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(創作)散るもの、漲るもの


 1日に一度しか連絡をすることができない友人がいる。毎日きっかり16時から16時15分まで。わたしは16時という時間が日々の楽しみになった。15時50分くらいからそわそわとiPhoneを開いたり閉じたりする。
 今日も16時になる。少し待つ。16時2分、「こんにちは!」とメッセージが来た。わたしが「今日は気持ちの良い陽気で、風も少し吹いていて、桜はもうだいぶ散っちゃったよ」と伝えると、彼女は残念そうにする。「満開の桜、見たかったな」。「でも葉桜を見るとなんかフレッシュな気がして元気が出るの」とわたしが送ると「そうなの、葉桜にはエネルギーがある!」と返ってくる。「散ったところからもう次の準備をするなんて桜はえらいね」、それに対して「いまほほえんでいる、わたし」と来る。わたしは、ほほえんでいるあなたを想像して、ほほえんでいるよ。そう送るけれど、もうメッセージに既読は付かない。また明日ね。元気でいてね。一緒に葉桜、見に行こうね。わたしはそう想像をしながらただひとり、これからの23時間45分を明日の16時のために過ごすほかない。

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