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龍のいた景色〜見沼〜

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私の育った見沼。何気なく散歩しながら眺めていた代用水と桜並木。そこは古くは東京湾と繋がり、人と自然との関わりが今に伝承される場所でした。語られる龍と人との伝説の、クライマックスは…
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#龍

「表門・龍猫」(Front gate・Dragon&Cat)/個展「かくれざと」出品作#8

「表門・龍猫」(Front gate・Dragon&Cat)/個展「かくれざと」出品作#8

国昌寺の開かずの門を描いた際、門の表と裏それぞれの表情に惹かれ、両方とも描きたくなり、二点連作にしました。今年の後半は、ほとんど見沼やその周辺を足や本、ガラス絵で散策していました。思えばそれ全体が、私の制作の日々でした。

 国昌寺は、見沼代用水東縁にあります。それは日光御成道に接しています。その開かずの門の龍の彫刻は、日光東照宮の眠り猫や三猿で有名な左甚五郎作とのこと。これが歴史的事実かどうかは

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「科戸(しなと)」(wind occur) /個展「かくれざと」出品作#6

「科戸(しなと)」(wind occur) /個展「かくれざと」出品作#6

 科戸(しなと)は、風の起こるところ。罪を吹き払う風。元を辿れば神道に登場する言葉ですが、画面下に描いた開かずの門は国昌寺のもの。
 明治政府の神仏分離政策以前は、神と仏は当たり前のように混ざり合っていました(神仏習合)。例えば日本の七福神を代表する柔和な大黒天が、インドでは破壊の神だったのは有名な話です。
 このように外から入ってきたものを、自らの内のものとどう折り合いをつけるかは、人間の常に変

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「東西龍戯」(East&West Dragon play) /個展「かくれざと」出品作#4

「東西龍戯」(East&West Dragon play) /個展「かくれざと」出品作#4

 時間や空間を超え、そこにあるもの。和磁石、道、見沼という環境。全体を俯瞰する形で双龍に見立てた作品です。京橋(大阪)GOROさんの、雰囲気のあるしっかりとした額。

 この最奥層の和磁石の表現(別角度のクローズアップはこの記事に)は、今回の制作で初めての試み。見る人にハッとさせ、その記憶に存在感を強く残しながらも、同時に絵全体としては、あくまでも視覚的なシンプルさを失わないように出来ないか・・・

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地図とコンパスと龍

地図とコンパスと龍

これまでに各層に描いたものを重ねます。

それぞれの陰影や色彩が反射し合い、角度によって微妙に変化してゆきます。金箔の感じは、この作品はスポットよりも自然光が綺麗な気がします。

東西の小さな龍たち

東西の小さな龍たち

大きな作品を描いている途中で、それぞれ単体でも描いてみたくなり、並行して制作しました。こちらでは大作の方ではやらなかった多層で試みます。

 どちらも掌に収まるサイズ感。

 嵌め込んで完成。どちらも斜めから見ると、より浮遊感が楽しめます。水生の小動物が泳いでいるような雰囲気になりました。

追記)2点とも個人蔵になりました。

東西の龍の絵、続き

東西の龍の絵、続き

前回から更に掻き落としています。一度落とすと戻れませんが、怯まずにどんどん描きます。

掻き落としが終わると箔貼り。今回は色箔にします。

続く

龍神の絵/完成

龍神の絵/完成

 風を抱く龍神。
 地上の人間の営みの層を重ね、完成です。

「科戸(しなと)」(wind occur)
多層ガラス絵(2層)
545×425mm

龍神の絵/掻き落とし〜着彩〜箔貼り

龍神の絵/掻き落とし〜着彩〜箔貼り

 龍と門の絵。再度大きい作品を描きます。龍と門の関係を再考。

続く

どんな龍

どんな龍

 裏門と対になる3層の多層ガラス絵作品を描きます。
 開かずの門の、表はやはり、龍がいる。

 何度か龍を制作するうちに、それがどんな細部を持つのか、ということを自分なりにより突っ込んでいけるようになってきたように思います。
 制作では頭と手、両方が動き出します。
 自分なりの歩みが、見る人にとっての求めるものになるとは限りませんが、自分なりの龍を描くならそういう舵取りは必須です。
 そこを蔑ろに

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龍猫図

龍猫図

「龍猫図」
多層ガラス絵(3層)

 龍というお題から、自分にとって最も身近であまり詳しく知らなかった環境への掘り下げによって、少し変わった龍の作品になりました。この一点を作る間に考えたことなどからもう少し作りたいものが派生してきました。

龍を描く

龍を描く

前回の掻き落としを終え、着彩と箔貼り。

 周辺に渦を描いていましたが、他の層の描画が進んだので、その兼ね合いを見つつ更に掻き落としていきます。これは実際に重ねないと結構分からないので時間がかかりました。

 結局ほぼ全部削り落としました。

開かずの門の絵

開かずの門の絵

 前回の作品を制作した際、知ったのは、見沼の釘打ち龍伝説内で龍は、村人たちに危害を与え暴れ回るもの、即ち神格化されない水の神の姿として語られているということです。コントロールの出来ない野生を、それでも寺や神社の高い場所に祀っている。
 ここには人間と水の神との関わり方の奥深さが表されているように感じます。

 古事記の中の最古の神話のウサギ「因幡の白兎」。
 そこに、アニミズムとして聖獣信仰が読み

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龍の顔

龍の顔

 開かずの門の龍を大きいサイズで描くことにしました。
 サイズが大きくなるという事は、踏み込みの深さも問われます。作品から常に問いかけられているような心地です。

 「この龍は一体どんな顔をしているのか。」

 作者はテーマをかっちりと決めた上で、その通りに描く。と思われがちですが、現実は全く異なります。テーマが作品を作り、作品がまたテーマを作るのです。
 考え、描き、また考える。反復のリズムの先

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