布施 砂丘彦

Sakuhiko Fuse 音楽家。演奏 / 批評 / 企画。 音を出したり見つけたり、文字にしたり作ったり。基本的にはじっと聴いています。 詳細は「プロフィール」をご覧ください。

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    2022年を振り返る。「剣はペンよりも強し」を認めてしまう社会について。

     2022年を振り返る。それは「暴力」の年だった。暴力が「起こった」年ではない。もちろん暴力は2022年より前から常に起こり続けていて、残念ながらその多くはいまでも続いている。わたしはミャンマーやアフガニスタン、ソマリア、ウイグルなどで起きていることを、ウクライナのそれと比べて過小に言いたいわけではない。わたしが言いたいのはこういうことだ。2022年は、暴力の「意味が変わってしまった」年だったのである、と。  今日からちょうど半年前、安倍晋三元内閣総理大臣が銃撃され、死亡し

      • 様式美の味わいについて考える ー映画『お嬢さん』(2016年)と『スタンド・バイ・ミー』(1986年)

         自分が新型コロナに感染したから、この病気のこと否が応でも気になる。そういえば、韓国の映画監督キム・ギドクは新型コロナで亡くなったんだなあ、などと思い出す。俳優へのハラスメントが#MeeTo運動で発覚し、映画業界から追放されたキムは、旧ソ連の国を転々としていた。そして、滞在先のラトビアで感染し、死んだのである。  久しぶりに彼の作品を観たいと思って、サブスクで彼の名前を検索すると『お嬢さん』という映画がヒットした。知らない作品があるんだなと思いつつ、そのまま再生ボタンを押す。

        • 照明付きオーケストラに若者招待リハーサル。行政が文化芸術の道標を作ってしまうということ。

           新型コロナに感染してしまったのでずっと家にいる。隔離期間もあと1日だ。この1週間、Prime VideoやNetflixを利用して、いくつか映画を観た。質の高い映画を安価で手軽に観ることができる。こんなに良いことはない。  初めてPrime Videoを利用したのは大学生のときだった。映画好きのわたしは、良い作品を手軽に観ることができるこのサブスクに喜んだ。もちろんわたしの観たい映画が全てあるわけではないけれど、映画なんて星の数ほどあるのだから、Prime Videoだけで

          • クラシックの新譜は「いま」を反映する!?11月の新譜をご紹介!!

             みなさまこんにちは、布施砂丘彦です。遂に流行病に罹りました。時間もできたので、noteでも更新しようと思います。  さて、ここに写っているCDは、すべてこの1ヶ月で発売されたクラシック音楽のCDです。はい、ともかく量が多い。ここにすべての国内盤があるわけではないのですが、それでも50は超えます。毎年この時期は『レコード芸術』の「レコード・アカデミー賞」があるから新譜が多いのだとか。素晴らしいCDがこんなにたくさんあるのに、紙面は限られているから、わたしが取り上げることので

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            黒田鈴尊・尺八独演会を聴いて

             今日は、黒田鈴尊氏による尺八独演会に行った。少し書き連ねる。  黒田鈴尊氏は1983年福島生まれで、早稲田大学在学中に尺八を始めた。現在、(特に現代音楽の分野において)最も注目すべき尺八奏者である。令和元年度は文化庁文化交流使として海外にも赴き、文字通り国内外で活躍している。  そんな黒田氏の独演会である。楽しみにやってきた。  氏はこれまで、独演会ではひとつの公演のなかに古典と現代のどちらをも織り込んで観客が混じるようにしてきたようだが、今回は昼が古典、夜が現代と別

            ただ美味しいだなんて言いたくない。ぼくが最も愛するカレーは、暴力で、愛で、そして宇宙だった。

             札幌に来た。狸小路に滞在している。カレーを食べるためだ。ぼくが最も愛しているカレー屋「むらかみぷるぷるカレー」が、ここにある。  ちょっと言い過ぎた。札幌には仕事で来ている。3年ぶりだ。仕事の都合としてはホテルはどこでも良いんだけれども、ともかく「むらかみぷるぷる」から近いこと、それだけを理由に狸小路7丁目にあるこのホテルに泊まることを決めた。ぼくはこの6日間の滞在で、毎日「むらかみぷるぷる」に通うことを決めている。  さて、「むらかみぷるぷるカレー」の正式名称は「村上

            布施砂丘彦、プロフィール。

            音を出したり、音を文字にしたり、あとは音を作ったり見つけたりしています。 お仕事のご依頼は、一番下にあるアドレスまでお願い致します。 1.PROFILE  演奏、批評、企画の3つの領域で活動している。東京芸術大学卒業。  幼少よりヴァイオリンを、10歳よりコントラバスを始める。  10代の頃から仕事としての演奏活動を開始し、学生時代には東日本にあるほぼ全てのプロオーケストラに客演した。また、東京ニューシティ管弦楽団の定期公演などには客演首席奏者としても出演。スタジオミュ

