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『台所のマリアさま』

『台所のマリアさま』
ルーマー・ゴッテン作/猪熊洋子訳/C.バーカー絵
評論社、1976年初版

 こんにちは、Salt運営チームの小林由加です。今日は『台所のマリアさま』という素敵な児童書を紹介します。
 『台所のマリアさま』は、ウクライナから逃げてイギリスで住み込み家政婦をしているマルタという女性と家政婦として働く家の子ども達グレゴリーとジャネットのお話です。ウクライナから逃げた女性と言っても、現在ロシアとウクライナの間で起きている戦争のことではありません。第二世界大戦中も、ウクライナは最も激しい戦場となり、国土が焦土と化しました。
 家政婦のマルタのいる台所は、あたたかく、居心地が良く、子どもたちはマルタが大好きになります。けれど、マルタは住み込みで働く家の台所には「いい場所」がないと言って寂しげです。
 大好きなマルタがずっと家にいてくれるようにと、グレゴリーとジャネットは「いい場所」のために奔走します。移民の苦しみ、悲しみへの共感、愛するための犠牲、知恵や工夫、家族の絆などについて考えさせられます。
 児童書ではありますが、大人にも読みごたえのある書です。私の知人は、この本を読んでマリア様にひかれるようになりました。そのような不思議な本でもあります。どうぞ、お手にとって読んでみて下さい。

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