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ショート・ストーリー集

66
ショート・ストーリー、集めました。
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#ショートストーリー

溶けて行く夏

 ギラギラとした太陽の陽射しを受けて、海辺の街が揺らいで見えた。日陰なんてどこにも無く白…

上野 紗妃
2年前
52

TOKYO −NY

 Hi Miki、元気にしてる? わたしはね、今NYに来てるよ。 今週から最低でも半年間くらいはこ…

上野 紗妃
2年前
65

ボクたちのミライ

 朝の通学電車は見事に区分けされている。  学年ごとに乗る車両が決まっているのだ。一年生…

上野 紗妃
2年前
52

その夏のこと

【教室】  開け放たれた窓から蝉の鳴き声が聞こえる。じわりと吹き出す汗でシャツが濡れて素…

上野 紗妃
2年前
63

光一くん

 その少年を何かに例えるとするならば、ムーミンに出て来るスナフキンの様だというのが一番し…

上野 紗妃
3年前
58

トラジのカラーボール

港の近くの広い空地に寅二の働く工場はある。 寅二の仕事は工場の中での雑用とか、廃材の処理…

上野 紗妃
3年前
61

流れる水の殺人

「今日は君の誕生日だね」 数日前からシェアハウスに仲間入りした和(かず)くんに僕は声をかけた。 「夜はパーティーをしようじゃないか、歓迎会も兼ねてね」 そう言うと和くんは、照れた様に 「そうかい、ありがとう」 と素直に頷いた。 「でも君はここに来る前はどこに居たんだい?」 「Y神社の近くさ。ほら夏祭りは参道に屋台が並ぶので有名だろ」 「ああ、あそこら辺か、良い所じゃないか。それがどうしてここへ移って来たんだい?」 「困ってる所を、ここのオーナーのひろしさんに助けて貰ったんだ

北千住の片想い

毎年、夏が来るたび、思い出すことがある。 それは僕がまだ若い頃、将来の夢や展望を何も描け…

上野 紗妃
3年前
70

切ない夜明け

遠去かるあなたの足音を聞くたび、わたしは寂しい気持ちになる。それはいつも夜明け頃に訪れる…

上野 紗妃
3年前
67

花束

君のために何か出来る事を 探し続けていたけれど 僕の発する言葉で 君の心を動かすなんて とて…

上野 紗妃
3年前
68

2021豊臣の乱

四月に入ったというのに今朝方は寒かった。昨日もよく似たもので、ベッドを抜け出したとき、ブ…

上野 紗妃
3年前
55

いつかのわたしへ

【あの頃のわたしへ】 拝啓 お元気ですか? 今、あなたは世界中の不幸を背負ったような顔をし…

上野 紗妃
3年前
149

『さよなら』を言う前に

 拝啓、愛しい人。どうしていますか。 あなたは今でも、東京のどこかで暮らしているのでしょ…

上野 紗妃
3年前
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いつのまにか消えて行く

いつのまにか消えて行く 気がつけば今まであると思っていたものが、もうすでに失くなっている事に気が付く。 角のコンビニや駅前の商店街、映画館、駄菓子屋、近所のおばさん、親戚の叔父さん、うちのおばあちゃん、好きだったぬいぐるみ そう言えば、我が家の作りもリフォームしたおかげで、昔の面影は今はもうない みんなどこへ行ってしまったのだろう いつのまにか消えてしまった 駅や街中に出て人の波を見てみる 相変わらず人の群れで溢れている でも、この人達10年前にはここにいなかった人が殆どだ