【短編小説】秋はスイカで涼む
秋になった。
はず。
秋とは思えない暑さと日差しに焼かれながら、何とか涼しさを求めていた。
数週間前までスイカが陳列されていた棚には梨やら葡萄やらが並んでいる。
ちやほやされていたスイカは隅の方に追いやられていた。
わずかに残る夏の香りを逃したくなかった猫は思い切ってスイカをひと玉買った。
誰もいらないならちょうどいい。
僕はまだ夏を楽しむぞ。
猫は半分に切られたスイカの中をくり抜いて水を入れ、ちゃぷんと入って旗を立てた。
涼しい。
そして何より夏の香りがする。
空気に漂う秋の香りを遥かに上回るスイカの匂いは、夏を感じさせてくれた。
しばらくこうしよう。
この夏最後のスイカ風呂を存分に堪能する猫だった。
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