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TOKYO −NY

 Hi Miki、元気にしてる?
わたしはね、今NYに来てるよ。
今週から最低でも半年間くらいはこちらにいて
オーディションをいくつか受ける予定です。
TOKYOで7年間もミュージシャンの仕事してたけど、イマイチわたしには合わない気がしたからそうすることに決めました。
でもこちらはレベルが高いし、競争も激しくて、これからが大変だよ。でも頑張るつもり。
昨日もこちらのエージェントの人と話をしてたのだけど、自分の主張はしっかり相手に伝えるべきだ、て事を教えられたの。妥協しちゃいけないって。
こちらは実力第一主義だから、腕さえあればどんな大物からでもオファーが来るから、自信を持って堂々とやるべきだとも言われたわ。
わたしもそろそろ自分の目指す道をはっきり決めなきゃならないから、正念場だよね。
これまでみたいにお酒ばかり呑んで遊んでもいられなくなるのは辛いけど、仕事はちゃんと成し遂げたいと思ってるから、絶対諦めないよ。
それとラッキーなことに、すでに仕事がひとつ決まりそうなんだ。割りと格式の高いホテルのラウンジでバンドに加わってのライヴ演奏なんだけど、週に3回ほどの仕事で、そこそこにギャランティもあって、しかも今わたしが住んでるアパートメントから近いことが一番の決め手。
バンドの人達にも会ったし、演奏も問題なくやっていけそう。これはあくまでオーディションに受かるまでのつなぎではあるけどね。正式に決まったら嬉しい。生活してかなきゃいけないからさ、収入源は確保しておかないとね。
NYにも仲間や友達がたくさんいるから、こちらでの生活も楽しめそうです。
Mauiにいるグランパのことが多少心配なんだけど、LAに妹がいるから、そちらと連絡を取り合ってます。
 Mikiの方はどうですか?
Kazくんとはうまくやってる?
もし2人でこっちに来る事があったら連絡してよね。いろいろ案内もできるし、また一緒にランチでもしましょう。
それから先日読ませて貰ったMikiの小説だけど、すっごく良かったよ。ちょっと感動しました。
前にも言ったけど、わたしは将来ミュージカルを手掛けたいと思っているのね。
だからこんなストーリーが書けることを、羨ましく感じます。ちょっぴり嫉妬もしちゃったよ。これからもいい刺激を与えて欲しいなって思ってる。ほんとだよ。
これからこちらも本格的に夏を迎えるけど、そちらほど蒸し暑くはならないからね。快適に過ごせると思うんだ。
お互い健康に気を付けて充実した毎日を過ごして行きましょう。
また何かあったら連絡してください。

 NYより  by Kanon


 Hi Kanon、元気にしてる?
その後NYでの生活はいかがですか?
あなたにとってはこちらより、そちらの生活の方が向いてるのかも知れませんね。
社交的なあなたのことだから、どこに行ってもたくさんの仲間に囲まれて楽しくやって行けることでしょう。私から見たらそれはすごい才能だと思います。
ミュージシャンとして海外で勝負することを決めて、あっさりこちらの事務所をやめて海を渡って行ったのもあなたらしいです。
もちろん、オーディションに受かるには相当な努力が必要だし、大変だと思うけど、夢を見つけて頑張るって素晴らしいことだと思います。
それにあなたはこれだと思う目標を見つけたら、一直線にそれを目指して努力する人だから、頑張ればきっと結果がついて来るでしょうね。
あなたのうわべだけしか知らない人はあなたのことを天才だなんて思ってるみたいだけど、陰ではすごく努力してることを私は知ってます。
でもあなたはそれを絶対口にしない、それがあなたの魅力のひとつです。
負けず嫌いってのもあるかも知れないけど、それってそういう世界でやって行くには大切な要素じゃないかしら。
海外の音楽業界のことを私はあまり知らないけど、とにかくNYでのあなたの成功を祈ってます。

 それからあまりいいお知らせではないのですが、私とKazくんとは、お別れしてしまいました。
理由はよくある話しだけど、彼が別の人を好きになってしまい、心が私から離れてしまったことです。
ちょっとした浮気ぐらいなら良かったんだけどね、そうじゃないみたい。
それに彼をその娘の方に走らせてしまったのは、私のわがままにも原因があるみたいで、そのことに対してはお互いの言い分があるのだけれど、もうどうしようもないですね。
あと、実は最近私も、仕事が変わりました。
新しい職場は小さなオフィスだけど、前の所よりも環境も良いし、煩わしい人間関係からも解放されそうだし、上司は温厚な人だから、今度こそ上手くやって行きたいです。
最後になりましたが、私の小説を褒めてくれてありがとう。とても嬉しいです。またいいのが書けたら読んで欲しいなって思います。
ミュージカルの仕事をしたいっていう話は以前もS州をドライブ旅行した時に言ってましたね。
ぜひ頑張って夢を叶えてね。
あなたから刺激を受けてるのは私も同じなんだよ。
お互い頑張ろうね。
いつか作家とミュージシャンとして再会出来たら良いね。

またTOKYOに戻ったら連絡してください。
積もる話がしたいです。
ではまた

 TOKYOより   by Miki



   ♣︎ ♡ ♠︎ ♢ ♣︎ ♡ ♠︎ ♢



 互いにかけがえのない親友として青春の日々を過ごしたKanonとMikiだったが、
 夢を叶えるためひとりはNY に、もうひとりはTOKYO で、それぞれ新しい生活を始めた。

 ところがその後、2人が再会するまで、実に22年の歳月を要する事になる。

 Kanonは夢を叶えたのか、
 Mikiは幸せを手に入れたのか、
 その後の2人の人生は、
 そこには沢山のドラマが存在する。
 けれど、それはまた別の話。
 

 END


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