文献紹介等(Salt)

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最近の記事

2024年度上智大学神学講座(免許法認定公開講座)

今回は毎年、上智大学の生涯教育の一環で行われている「神学講座」について紹介したいと思います。宗教科の免許をお持ちの方はこの「神学講座」で一定数の単位を取得すると中高の宗教科免許を取得できることはご存知のことと思います。筆者も、上智大学の神学部を卒業するのではなく、この「神学講座」を経て宗教科免許を取得し、現在は宗教科教員の1人としてカトリック系の学校に勤めています。  前述した通り、既に宗教科の免許を取得していますが、私は、授業研究の一環として、現在においても「神学講座」に

    • 立山芽以子・華井和代・八木亜紀子『ムクウェゲ医師、平和への戦い「女性にとって世界最悪の場所」と私たち』岩波ジュニア新書

       本書はコンゴ人の婦人科医であるデニ・ムクウェゲさんの活動、そしてコンゴで起きていること、私たちの生活との結びつきについて書かれています。ムクウェゲさんは、「紛争の武器として性暴力が使われることを終わらせようとする努力」を評価され、2018年にノーベル平和賞を受賞しました。本書には次のようなコンゴの女性たちに起きていることが書かれています。 「家の仕事のほとんどは女性がこなしている。女性に暴力を振るうことは、必然的にその家族を痛めつけているのと同じだ。働き者で責任感の強い当

      • 『逃げられる人になりなさい』

         2024年8月30日(金)から9月1日(日)、岡山市のノートルダム清心女子大学で、日本カトリック教育学会第48回全国大会が開かれます。  9月1日(日)のシンポジウム「インクルーシブ社会をめざすカトリック教育の実践」にご登壇予定のノートルダム清心中・高等学校(広島市)の神垣しおり先生のご著書を、ご紹介します。  神垣先生は、ノートルダム清心中・高等学校を卒業され、大学卒業後、広島市立中学校教員を経て、社会科の教員として母校に勤務されています。その後、宗教科免許も取得され

        • 『台所のマリアさま』

          『台所のマリアさま』 ルーマー・ゴッテン作/猪熊洋子訳/C.バーカー絵 評論社、1976年初版  こんにちは、Salt運営チームの小林由加です。今日は『台所のマリアさま』という素敵な児童書を紹介します。  『台所のマリアさま』は、ウクライナから逃げてイギリスで住み込み家政婦をしているマルタという女性と家政婦として働く家の子ども達グレゴリーとジャネットのお話です。ウクライナから逃げた女性と言っても、現在ロシアとウクライナの間で起きている戦争のことではありません。第二世界大戦中

        2024年度上智大学神学講座(免許法認定公開講座)

          病者と病院の守護の聖人  聖カミロ・デ・レリス

          こんにちは、Salt運営委員の小林由加です。今日は私の推し聖人, 聖カミロ・デ・レリスを紹介します。カミロは1550年にイタリアに生まれました。13才でお母さんを亡くし、お父さんは軍隊の士官でした。18才の時にお父さんと同じよう軍隊に入りましたが、かけ事が大好きで、持っているお金をすぐに使い果たしてしまう悪いクセがありました。 21才の時に戦争で足を負傷して、ローマのサン・ジャコモ病院に入院しました。足の傷が良くなると病院を手伝いましたが、再び戦争に参加します。そして、持っ

          病者と病院の守護の聖人  聖カミロ・デ・レリス

          ロバート・L・ショート『スヌーピーたちの聖書のはなし』

           スヌーピーは、アメリカの新聞で連載が始まったコミック『ピーナッツ』に登場するビーグル犬です。皆さんの中にも、スヌーピーが好きな人がいらっしゃるのではないでしょうか。  『スヌーピーたちの聖書のはなし』の原題は、The Gospel According to Peanuts(『ピーナッツによる福音書』)です。  この本の筆者によると、『ピーナッツ』は、「しばしばキリスト教の現代版たとえ話といった性格」をおびているそうです(p. 21)。  『ピーナッツ』の作者は、チャール

          ロバート・L・ショート『スヌーピーたちの聖書のはなし』

          『モモ』(ミヒャエル・エンデ)

          『モモ』は最初のページを一枚めぐると、題名の下に物語のあらましが書かれています。こんなふうに… 時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子の不思議な物語(ミヒャエル・エンデ『モモ』大島かおり訳、岩波書店、1976年、p.7) この物語は、ある都市の一角にある遺跡の廃墟の場面からはじまります。その廃墟に女の子が住みはじめるのです。女の子の名前は「モモ」(そう、本書の題名になっているのはこの女の子の名前です)。しかし、モモは少しほかの人とことなる見た目をし

          『モモ』(ミヒャエル・エンデ)

          絵本「3本の木」

          この絵本には3本の木が登場します。 3本の木にはそれぞれ夢がありました。 1番目の木は「宝箱」になること。 2番目の木は「大きな船」になること。 そして3番目の木は「一番背が高くて、山にずっと立っている木」になること。 ある日、木こりが3本の木を切ってしまいます。さて、この3本の木はどうなるのか… https://www.gospelshop.jp/shopdetail/000000015081/ 宗教の時間ではこの本を読む前に 「『こうなりたかったのに、なれなかった』経

          絵本「いとしの犬 ハチ」

          今年もあと2カ月、そして3週間後は待降節です。 待降節はイエス様の御降誕を待つ4週間。この4週間は、クリスマスが待ち遠しいです。子どもの頃は学校のクリスマス会で上級生が演じる聖劇やクリスマス会後にもらえるクリスマスのバターケーキ、25日の朝に枕元に置いてあるクリスマスプレゼントが楽しみでした。大人になった今でも、「あと何日でクリスマスかなあ」とわくわくします。4週間待つからこそ、クリスマスを迎える喜びはとても大きいのです。 「待つ」と聞くと、私はある犬を思い出します。それ

