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いつのまにか消えて行く

いつのまにか消えて行く

気がつけば今まであると思っていたものが、もうすでに失くなっている事に気が付く。
角のコンビニや駅前の商店街、映画館、駄菓子屋、近所のおばさん、親戚の叔父さん、うちのおばあちゃん、好きだったぬいぐるみ
そう言えば、我が家の作りもリフォームしたおかげで、昔の面影は今はもうない
みんなどこへ行ってしまったのだろう
いつのまにか消えてしまった
駅や街中に出て人の波を見てみる
相変わらず人の群れで溢れている
でも、この人達10年前にはここにいなかった人が殆どだ
その頃にいた人も多少はいるだろうが、大半はここから居なくなってるのじゃないかな
みんなどこへ行ってしまったのだろう
ふと私は携帯の友達リストを見てみる
昔仲良かった友達とは暫く疎遠になっている
結婚してしまった同級生はそれどころじゃないらしい

私は途方に暮れて、小さな公園のベンチに腰掛ける
ふとどこからか現れた老人が隣に座る
何かしらこの人
と心の中で思う
「あなたは10年前、どこで何をしてましたか?」
と突然老人は私にそう問いかける

えっと驚き戸惑う私は、暫し質問の意味を考え、老人を見る
老人はシワの深い顔でじっと前を向いて、今度は別の質問をする

「あなたは10年後、どこで何をしているとおもいますか?」

は? 私はよほどすぐにその場を離れようとした
しかし、それより先に老人は別の方向に向けて歩き始めた
私の答えも聞かずに

私はその後ろ姿を見ながら、首を傾げて、もう一度ベンチに腰掛ける

10年前と10年後か、

分からないな
と思った
何もかも変わっているかもしれないし
あまり変わらないのかもしれない

世の中には変わるものと変わらないものがある

でもその多くはほとんど
知らない間に
いつのまにか消えて行く

そう少しずつ
この世界も
私もあなたも
いつのまにか消えて行く

私は急に思い立ち
携帯を取り出し
友達にラインする
良かったら今日お茶でもしない?
暫くしてから返事が届く
どうしたの急に、久しぶりじゃない
いいわよ、ちょうど暇だったから
じゃ4時にあそこのカフェでね

そう言ってラインを閉じる
いつか変わってしまう
人との距離も
今はもう少しだけ
こうして感じていよう
明日はまた少し
今日とは違う
明日になるから

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