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オンライン顧客IDの重要性とDXを成功に導く方程式 | 今求められる顧客とのつながりとは? | セミナーレポート<パート2>

2022年11月9日(水)に、株式会社顧客時間 共同CEO/取締役、オイシックス・ラ・大地株式会社 COCO奥谷 孝司 氏がゲスト登壇した、共催ウェビナー【今求められる顧客とのつながりとは? 〜先進リテール事例に学ぶ「顧客体験」のリアル〜】を開催しました。

海外事例を交えた顧客体験のリアルからOMOを実現するための秘訣まで、最新のリテール事例を紹介。

今回は、セミナーレポート3部作としての第2部、『顧客とのつながりから紐解くオンライン顧客IDの重要性とDXを成功に導く方程式』をお届けします!

話し手


オイシックス・ラ・大地株式会社 
奥谷 孝司 氏

1997年に良品計画へ入社。カテゴリーマネージャーを経て2010年にWEB事業部長に就任し、「MUJI passport」をプロデュース。 2015年にCOCOとしてオイシックス・ラ・大地に入社。 2017年にEngagement Commerce Labを設立。 2018年に顧客時間共同CEOに就任。 2020年からLazuli株式会社の顧問としても活躍中。


記事のポイント

● 顧客とのつながりを強める3つの要素は【1】カスタマージャーニー、【2】顧客とつながりつづけるための行動提案、【3】オンライン顧客ID

● 顧客とのつながりを強めるためにはオンライン顧客IDが重要

● DXは、従業員(主に店舗スタッフ)とお客様の両者にとって有用なデジタル体験を提供することで成功に近づく


はじめに

顧客とのつながりを構築しながらDXを進めていくことは、企業にとってとても重要なことです。

本日は、「顧客オンラインID」と「DX」をキーワードに、顧客とのつながりを強めるためのポイントを深堀していきましょう。


顧客とのつながりを強めるのに不可欠な3つの要素

まず、顧客とのつながりを強めるための3つの要素を紹介します。

【1】カスタマージャーニー

お客様は、商品の選択・購入から使用まで、一連の流れを経て購買体験を高めています。かつては「購入」という点に注目すればよかったのですが、特にコロナ禍を経てオンラインでの買物が一層と身近になった今、顧客にとっては選択・購入の時間よりも「使用」に費やす時間の方が長く、価値が高くなりました。

そのため、これからは商品の「選択」「購入」のタイミング以上に、「使用」時の顧客の体験に重点をおいてカスタマージャーニーを描くことが大切になってきます。
そしてこの選択、購入、使用までの流れをしっかりと体験設計していく必要があります。

■出典:『顧客とつながる時代の「マーケティングの新しい基本」
NY最新事例にみるリテールDXの新トレンド』セミナー資料より

【2】つながっていることの価値提供

時代の流れとともに、消費者の購買行動は変化しつづけています。
コロナ禍以前のように、店舗との繋がりのみに依存するビジネスモデルは限界を迎えてきました。

そのため、今までのような「機能価値(※1)」と「体験価値(※2)」の提供だけでは、顧客とのつながりを強めづらくなっています。

これからの時代は、デジタルを活用してお客様とのつながりを深めていくこと、つまり「繋がっていることの価値」の提供が大切になってきます。これは、お客様が何年先でもサービスを利用したいと思えるような価値のことを指します。この価値は、常に企業からの提案行動によって創られる価値です。

例えば、オイシックス・ラ・大地の代表である高島氏は、「食の課題をビジネスで解決する」というミッションのもと、オンラインで食材を購入できる仕組みを設計しました。ミールキットや珍しい食品を店舗に行くことなくすぐに購入できる、という体験を提供し、顧客が「繰り返しサービスを使い続けたい」と思うような、つながっていることの価値を創り出したのです。

このように、自社のブランドとつながりつづけたい、と思ってもらえるような提案行動を顧客に対して打ち出していくことが重要です。「つながっていることの価値」を軸に、ブランドの体験や商品・サービスの機能を一貫して練っていくことで、顧客とのエンゲージメントを強めることができます。結果、売上の向上にもつながるのです。

※1 機能価値:商品やサービスの機能によって創られる価値のこと。
※2 体験価値:ブランドとしての体験によって創られる価値のこと。

■出典:奥谷孝司・岩井琢磨「Customer Value Pyramid」


【3】オンライン顧客ID

オンライン顧客IDとは、顧客一人ひとりに付与されたデータ管理向けIDのことを指します。行動データに顧客IDを紐付けて収集・記録することで、オフラインだけでは追うことのできなかった行動を分析することが可能です。

そのため、より詳しい顧客の行動を可視化し一人ひとりに合ったコミュニケーションを行うことで、顧客との関係向上がしやすくなるのです。


オンライン顧客IDが重要な理由

前述の3つの中で、まず取り組むべきことは何でしょうか。それは、3つ目に紹介した「オンライン顧客ID」です。
なぜなら、「カスタマージャーニー」や「つながっていることの価値提供」を実現するためには、お客様1人1人をきちんと識別するためIDが必要不可欠であるためです。

