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結婚妊娠出産子育てと大学院進学ーTwitterママ博士院生スペースよりー

結婚妊娠出産子育てと大学院進学とのかねあいをみなさんどうなさっているのでしょうか。

私は子育てをしながら大学院の博士課程で研究をしている大学院生です。日々Twitterで子育てをしながらの大学院生活などについてつぶやいています。

2020年4月3日21:00~,Twitterのスペースという音声配信の機能を使って,幼いお子さんを養育しながら大学院の博士課程に在籍している大学院生2名と小学生のお子さんを養育しながらこの春に博士号を取得した方をゲストにお招きして「結婚妊娠出産子育てと大学院進学」について60分の座談会を開催しました。

このnoteは,座談会の内容をまとめたものです。

座談会の内容の前に博士課程について少し説明をしますね。博士課程とは,簡単に言うと大学院の修士課程(博士前期課程)の次の課程です。「博士後期課程」「ドクターコース」「D」などと言われたりもします。

博士課程(後期)の入学資格について:文部科学省 (mext.go.jp)

このnoteでは「博士課程」と表記して話を進めていきます。

「博士課程」について詳しく言うともっといろいろ説明がありますが,今回はこれ以上の説明を割愛します。

▼スペースをやることになった経緯

TwitterのDM(ダイレクトメッセージ)や呟きのリプライ(呟きへの直接コメント)で,これまでたびたび女性から結婚妊娠出産子育てと大学院進学に関する質問や相談を受けることがありました。

学部からストレートで修士課程に進学して博士課程に進学をする頃は女性にとって「出産適齢期」といわれる時期ですが,研究活動もハードな時期です。分野や研究室によっては大学院に女性教員や女性院生が少ない場合もあり,将来のキャリアビジョンが描きにくい女性もいるようです。

また,すでに学士・修士の学位を取得している女性が結婚・出産してから修士課程や博士課程への進学を考えた場合に,家事や子育てと進学を両立できるかということが進学のハードルになっていることもあるようです。

このような事情から,私のもとに質問や相談のメッセージが届いているのかなと推察しています。

質問やご相談を受けても,私とは事情が異なったり分野が異なると,私の経験などがお役にたてるかわからず,正直返答に困ることが多々あります。

結婚妊娠出産子育てと大学院進学の問題は,個々によって状況が全く異なり,誰かのケースやアドバイスが必ずしも参考になるとは限りません。それでも,他者の経験から何か参考になることがあればと思い,専門分野や状況などが異なる3人の女性を私のTwitterのスペースにゲストとしてお招きして約60分間の座談会を開催しました。

▼私(司会進行)と3人のゲストの自己紹介

司会進行 : さおり
Twitterアカウント @saoresearch
今年の3月に修士課程を修了し,今年の4月から博士課程。 幼稚園生〜中学生の4人の子どもがいます。 保育所や学童は利用しておらず、主婦業(家事と子育て)が日常生活のメインという生活をしながら, 子育て経験や立場をいかして子育てに関する研究に取り組んでいます。

ゲスト1 : Moet(モエ)さん 
Twitterアカウント @moet_csf
今年3月に大学院(人文科学系)博士課程を修了、博士(文学)の学位を取得。新小6・小3の息子2人の母。 大学非常勤講師と子育てをしながら博士課程で研究をしていました。子どもを出産する前に,修士課程を修了し博士課程単位取得満期退学をしています。

ゲスト2 : ワーママ大学院生さん 
Twitterアカウント  @pu9WElC1kpRnc5G
2020年3月に自然科学系修士修了、看護系博士課程2年。2歳の娘と0歳(2ヶ月)の息子の母。修士課程の頃は子育てをしながらフルタイムで仕事をしていました。今年1月に出産し,現在は育休中です。

ゲスト3 : Asana Kooさん  
Twitterアカウント @small_tail802
管理栄養士で,今年の4月から博士課程3年。専門はスポーツ栄養学。陸上の実業団のアスリートとしても働いています。もうすぐ2歳になる娘の母で,博士課程入学3週間後に出産しました。工業系の大学院に在籍していて、教員も院生もほぼ男性という環境です。

