【毎週ショートショートnote】助手席の異世界転生
お題:助手席の異世界転生
俺の車の助手席はいつも空席だ。もちろん彼女がいないと言う事もあるが、それ以上に「俺の車は厄介者」と言う理由で空けている。そしてその厄介者が今日も本領を発揮し出すようだ。
エンジンをかけ走り出した車のハンドルを握る。薄っすらと光を帯び始めた助手席を横目に、最早カーナビの案内なしで行ける程の往復を重ねた山に向かった。
「初めまして。ここは異世界です。貴方は転生をしました」
「……は?」
見晴らしの良い山の頂上に停めた車。ぽんっと音が弾けて見知らぬ人間が助手席に召喚される。後部座席に用意していた着替えや食料といくらかの金に携帯電話を渡して車から降ろせば、助手席に召喚された推定女は目をまん丸にして叫んだ。
「あのクソ神ー!超金持ちお嬢様にしろっていっただろうがよー!」
どうやら目の前の推定女の俗にまみれた今際の際の望みは叶わなかったらしい。その「クソ神」に偶然の重なりで付き合わされている俺に出来るのは、乾いた笑いを吐いて推定女を置いて行く事だけだ。
「異世界人でも金持ちお嬢様に転生なんか願うんだな」
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