フォローしませんか?
シェア
上野 紗妃
2021年9月5日 20:14
前編はこちら7【それぞれの秘密】「どうも刑事達が毎日、尾行している様だよ」「そうみたいね。私のところにもいる。出したゴミなんかも袋ごと持ち帰って調べてるみたい。気持ち悪いわ」「行動には気を付けた方がいい。あらぬ疑いを掛けられたら損だ」「そうだけど……」「暫くは用心して会わない方が良いな」「どうして? 何か後ろ暗い事でもあるの?」「いや別にないけど、余計な疑いを掛けられるのは嫌だし
2021年9月4日 21:01
【プロローグ】 「君の気持ちは嬉しいけど、僕には……」 男の目は長く伸ばした前髪に隠れて見えない。「やっぱりあの子の事が好きなのね」 女はひきつった笑顔を見せて俯いた。「すまない……」「謝らないで。余計みじめになるわ」 無機質な狭い部屋。およそ恋の告白をするには不似合いな場所だ。 たまたまバイト終わりの片付けがいつもより手間取って、彼と2人きりになれるチャンスが巡って来た。 思
2021年7月2日 22:57
迷探偵でその名も高い万画一道寸(まんがいちどうすん)が警視庁捜査一課の小泥木警部(こどろきけいぶ)に呼び出されたのは、六月のしょぼしょぼ雨が降る梅雨の最中であった。大森の山の手にある割烹旅館『潮月(ちょうげつ)』の離れに間借りさせて貰ってる万画一は出掛けに女将さんに呼び止められ、番傘を差し出された。しかし、万画一はさっと空を見上げると、「いやいや、この程度の雨なら、そんなもの必要ありませんや。