 以下、Twitterでいただいた質問と,それについて話した内容をまとめました。
 

▼妊娠出産と進学・研究

【質問】私は博士課程の間に2人子どもを産み(それぞれ半年間休学しました)、先月博士号を取得。私は妊娠中の研究との両立が大変で、つわり中は2ヶ月ほど何もできず、その後もひどい眠気でパフォーマンスは半分ほどになりました。他の方がどうだったのか知りたいので、「妊娠中状況と研究との両立」について聞きたいです。

ワーママ大学院生さん(以下,ワーママ):大学院生の間に出産。つわりは1か月くらいで収まったので研究に支障はありませんでした。2人目の妊娠中は切迫流産で絶対安静が必要な状況で家から出られない時期があり,共同研究者から自宅のPCにデータを送ってもらって分析をするなどして対応していました。修士課程では目立った業績はとれなかったけど修士の学位はとれたという状況でした。

Asana Kooさん(以下,A):妊娠中は博士課程の入試の準備をしていて,つわりはとくになく3月(出産約1か月前)まで元気に働いていました。博士課程の試験の時にはおなかが大きくて試験監督から心配されたけど合格して,博士課程に入学した3週間後くらいに出産しました。出産して1か月は研究は何もせず,2ヶ月目から子どもが寝ている間に調査を始めました。子どもを産んで最初の1年は家族に娘を預けながらできることをささっとやるという感じで過ごしていました。私が住んでいる自治体は大学院生でも子どもを預けられるので2年目からは保育園。競技をしてたからすごく元気で研究もできました。(※保育所入所に関しては自治体によって異なり,保育所入所においてフルタイム勤務の人よりも大学院生が不利になる自治体もあります。)

さおり(以下,さ):妊娠中のつわりなどの体調の問題や産後の体調は個人差が大きくて,場合によっては進学や研究の予定が体調に左右されることがあるかもしれませんね。

 【質問】お子さん出産のタイミングと研究・進学の兼ね合いについて、事前に計画を立てていましたか?どのような計画を考えていましたか?

ワ:1人目の子は修士課程の間で授かりたいなとざっくりと考えていました。妊娠出産のスケジュールを立てる感じではありませんでした。

A:私も計画は特に立てていませんでした。

さ:ワーママさんとAsanaさんは妊娠出産の計画がざっくりしているのが共通していますね。

▼子育てと進学・研究

【質問】子育てと博士という道は世間的にも厳しいイメージがあるが、実際研究してて厳しさを感じますか?

Moetさん(以下,M):大学院生が子どもを保育所に預けられるかどうかで厳しさがかわると思います。私の自治体はフルタイムで勤務でも保育所に入るのが難しいです。なので,2人の息子たちが小学生になるまで大学院進学を考えられず,小学生になってから博士課程に再度進学しました(※お子さんを出産する前に博士課程を単位取得退学しています)。博士課程で1番厳しいと感じたことはコロナですが,コロナはしょうがない。

A:厳しさは今のところ特に感じていません。娘が大きくなってお昼寝の時間が無くなってしまったという観点から,新生児の時より研究時間の確保が厳しいと感じています。

さ:子どもの成長とともに大変さって変わっていきますね。

 【質問】なぜ母になってから博士進学を決断したのか?

 M:20代の頃に一度修士課程から博士課程に進学しました。博士課程は単位取得満期退学して大学の非常勤講師になりました。それから子どもが産まれて,進学や研究どころではない時期が何年か続いて研究からは離れていました。子どものことで心身ともに大変な日々でしたが,「子どもとは関係ない世界をもつのが大切なのでは??」というアドバイスがありました。それで,心残りだった博士号をとることをもう一回考えるようになりました。息子たちが小学生になったタイミングで博士課程に進学し,小学校に通っている3年間で博士課程を終わらせるという計画で博士課程に再び進学しました。

さ:「子どもとは関係ない世界をもつのが大切」・・・家庭と研究の両方があることで相乗効果もあるかもしれないですね。家庭や子どもの状況にあわせて,いいタイミングで進学できるといいですよね。