オンライン顧客IDがあれば、顧客一人ひとりの店舗・ECでの購買履歴や閲覧したコンテンツ、来店した店舗などの情報が分かります。このオンライン顧客IDをオンライン・オフライン共通のIDとして活用することで、「誰が」「何を」「どうしたいのか」をオンライン・オフライン問わず知ることが可能に。
よって、お客様のニーズを知ることができ、あらゆる施策に活かせるのです。

また、お客様の購買データ等の情報が取れるのはECのみだ、という時代は終わりました。オフラインとオンラインの垣根をなくし顧客情報を一元化することで、販売チャネルを問わず、顧客にとって最適な購買体験を提供することが可能に。その結果、顧客とのエンゲージメントを強めることにつながるのです。

■出典:『顧客とつながる時代の「マーケティングの新しい基本」
NY最新事例にみるリテールDXの新トレンド』セミナー資料より


DXを成功に導く方程式:DX =E(C x E)

より具体的にイメージしていただくために、奥谷氏が編み出した「小売業がDXを成功させる方程式」を取り上げます。

DX =E(C x E)とは

これは、特に小売業のDXを成功させるには、お客様(customers)と従業員(employees)の織りなす体験(Experience)に、しっかりとデジタルが乗っかる必要がある、ということを示しています。

DX(Digital Transformation)=Experience×[C(customers)×E(employees)]

さらに言い換えると、従業員(主に店舗スタッフ)とお客様の両者にとって有用なデジタル体験を提供しなくては、DXは成功しないということです。特に、店舗スタッフの協力なしにDXは成り立ちません。
例えば、店頭でアプリが立ち上がらない時、店舗スタッフのサポートが必要になります。店頭受け取りサービスの利用時に、店舗スタッフから「Aさん、いつもご利用ありがとうございます」と声をかけられたらどうでしょうか?お客様はきっと嬉しく思うはずです。このように、DXを成功させるためには店舗スタッフの協力は必要不可欠なのです。

DXを成功に導くためのポイント

では、さらに先ほどの式を深堀りして、DX成功のポイントを見ていきましょう。

実は、従業員(主に店舗スタッフ)とお客様の両者にとって有用なデジタル体験を提供しなくては、DXは成功しないというのは、2016年からアカデミックの世界でも言われていることです。

企業のDXを成功させるためには、従業員が担う役割が多くあります。従業員がデジタル知識(この図ではモバイルテクノロジーと表す)によってお客様への提案能力を高められるよう、企業側が従業員に対してサポート・投資をし評価をする、といった仕組み作りがポイントとなります。

また、従業員にデジタル知識さえ持ってもらえばよい、という訳ではありません。いくらDXが進んでも、店舗は人と人が触れ合う場所です。そのため、人間力もDX成功のポイントのひとつとなります。

ここで、ベン図をひとつ紹介します。

■出典:DX diagram ©︎藤井陽平_顧客時間


図を見ると、円が重なっている色がついた部分のみがDXが関与する顧客体験(CX)にあたります。この図で伝えたいのは、「顧客体験(CX)に関与するのはDXだけではない」ということです。

つまり、DXさえ進めればよいのではなく、「SX(OMOによる店舗変革)」「EX(OMOを前提とした従業員体験)」「CX(OMOによる顧客体験)」を三位一体とし、連携をとることが重要なのです。

例えば、店頭受け取りサービスを導入(=SX)することで、従業員は「Aさんが今日、店舗に来る」(=EX)という認識をします。
その結果、Aさんが来店した際に「いつもありがとうございます」というコミュニケーションを取ることができ、Aさんの顧客体験(=CX)を向上させることができます。

このように「SX」「EX」「CX」の連携がきちんと取れているか、というのもDXを成功に導くためのポイントのひとつなのです。

【補足】
SX:Store Experienceのこと。OMOによる店舗変革による体験を指す。
EX:Employees Experienceのこと。OMOを前提とした従業員体験を指す。


さいごに:Alvin Tofflerのことば

ここまで、オンライン顧客IDの重要性やDXを成功に導く方程式をお伝えしました。最後に、アメリカの評論家・作家・未来学者である「Alvin Toffler」の言葉を紹介します。

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“The illiterate of the 21st century will not be those who cannot read and write,
but those who cannot learn, unlearn, and relearn.

――21世紀における無学な者とは、読み書きができない者ではなく、
学び、忘れ、また新たに学びなおすことができない者である”

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目の前の事象だけを見ると、何でも分かっているような気持ちになってしまいがちです。本セミナーをきっかけに、改めて立ち止まってリテールDXを考えるためのきっかけとなればと思います。


まとめ

セミナーレポートの第2部では、顧客とのつながりから紐解くオンライン顧客IDの重要性とDXを成功に導く方程式とそのポイントを紹介しました!
次回は、いよいよ第3部、トークセッションの模様をお届けします。
お楽しみに😊😊

↓↓ 第1部はこちら ↓↓


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