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ひとつのエピソード

5年程前
あるアーティストのライブ会場で
たまたま隣り合わせた男性と
演奏を聴いてる内に
腕と腕が触れ合い
少しずつ密着して行き
やがてどちらからともなく
手を握り合った

それから連絡先を交換し
お茶や食事などに
誘われる様になった
彼に奥さんがいる事は
出会った最初の日に
聞いてはいたけど
何度か会って話をする内
親しい存在になり
ある雨の夜激しいキスをして
そのまま彼に抱かれた

それからの日々は
楽しい夢の様で
フワフワした心持ちで過ごした
ホテルのディナーも
都会の夜景も
私を酔わせ狂わせた

それでいてその一方
道ならぬ恋の行方は
出口の見えない長いトンネルを
走り続けている様で
ひどく私の心を不安にした
恋は媚薬と言うけれど
その恋は私を大人にして
そして沢山傷付けた

そんな関係が長続きする訳もなく
ある日突然終わりを告げる事になる
それは付き合って2年目の冬
私のほんのちょっとした我儘が
彼を苛立たせてしまった様だ
次のデートが突然キャンセルされ
彼からの連絡の全てが途絶えた
作り上げた砂の楼閣は
脆くも崩れて行くのだ

それでもいつかまた突然
彼から連絡が来る様な気がして
それを待ち続けている自分がいた
2年の間の思い出は
抱えきれない程になり
それに類するキーワードを
目にしたり耳にすると
その度ブルーな気持ちになった


それらの全てが
ひとつのエピソードとなるまで
あとどれくらいの時間が必要なのか
分からないが
去年の夏に起こった
もうひとつ別のある出会いが
私を立ち直らせてくれる
きっかけになれば良いと
今は思っている

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