【質問】家事育児(とお仕事も?)している場合、どのように予定を調整していますか?博士課程ってめちゃめちゃ忙しい記憶しかなく、家事育児仕事を抱えながらこなせるイメージが全くありません。

ワ:フルタイム勤務ですが,シフト制なので平日休みの日に大学院に行っていました。上の子は保育所に行っているので,自分の予定が立てやすかったです。この数年はコロナの影響で課題提出や授業がオンラインになっているので,仕事をしたり子どもがいる人進学のハードル下がっているのでは!?家にいる間や通勤の間に授業を聞いたりしていました。

A:フリーランスで管理栄養士の仕事をしています。1日フルで仕事はしていない状況で数時間は空くので,その時間に研究をしています。フルタイムで働いている状況が想像できないので,フルタイムで働いて大学院に進学する人はすごいと思います。私の場合は時間があるからできています。

▼仕事と進学・研究

【相談】思い切って入学を決めたものの,フルタイムの仕事に加え2人の子育てと中学受験と家事の4立が可能か悩んでいるところです。

ワ:フルタイム勤務だったけど,私の場合は変則的なシフトの仕事でした。修士課程の時は社会人院生は私だけで,出席できない講義は休んでいました。修士課程の単位数はギリギリでした。一方,博士課程では社会人院生がほとんとで講義の日を先生と相談して決めています。私の場合は博士課程のほうが柔軟に対応できているかも!?

さ:子どもがいる大学院生にとっては,場合によっては修士課程よりも博士課程のほうが講義が少なくて,スケジュール管理がしやすい場合もあるかもしれないですね。進学前に進学後のスケジュールをリサーチしておくことで,進学の可能性が広がることもあるかもしれません。

▼男性は博士課程の女性をパートナーとして敬遠するか?

【質問】博士=頭いいという概念が割と浸透している世の中で、男性とお付き合いまでいけるものなのでしょうか?そもそも出会いはありますか?男性は自分より学歴が高くない人を好むという風潮がある気がしています。

M:夫は「博士になったんだすごいね!がんばったね!」って感じでした。私の時は1回目の博士課程の大学院生だった時は全くもてませんでした。出会いが全くなかったですね。結婚はお見合いでした。お見合いでは釣書で学歴を書くのですが,私の学歴を理由にお見合いを断る男性もいました。いまの夫は「おもしろそうな人だから会ってお話したい」って思ってくれる人でした。学歴を理由にお見合いを断られることで,お互い時間を無駄にしなくてよかったと思っています。

ワ:私は修士課程にに進みたいって考えているときに婚活しました。大学院進学に理解がある人じゃないと今後の人生の価値観があわなくなります。理解してくれる人と結婚するほうが幸せになれます。

A:私は結婚していて,夫に大学院に行きたいって言ったら「大学院いいじゃん」って夫は言ってました。夫は向上心がある人が好きな人です。大学院に行きたいって思うような人は向上心がある人ですよね。そんな向上心がある人を「いい」って思ってくれる人は絶対にいると思います。

さ:私と夫は出身大学が一緒ですが,私が大学院に進学することで夫よりも私のほうが学歴があることになります。でも,夫は「大学院進学おめでとう!」「修士号おめでとう!」って感じで夫婦間の学歴の違いは気にしてなさそうです。こういう男性もいます。結婚を考えている人は,自分を受け入れてくれる人と出会ってほしい!!

この質問に関しては,4人とも同意見でした・・・!

もちろん,しあわせは人によってそれぞれ異なります。今回は博士課程に進学するような女性と男性との出会いやつきあいの観点から女性から質問が来ていましたので,博士課程の女性が男性と出会う,パートナーになるという観点から話をしました。

▼リスナーのみなさんからの質問


ここからは,スペースを聴いてくださっていたリスナーの方からの質問です。

リスナー1:働きながら大学院に進学します。育児書で愛着について読んで,子どもと離れることに罪悪感があります。月曜日だけ子どもと寝る時間に帰宅が間に合わないのがすごくひっかかって心配です。

