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絵本「せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子」

小学校からカトリック学校に通っていた私の制服は、ずっと「スカート」でした。「スカートは可愛いな」と思えるときもあれば、冬の寒い日は「ズボンが履きたいなあ」と思うときもありました。また、下着が見えてしまう、という心配なしにジャングルジムや登り棒を登る男の子を羨ましく思ったこともあります。
近年、といってもこの1,2年ぐらいですが、スラックス(長ズボン)の制服を着ている女の子を見かけるようになりました。「女子児童・生徒の制服はスカート」が当たり前だった時代から、性別に関係なく、「スカート」でも「スラックス」でも、個人が自由に選べる時代に変わりつつあります。
「女性もズボンを履く」という私達の当たり前は、今から約150年前のアメリカでは「当たり前」ではありませんでした。「女性の服はスカート/ドレス」が主流とされていたなか、「ズボン」を履いた女の子がいます。それが今回紹介する絵本「せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子」の主人公・メアリー・E・ウォーカーさんです。


キース ネグレー「せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子」石井睦美訳、光村教育図書、2020年
https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=157937

「女の子がズボンを履く」という行動を起こして、当時の常識を覆したメアリーさん。
絵本の中で、メアリーさんはこんなことを言います。
「男の子の ふくを きているんじゃないわ、わたしは わたしの ふくを きているのよ!!」

私達が「当たり前」だと思っていることが全て正しいとは限りません。
けれど、みんなの「当たり前」を「当たり前ではない」と言うことは、周りから奇妙な目で見られたり、傷つけられたりすることもあります。また、「みんなが当たり前だと思っていることを、当たり前と思えない自分のほうがおかしいのかな」と思ってしまうことも…。
メアリーさんは自分を信じて勇気を持って行動することの大切さや、私達の当たり前を再度考え直すきっかけを与えてくれます。

ああ、そういえば。この絵本を宗教の授業で小学校2年生と読んだ後、ある女子児童が私に話しかけてくれました。
「ねえ、先生。イエス様ってズボンじゃなくて、いつもワンピースを着ているよね。」
確かに、イエス様はワンピーススタイルでしたね。いつからなんだろう、男性のズボンが当たり前となったのは…。いや、当たり前、ではないのかもしれませんね。

才間郁(光塩女子学院初等科、聖セシリア小学校・女子中学校 宗教科非常勤講師)

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