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おとこらむ oto-column

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「音楽と鳥しんぶん」に連載されていたレコード研究家の音楽的日常のコラムが、noteマガジンでも登場!家人の夢の中で「あなたはレコードのマハラジャよ!」と美輪明宏さんに称賛された夏…
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#ピアニストは語る

完璧さ+α「奇跡のピアニスト、ブンダヴォエの究極のバッハ」

完璧さ+α「奇跡のピアニスト、ブンダヴォエの究極のバッハ」

Fragments of History ~ ピアニストの黄金時代を担ったピアニストたち(5)
実は音楽の父ヨハン・セバスチャン・バッハを架空の人物だと信じていた頃があった。教科書で見る肖像画は中学生の僕には余りにも唐突な姿で、まさか実在していたとは思わなかったのである。
しかし、バッハは意外にもダ・ヴィンチやミケランジェロの200年以上後に生まれており、僕らが生れる200年くらい前までは生きてい

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コリン・ウィルソンが愛したスクリャービン〜19世紀ピアニズム「ユリウス・イッサーリス : スクリャービン/24の前奏曲集+2」

コリン・ウィルソンが愛したスクリャービン〜19世紀ピアニズム「ユリウス・イッサーリス : スクリャービン/24の前奏曲集+2」

~ Fragments of History ~
ピアニストの黄金時代を担ったピアニストたち(6)

スクリャービンの初期作品はショパンの作品形式を精神的にも受け継ぎ、練習曲、夜想曲、ワルツ、マズルカ、ポロネーズ、前奏曲、と同スタイルの名曲を多く残した。中でもショパンをも凌駕する白眉の出来は「24の前奏曲集 作品11」である。

ロシアの神秘主義作曲家としられるアレキサンドル・スクリャービンは、サ

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黄昏時のヨハン・シュトラウス

黄昏時のヨハン・シュトラウス

西陽が翳りはじめた蝉時雨の中、闘病中だった父と二人でAMラジオを聴いていた。弱い電波を拾うため銀色のアンテナを目一杯に伸ばしたポータブルラジオから、不意にヨハン・シュトラウスのウィンナ・ワルツが流れてきた。滑舌の良いパーソナリティが「エーリッヒ・クライバー指揮によるオーケストラ版のSPレコードです」と告げた。

「優雅でとっても気持ちのいい音楽だねえ。」と父。
少しボリュームを上げながら「へえ、オ

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