【新刊紹介】ゼロから話せるエストニア語②
9月18日取次搬入予定新刊『ゼロから話せるエストニア語』から、内容の一部を抜粋して紹介します。
アイデンティティとしての言語
現代のエストニア人はほとんどの人が2つ以上の言語を話します。母語 / 国語であるエストニア語に加えて、若い世代はなんといっても英語、年配者ではロシア語やドイツ語ができる人が多くいます。3つ、4つと外国語ができる人も例外ではありません。それは、歴史的には、エストニア語は農民の話し言葉で、書き言葉や教育にはドイツ語(や後にはロシア語)が用いられてきたため、エストニア語以外の言語もできることが普通であり必要でもあったという事情によります。また、エストニア語のような「マイナー言語」を学ぶ人は多くないので外の世界と交流するには自らがいろいろな言語を話す必要がある、という姿勢も根づいています。
多方、エストニア人にとってエストニア語は民族的アイデンティティの重要な部分をなすものです。エストニアでは、19 世紀半ばから「エストニア人」としての民族意識が高まり、エストニア語による文化が育っていきました。独立国として歩みはじめるにあたり、それを支えられる言語と文化が成熟していたのは大きかったでしょう。1918 年に成立したばかりのソビエト・ロシアから独立しその後の独立戦争に勝利したエストニア共和国は、20 ~ 30年代の独立時代には国際連盟加盟国で、日本との国交もありました。また、エストニア語文学も数多く出版され、エストニア語の研究も進みました。その後半世紀に渡ってソ連邦に占領されていた時代にはエストニア語を守ることがエストニアの文化を守ることであり、ひいては独立回復の希望を持ち続けるためのよりどころでした。
第1回 エストニアとは
第3回 なぜエストニア語を学ぶのか に続く
書誌情報
書名 ゼロから話せるエストニア語
著者 宮野恵理 / 松村一登 著
判型 A5判並製152ページ
ISBN978-4-384-06123-9 C0087
定価3,960円 (本体 3,600円+税)
音声ダウンロード・ストリーミング対応
電子書籍あり
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