さ:この質問を聞くだけで,これまで一生懸命子育てをなさってきたことが伝わってきました。「愛着」って言葉は「愛情」といった言葉を連想してプレッシャーになりませんか?「愛着」って英語で「attachment」です。「愛着」って言葉ではなく「attach」=「くっつける」と捉えると気が楽になりませんか?お子さんにとってのよりどころになるのは大事ですが「愛着」はお母さんだけの問題ではありません。お子さんはすでに社会に出ていて,保育所の先生との「愛着」もあります。十分頑張っていらっしゃいます。お母さん1人だけで背負わなくて大丈夫。週に1回だけお子さんの就寝時間に間に合わないのは心配しなくても大丈夫だと私は思います。

リスナー1:仕事だけで疲れるのに大学院に進学して体もつのか心配です。体力的にはどうですか??

ワ:妊娠中は移動が特に体力的に大変でした。モチベーションがあるから頑張れるのが大きいです。適度に休みをとりながらやるのが大事。

リスナー2:私はフルタイムの博士課程の院生です。みなさんができるかぎりの時間のなかでできるかぎりの研究をやっていることが伝わってきました。みなさんは自分のための自分を癒すものって持っていますか?精神の安定を保っていられるコツは何ですか?

M:もともとお芝居や映画をみるのが好きでした。でも,これらは子育てと相性がわるいので自宅でネットフリックスで映画を楽しんでいます。研究の読書とは別で,好きな本や漫画を読んでいます。

ワ:乳児がいるのでそういう時間はあまりとれていません。でも,生後2か月の子がめちゃめちゃかわいいので癒されています。

A:陸上の実業団でバリバリ競技をやっていました。競技をするのがストレス発散です。それがストレスになることもあるけど(笑)。研究ではないことをするのがいいですね。

さ:楽器の演奏が好き。合間に自宅でピアノをよく弾いています。家でできることという点でMoetさんと似ています。

リスナー2:みなさんがなんとか工夫してできる方法でやってることがわかりました。みんなそうやってるんだって思うと,仲間がいるんだって思うことができます。

ママ博士院生スペースの内容のまとめは以上です。時間の都合上とりあげることができない質問があり,申し訳なく思っています。また,一部,音声が聴きにくい箇所があったことをお詫び申し上げます。

ゲストスピーカーのMoetさん,ワーママ大学院生さん,Asana Kooさん,ただでさえお忙しいのに参加を快諾してくださってありがとうございました。

また,忙しい合間を縫って視聴してくださったみなさん,このnoteを読んでくださっているみなさん,本当にありがとうございました。

今回のゲストスピーカーのみなさんは前向きになんとかやりくりをなさっていることが伝わってきましたが,大学院や研究の環境は子育てをしている大学院生にとって進学しやすい・研究しやすいところとはまだまだ言い難い現状があるのではないかと思っています。

大学院に進学したくても,結婚妊娠出産子育てのことを考えると二の足をふんでしまうという方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。また,大学院に進学したものの,大変な思いをなさっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。このあたりのことは今回のスペースで取り上げることができなかったので,今後の課題としたいと思っています。

私にできることはほんの些細なことですが,今回開催したスペースやこのnoteがほんの僅かでも誰かの役にたったのならば嬉しく思います。少しでも大学院や研究の環境がよりよくなることを願っています。

【サポートのお願い】
私は現在,子育てと研究の合間を縫って主にTwitterを用いて発信活動をしています。できるだけ多くの方に家庭と研究の両立の問題,大学院生のライフプランやキャリアの問題を知っていただきたく,座談会はTwitterのスペースを使って無料で開催しました。

noteにはクリエイターを金銭的にサポートする機能があり,この記事の下の「気に入ったらサポート」という緑色のボタンからサポートをすることができます。今後の発信活動の励みになりますので,私の活動に賛同してくださる方がいらっしゃいましたら,是非サポートをいただけると大変励みになります。今後もみなさんのニーズを伺いながら発信活動を続けていけたらと思っています。

私にできることはほんの些細なことですが,何かこころに響くことばがあったなら,何かお役に立てることがあったなら,嬉しく思います。