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2021豊臣の乱

四月に入ったというのに今朝方は寒かった。昨日もよく似たもので、ベッドを抜け出したとき、ブルっと震えたのを覚えている。今日は土曜日なので、特に早く起きて出掛ける予定もないので、もう少しこのまま眠っていたいなと思う。布団をもう一度頭まで被り直して目を閉じる。うつらうつらと夢の世界に堕ちてしまいそうになる。夢はよく見る方でそれも多分朝方の眠りの浅い頃にとりとめのない夢想が無意識に脳内再生される。起きた時に覚えてる部分をスマホのメモ帳に書き留めるのだが、意識をはっきりさせて目が慣れて来る頃には夢の大部分は忘れてしまっている。よほど印象的なものでないと無理だ。それも何の辻褄の合わないものが大多数で後で読み返してみても何だこりゃ!と思う様なものばかりだ。今朝も何だか夢を見ていたのだが、頭が冴えて来る頃には綺麗さっぱり記憶から抜け落ちてしまっている。惜しいなあ、これを物語に書ければ斬新で画期的な小説を書けたのにと記憶力の無さに凹む。

それでも腹が空く。トイレにも行きたくなった。小の方であります。もそもそと動いてからむっくりと上半身だけ起き上がる。特に腹筋を鍛えている訳ではないが普通に100回くらいは腹筋が出来るのが自慢だ。ベッドの上で座り込んだ状態で暫くどこか一点を見詰めてぼうっとする。他人が見たら何か考え事をしている様に見えるかも知れないが、実際はその逆で何も考えていない。直ぐに動き出せないだけの話だ。本当に始動が悪くて、もし私が車ならすぐにユーザーさんから文句を言われるタイプだ。スタートしねえじゃねえかよ!って。そこに持って来て今朝はその後また元の体勢に戻って横になってしまった。また寝るんかいって誰かに突っ込まれそうだ。おいでやす小田さんがいいな。松蔭寺さんなら睡眠は摂ろうと言ってくれるだろうけど、もう充分に睡眠は摂った。

と、ここまでただ起きるまでの話を延々と800字程書いた。読んでる人もそろそろ退屈し出す頃なので話を次に進める事にしましょう。
ベッドから抜け出すとやっぱり寒い、もう春だと思って多少薄着になってるから余計にそう思う。先週ならこれで丁度良かったはずなのにと思いながらガウンを引っ掛け、デジタルクロックの室内温度の表示を確認すると18℃になっている。我慢出来ない程ではないが、私の感覚では20℃以下だと少し肌寒く28℃位になると暑く感じる。とりあえず石油ファンヒーターの電源を入れる。と、電源が入らない。そうだ、思い出した。昨日もつかなかったんだ。表示を確認してみるとE−0というエラーメッセージが出ている。これはどういう意味なのだろうかと思ったが、取説などはどこに行ってしまったのか見当たらない。何度押してみても電源は入らずE−0ばかりだ。その間も足下は冷えるし、肩や背中におかんが走る。いや、母親が走るのではない。悪寒が走る。寒気がするって事です。点かないので苛立って闇雲にボタンスイッチの類を押してみる。何の変化も見られない。灯油は確認してみると結構入っている。う〜む問題はやはりE−0だ。

これを解読しなければとネットで検索してみる。おーあるある、案外皆さんこのE−0問題で困ってらっしゃるのね。ようつべにも直し方の動画がうPされてる。原因は吹き出し口か吸い込み口の汚れや埃などによるものという事らしい。つまり、掃除をしろよという訳だ。すみませんね。いつも放ったらかしで。それで簡単に外側から雑巾や煤払いもどきのもので手に届く範囲内の所を拭いてみた。結果、それでもダメ。なんとしてもダメ、動かない。対処方法をもう一度よく見直してみる。なんと前面カバーや後方ファンのカバー部分のネジを取り外し分解して拭き掃除している。ガーンそこまで大掛かりな事をしなくてはいけないのかと面倒くさくてため息が出る。暫く諦めてそのまま過ごし、朝食用のふわふわちぎりパンを食べコーヒーを飲み、noteをチェックする。テレビでメジャーリーグ中継を観ていたらパドレスのピッチャーがノーヒットノーランを記録し、他球場の様子で大谷くんもホームランやらタイムリーヒットやら打ったらしくてえらく盛り上がってる。しかし、足元が寒い。靴下を履けよという話だが、もう一度ファンヒーターの電源を入れてみる。やはりE−0。