            「いつ明けるともしれない夜また夜を」

            本文は、2022年5月13日および14日開催予定の「いつ明けるともしれない夜また夜を」についてのステートメントです。  けっきょく、音楽には戦争を止めることなんてできない。疫病を治すこともできない。腹を膨らせることも寒さを凌がせることもできない。音楽には、わたしたちを癒してわたしたちが見たくない現実を忘れさせること以外に、なにかできることはあるのだろうか。  わたしは知っている。ベートーヴェンやショスタコーヴィッチの交響曲を演奏したとき、わたしは興奮した。頭に血がのぼった。

            「いつ明けるともしれない夜また夜を」プログラム

            2022年5月13日および14日に北千住BUoYで開催した公演のアーカイブです。 ぜひご覧ください。 当日の配布物

            山田耕筰の歩みと「音樂は軍需品なり」から考える「コロナ禍における音楽は不要不急か」という問い

             もうすでに多くのひとびとは忘れはじめているかもしれない。「音楽(あるいは演劇)には力がある」。2年前に音楽家や芸術家たちが叫んだ言葉である。  コロナ禍が始まって最初に停止したもののひとつがコンサートをはじめとするイベントだった。一演奏家であるわたしの経験では、2020年の1月のコンサートではじめて演奏者にマスク着用が義務付けられ、2月からは公演の自粛が始まり、3月から4ヶ月ほどの「休業期間」が始まった。  多くの音楽家たちが路頭に迷った。もちろんわたしも例外ではない。20

            映画「バーニング」を観て

             村上春樹の短編小説「納屋を焼く」(1983年)を原作とした映画「バーニング」(2018年)を観た。  原作は『螢・納屋を焼く・その他の短編』(1984年)に収録されたわずか30ページほどの短い作品だ。読んだのは10年ほど前なので記憶がおぼろげだが、まるで話が途切れてしまうように終わったのが印象的で、読み手に謎を与える作品だった(もちろん最後にまとめ的な段落はあるので小説としてぶつ切りではないが、物語としてはぶつ切りである)。この短編集のなかで物語がその後も続きそうだと思わ

            ひとよりえらかった音楽について

             浜松で仕事があった。いまはこだまに乗って帰るところだ。本当は今月締め切りの原稿がふたつあって、いますぐそれに取り掛からないといけないのに、缶ビール(ぷらっとこだまの引換券で手に入れた静岡麦酒)を飲んでいたら、今日の空き時間に行った浜松楽器博物館で考えたことが頭から離れない。  お酒も入っているところだし、今は仕事用の原稿は置いておいて(ホントウニイイノ?)、noteでも書いてみよう。  浜松楽器博物館は小中高生のときによく行ったが、大人になってから行くのは今回が初めてだっ

            室内楽版ブルックナーはなんのため

             本日オンラインで開催された「ブルックナーレクチャーコンサートVol.2 「私的演奏協会」とその編曲」にて、事前に以下の質問をお聞きしておりました。回答を用意しておりましたが、話す機会がなかったため、こちらにアップします。(有料のイベントでしたが、結局話していない内容なので、無料でアップしても問題ないでしょう。)  喋るための原稿なので、読みにくいかもしれません。ご容赦ください。 質問 「ブルックナーの《交響曲第7番》において、原曲と室内楽版では、それを演奏する際に違いがあ

            BUoY Radio #3 布施砂丘彦の失敗

            北千住になるアートスペース「BUoY」さんの「BUoY Radio」という企画に主演させていただきました。 「布施砂丘彦の失敗」と題した演奏動画とテクストからなっております。 ぜひご覧になってください。

            ミヒャエル・ハイドンの音楽(1)《セレナーデニ長調 P.87》

            本シリーズでは、ミヒャエル・ハイドンの音楽を愛してやまない筆者が、知られざるミヒャエル・ハイドンの名曲を解説していきます。 1. ミヒャエル・ハイドンの人生 ヨハン・ミヒャエル・ハイドンは、フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)の弟として、1737年9月17日にオーストリアのローラウで生まれた。兄と同じく古典派を代表する作曲家である。しかし、現在ではあまりに高名な兄の影に隠れ、その作品が演奏される機会は決して十分ではない。  ミヒャエル・ハイドンはまだ少年であ

            古典派のコンチェルト・グロッソ

            1. コンチェルト・グロッソとは 「コンチェルト・グロッソ(合奏協奏曲)」はバロック時代に使われた音楽の様式です。オーケストラは、独奏(ソロ)も担当する「コンチェルティーノ」と、総奏(トゥッティ)のみを担当する「リピエーノ」に分かれます。つまり、オーケストラの中にいるそれぞれのパートの代表者(首席奏者)が、時にはソロを弾いたり、他のパートの代表者たちと数人でアンサンブルをしたりするわけです。ソロ(協奏曲)・室内楽・オーケストラという三つの要素が詰まっています。一度に色々楽しめ