ってみようか、ということだ。効率的に社会的ムーブメントを起こすには、天と地の活動が必ず両方必要だ。そしてタイミングを見計らって、手を繋ぐ。

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11月15日に思う

今日11月15日は、11年前に妻との婚姻届を出した日だ。結婚とは、妻と夫が手を取り合うこと。そこから、主食である稲を妻とし、天の雷鳴を夫と考えたいにしえの発想に想いを馳せた。
 人間の結婚では、まず最初に手を取り合った後で、エネルギーを育んでいける。でも「神鳴り」や「夢の実現」では、天と地それぞれの場所でまずは十分なエネルギーを蓄えることが必要だ。「友の夢、我の夢」、まずはお互いのフィールドで頑張ろう。こちらはチームも出来つつあるぞ ^^

今日もお読みくださって、ありがとうございました⚡️
(2023年11月15日)

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