仕方なくプラスドライバー、どこかにあったかなとあちこち探して回る。そしたら運良くペン立ての中に大きさの違う黒いのと赤いのが見つかった。試しに赤いのから前面のカバーのネジに当ててはみたが回らない。空回りするだけだ。黒いのはどうか、おっ、ハマった気がするが、しかし、硬い! 持ち手の所がそんなに太くないので力が入らない。時々空振りしてネジの頭からドライバーの先が外れる。もう一度力を込めてネジの頭をドライバーで押し込む様にして反時計回りに回す。おっ、今度は手応えがあった。ネジはゆっくりと回り始めた。いいじゃないか、いいじゃないかと心の中で鼻歌を歌う。すると短いネジ、前面の右側が外れた。同じ様に左側を。経験はものを言う。今度は簡単に外れた。どんなもんだい! やればできる! 下の方から鉄製の前面カバーをファンヒーター本体から離し始める。少しずつ隙間が出来て来た、上部は嵌め込みになってるみたいだからカクンとポイントに上手く力を掛けてやればカタンと外れて本体の前面の内部が初めて日の目を見る。ほーこんなになってるんや。想像以上に赤や白のコードが複雑に絡み合っている。

とりあえず雑巾であれこれ拭いてみる。結構な汚れ、細かい部分はなかなか汚れは落ちない。まあいいか。おおまかな部分を見比べても最初の頃とは比べ物にならない程綺麗になってる。奥の方にも手や指先が入れる範囲で拭きまくった。いいんじゃないの? 綺麗になってる。これでダメなら仕方ない。カバーを元通り取り付けてネジを閉める。さて今度は後方のファンの部分だ。ネジ開けは前面部と同様慣れたもので難なく取り外せたよワトソン君。カバーは網の目をしておりそれを目詰まりが無いよう念入りにきっちり拭く。どうしても硬くて汚れがこびりついてる部分もあるにはあるが全体から見れば小さな事だ。これくらいで動かないなんて言われたら敵わない。我慢をせよと説教する。問題はファンの部分、プロペラだ。作りが複雑で手が裏側に届き難い、しかし、見てみるとこれが一番汚れている気がする。本来ならそれを取り外して水洗いしてやるのが正解だろう。だがそのためには複雑な金具をいくつか取り外さなければならない構造になってる。私には無理だ、自慢じゃないが諦めは早い。てな訳で手の届く範囲だけ雑巾掛けをして汚れを落とす。手が届かなくても雑巾を中に通して別の箇所から先を掴み裏側を拭く。最高だ。これ以上のメンテナンスはない。よく見たまえヘイスティングくん綺麗になったろう?

カバーを取り付ける。元通りの形に戻し、外面の周囲を前面的に拭き掃除する。ルンルンルン楽しいな、なんてそんな感じ。朝から頑張った。もうこれだけやれば満足だ。思い残すことは何もない。これで駄目ならすっぱり諦めるさ。おかげでその頃には体温も上がり部屋の温度も上がり、ほんの少し汗ばんでも来た。
そして、さあいよいよスイッチを押してみる。電源は入るか? 世紀の瞬間。ちょっとドキドキしますな。ポンと押す。

つ、つ、点いた。電源ボタンが赤く点滅しE−0は出ない。ミッションは成功だ。やったよ。治したぜ。自分の力で。まさに、やればできるんだ!
そして待ちに待った温風が吹き出した。おお、思わず感嘆の声を挙げる。感無量である。
し、しかし、暑い、ぼ、僕は汗をかいていたんだ。
暑さに耐え切れず電源を消した。
部屋の温度を確認してみると23℃を表示していた。もうファンヒーター必要ないやん。

結局、それ以来夜までファンヒーターを使ってない。半日を要したファンヒーターの反乱も解決した頃にはそれを必要としなくなった。ため息が出る。
このファンヒーター、いったいどこのメーカーだろうと見てみたら、「トヨトミ」であった。
今日のこの日を「2021豊臣トヨトミらん」と名付ける事にした。努力はいつか報われるだろう。


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