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Alinea Ep.02

人生のトリガー...


オーナーシェフのアケッツは、ナパバレーにあるアメリカ1有名なミシュラン3星のレストラン 
French Laundry (フレンチ・ランドリー)
でスーシェフを務めた後、シカゴでTrioという店の料理長を任された。
Trioで現在のCo-Ownerであるニックと知り合い、Alineaを立ち上げた。

伝説と呼ばれる分子料理の始祖、スペインにあった
el Bulli(エル・ブリ)
でも働いたことがあり、分子料理の技術も取り入れていた。

5年前、日本に帰ってきたときアリネアのことを知る料理人は4人ほどしかいなかった。
今でこそ、NetflixのChefs Tableなどの影響もあり、そこそこ日本でも知れ渡ってきたが、ヨーロッパのレストランに比べれば全く有名ではないだろう。

知っている殆どの日本人の料理人も「食べる風船」「デザートマット」のイメージだと思う。
僕自身もそうだった。
だが、実際キッチンへ入ってみると、毎朝3~4種類のフォン(出汁)やジュ(ソースに近い出汁)を取り、料理の根本はしっかりと軸のあるものだった。

基礎がしっかりしている上でのエンターテイメントな表現・演出と共にともされる料理は「MAGIC」と呼ばれていた。

目の前で何が起きているのかがわからない

流したチョコレートは、タルトへと変化していき
ラビオリは、口の中で爆発しトリュフの風味が暴れだす
きわめつけは、宙に浮かぶ青リンゴの風船

魔法のような世界への虜となった...

 
仕上げていく料理とは裏腹に、料理人はまるで取り憑かれたかの如く死にそうな形相で料理に取り掛かり、シェフの発する一言に**
**「OUI CHEF!」の声が響き渡る

その空気に僕の好奇心・興味、全ては引き寄せられていった

とにかくガムシャラに動いた...
NoMadの時と同じように、誰よりも、シェフよりも掃除をまず頑張った。
掃除は特に、これまで見たこともないくらいクレイジーなものだった。
網戸のゴムの隙間
蛇口の溝
エアコンのフィルター etc...

全ての細部に至るまで毎日完璧に仕上げなければいけない


週休2日の定休日があり、僕はアドレナリンが出すぎ興奮を抑えられず、シェフに頼み定休日は休まず、系列のNEXT(レストラン)・Aviary(バー)で研修させてもらった。

NEXTは世界でも類を見ない、毎年1年のうち3回テーマを変えるレストランだ。
Paris1906 ➡︎ Thailand ➡︎ el Bulli ➡︎ Vegan ➡︎・・・
などと面白いレストラン

Aviaryはコースを料理ではなく、分子モダンカクテル(ミクソロジー)で構成しそれにペアリングでスナックを提供する最先端のバーだ。

どちらも無知な僕には果てしなく楽しかった。
だが、どちらもアリネアと比べると温度感が激しく違った...
アリネアが地獄の如く灼熱の熱さの中駆け回るのに比べ、NEXTとAviaryは普通に仕事量が多い、いわゆるただ忙しくきつい職場だ。

僕は、精神的にも体力的にも徹底的に追い詰めてくれるアリネアに魅力を感じたのだった。


母親が手術をすると連絡が入った...

アリネアでの研修の後、デンマークの世界1位に何度も輝いているレストランnomaで研修をする予定だったが、切り上げて日本へ帰国することとなった。

研修も残り1日となり、いつも通り、わけも分からないくらい走り回っていた。
PM20:30を過ぎようと営業も後半に差し掛かる頃、急にシェフ サイモンが僕の左手をとり裏口から外へ連れ出した...

「何か...ミスでも犯したのか・・・」。
不安で鼓動が激しくなっていく...

「Did I do something wro...(何かやりまし...)」!?
サイモンは、僕が口を動かすのを止め表へと手を引き、
「Naoto, Enjoy!!(楽しんでこい!)」
笑顔で僕を玄関からレストランへと送り出し、僕は訳も分からないままマネージャーに手を引かれテーブルへと案内された。

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まるで魔法の世界のようなエントランスを通り
ブカブカのコックコートのまま席へと着き、やっと理解した
あまりの興奮の中、マネージャーが「お酒は飲める?」っと
思わず「OUI CHEF!」と返事をし、周りのお客さんが笑っていたのを覚えている。

マネージャーにロッカールームの僕のカバンの中にカメラがあるから取りに行っていいか?と尋ねたら、快く持ってきてくれた。

その時のディナーの写真を少しだけ。

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コックコートのままスペシャリテの風船を食べている(笑)

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最後のデザートはシェフ サイモンが綺麗に仕上げてくれた

興奮と疲れと楽しさと感動と泥酔の最中、キッチンへと降りシェフへ感謝のハグをし、ドアまで送っていただくと真っ黒なリムジンが...
泊まっていたドミトリーまで送ってもらい、夢心地のまま眠りについた。


翌朝
最終日、スッキリとした表情で店へ向かい仕込みを終え、夜の掃除も終えるころ。
総料理長のベーグルに
「Hey, Naoto. Work here buddy! (ここで働かないか?)」

ベーグルの一言とサイモンが手を引っ張ってくれ、シェフ アケッツがディナーをご馳走してくれた事が、僕の世界を変え
まさか、想像を超える壮絶な世界が待っているとは思いもせず
卒業後、アリネアに就職した

 
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