          絵本「いとしの犬 ハチ」

          『かみさま どこにいるの』コイノニア社、2002年

          この絵本はダニエル・アンジュ司祭が、子どもたちのことばの中にこそ、神さまに対する真実があると、耳を澄ませて書きとめたものです。 子どもたちの会話には、神さまが私たちをはるかに超えた方であること、そして私たち一人ひとりのうちにもおられる方であること、この真実が見事にあらわされています。 一人の女の子は、手のひらにのせるには大きすぎるし、指のあいだをするっととおりぬけてしまうぐらい小さすぎると教えてくれました。 神学者が難しい言葉で書いていることを、素朴に単純に明快に教えて

          『かみさま どこにいるの』コイノニア社、2002年

          絵本「せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子」

          小学校からカトリック学校に通っていた私の制服は、ずっと「スカート」でした。「スカートは可愛いな」と思えるときもあれば、冬の寒い日は「ズボンが履きたいなあ」と思うときもありました。また、下着が見えてしまう、という心配なしにジャングルジムや登り棒を登る男の子を羨ましく思ったこともあります。 近年、といってもこの1,2年ぐらいですが、スラックス(長ズボン)の制服を着ている女の子を見かけるようになりました。「女子児童・生徒の制服はスカート」が当たり前だった時代から、性別に関係なく、「

          絵本「せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子」

          スーザン・バーレイ『わすれられないおくりもの』

          カトリック教会では、11月は死者の月。亡くなった方を思い起こし、神さまのもとで安らかでおられるようにと祈ります。亡くなった方を思い出して悲しくなることもありますが、亡くなった方との思い出に勇気をもらうこともあります。そんな勇気をくれる絵本が『わすれられないおくりもの』です。 主人公のアナグマは年を取っていて、「長いトンネルのむこうへといくよ」と、ともだちに手紙をのこして、遠いところへと旅立ってしまいます。そして、アナグマのともだちはみんなとても悲しみます。春が来て雪がとけ、

          スーザン・バーレイ『わすれられないおくりもの』

          夏休みに読みたい! 「永井隆」の本    ー平和を学び、希望に生きるために。

          8月に入ると、日本では、やはり二つの原爆記念日が思い出され、15日の終戦の日まで「平和」を祈る心となりますね。 ウクライナでの戦争が激しくなり、核兵器を使う可能性をちらつかせる国がでてきた今こそ、「もう決して核兵器は使わせない」という思いを新たにし、この決意を次の世代を担う若い方たちにも伝えたいと願います。  長崎で自分も原爆の被爆者となりながらも、被爆した方々の救護を献身的に行った医師、戦後は数々の本を書いて有名になった永井隆のことをご存じでしょうか。「長崎の鐘」「この子を

          夏休みに読みたい! 「永井隆」の本    ー平和を学び、希望に生きるために。

          教皇フランシスコとマルコ・ポッツア著 『CREDO』の解説(4)

                            阿部仲麻呂         (東京カトリック神学院教授、サレジオ会司祭) 今回が『CREDO』の解説の最終回です。ミサの中で毎回唱えながら、深い意味を考えたことのない『CREDO』が身近なものになる解説です。最後までお読み下さりありがとうございました。(Salt編集部) はじめに  古来より伝わる「使徒信条」という祈り(毎週のミサの中で唱える信仰宣言の祈り)の言葉は8つの段落で成り立っています。最初の3つの段落は神への信頼を表明する

          教皇フランシスコとマルコ・ポッツア著 『CREDO』の解説(4)

          教皇フランシスコとマルコ・ポッツア著『CREDO』の解説(3)                   阿部仲麻呂(東京カトリック神学院教授、サレジオ会司祭)

          はじめに  古来より伝わる「使徒信条」という祈り(毎週のミサの中で唱える信仰宣言の祈り)の言葉は8つの段落で成り立っています。最初の3つの段落は神への信頼を表明するためのものです。次の5つの段落は人間にとって重要な願い(救いへの希求)を捧げています。 一般人もキリスト者も相手との関係性によって生きます。あらゆる人間にとって重要な願いは、①共同体に迎え入れられて温められること、➁すでに亡くなった恩人や親族との絆を末永く保ちたいという望み、➂人を傷つけた哀しみを償って関係性を

          教皇フランシスコとマルコ・ポッツア著『CREDO』の解説(3)                   阿部仲麻呂(東京カトリック神学院教授、サレジオ会司祭)

          教皇フランシスコとマルコ・ポッツア著『CREDO』の解説(2)                   阿部仲麻呂(東京カトリック神学院教授、サレジオ会司祭)

          ■聖霊を信じます *対話3 聖霊を信じます(「使徒信条」第三段落) *講話3 一致団結をもたらす聖霊  まず、「使徒信条」第三段落についてながめます。マルコ・ポッツア師は教皇フランシスコに対して、「聖霊」の働きについて、たくさんの質問を投げかけています。教皇は「調和をもたらす専門家としての聖霊の働き」または「あらゆる人を調和させて美しいオーケストラの演奏を実現する指揮者」としての性質を徹底的に強調しています。しかも聖霊は「神の徹底的なへりくだりの姿」を現しています。御自身の愛

          教皇フランシスコとマルコ・ポッツア著『CREDO』の解説(2)                   阿部仲麻呂(東京カトリック神学院教授、サレジオ会司祭)