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【ショートショート】繁栄と傲慢

「もしさ、地球上で一番繁栄した生き物が象だったら、もっと世界は変わってたのかな?」

 彼女がぽつりと呟いた。コーラの入ったグラスで氷がからんと回った。僕は手にしていたポテトチップスを、口に運ぶ寸前でぽとりと落とした。

「いや、なんで象?」
「ほらー、象って寿命が50年か60年くらいあるじゃん? んで頭もいいし仲間思いだし会話もするしで、一番人間と条件が近いんじゃないかなーって」

 突飛な生き物選にはきちんと理由があったようだ。なるほどと納得しながら、砕けたポテトチップスをティッシュで拾い集める。彼女はストローで黒茶色のコーラを二周させた。

「まあ、変わるんじゃない? 人間じゃなくなる訳だし」
「私も最初はそう思ったんだけどさ」

 拾い集めたポテトチップスをゴミ箱に捨てる。新しいポテトチップスを一枚、袋から取り出して口元に運んだ。彼女はストローで氷をつつきながら、まっさらな顔をしていた。

「結局同じなんじゃないかなって、最近は思うようになったの」

 ―――だって繁栄したら傲慢になるでしょ。
 そう呟いた彼女が僕には、まるで神様のように見えた。


繁栄するから傲慢になるのか、傲慢になれるから繁栄出来るのかが最近の悩みどころ。


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