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第5回:IRの対象とは? 【新版】経営企画担当者のためのIR/SR実践講座

こんにちは。
T&Aフィナンシャルマネジメントのさいとうです。
企業経営者や企業の経営企画部門に所属する人たちが知っておくべきIR/SRの知識・スキルについて説明している本連載。

ここまで、IR/SRの基本的なことをお話してきましたが、今回以降、少し実践的なことをお話してゆこうと思っています。

今回は、IRの目的を理解した今、どういった人たちを対象にIRを行ってゆけばよいか?という点についてご説明します。

対象に応じたIRを行ってゆくことが肝要で、それを間違ってしまうと、非常に非効率となってしまうので、対象(=ターゲット)についてしっかり理解するようにしてください。

≪T&Aフィナンシャルマネジメント≫
T&Aフィナンシャルマネジメントはベンチャー企業に特化した経営財務支援、クライアント目線に立った中小規模M&Aのご支援をしております。
また、上場企業をはじめとする大企業~中堅企業の経営企画をはじめとする経営管理部門のサポートなど、幅広なご支援をご提供しております。

IR対象の大分類

IRは自社の状況を適時適切に伝え、情報の非対称性を解消することで適正な株価形成を行うこととご説明しました。

では、「誰に?」IRを行ってゆくのか?
それがIRの対象のお話です。

主にIRは投資家向けに行いますが、投資家は大きく分けて機関投資家と個人投資家に分けられます。

機関投資家というのは、多くの人たちから巨額の資金を集め、それを運用する人達のことを指します。

加えて、後ほどご説明するように、セルサイドアナリストという、証券会社に所属して、個別企業を研究し、投資推奨などを行う人も機関投資家の分類としてもよいと思います。

また、個人投資家というのは言わずもがなですが、個人の資金で機関投資家に比べて少額の資金を運用している投資家のことを指します。

機関投資家の分類

機関投資家は大きく分けてバイサイドの機関投資家と、セルサイドの機関投資家に分けられます。

バイサイドの機関投資家は、他人からお金を集めて資金運用をする人たちのことで、ヘッジファンドと呼ばれる絶対的な収益追求を行う投資家や、伝統的な組成ファンドの目的にそって運用を行う投資家も存在します。

また、大きくとらえると、バイサイドには生命保険会社や信託銀行という、金融機関として中長期的な資金を顧客から預かり、それを運用する投資家も存在します。

少し難しい話ですが、投資手法としてアクティブ運用とパッシブ運用というものがあることもご理解いただきたいと思います。

アクティブ運用というのは、様々な情報を収集し、絶対的な収益を追求する投資手法で、アナリストが集めてきた情報をもとに、ファンドマネージャーと呼ばれる人たちがロングショート(株式を安値で買って高値で売却する方法と、高値で空売りし、安値で買い戻す方法をミックスした運用手法)という手法で資金運用をしています。

アクティブ運用に対してパッシブ運用というのは、別名インデックスファンドとも呼ばれ、TOPIXや日経225などの主要指標に連動するように銘柄をファンドに組み入れ、指標に連動する値動きを目指す運用手法です。

ここで申し上げたいことは、アクティブ運用の投資家は貪欲に企業の情報を収集することを希望する、イコールIRの対象となりうるのに対し、パッシブ運用の投資家は指標連動がメインの運用手法なので、企業の情報を獲得することはしません。
言い換えればIRの対象にはならないということです。

バイサイドに対してセルサイドという機関投資家も存在します。
先ほど簡単にご説明しましたが、セルサイドアナリストというのは、証券会社や投資顧問会社に所属し、自らの資金は運輸しないものの、企業の情報を収集し、投資家に投資助言をする人たちです。

IRの対象という観点においては、セルサイドのアナリストは自ら運用は行わないものの、彼らの顧客には情報を欲しているバイサイドのアナリストが複数存在するので、セルサイドのアナリストを通じて、効率的にバイサイドの複数の投資家にアプローチが可能であり、効率的なIRを行うことができるということになります。

したがって、セルサイドのアナリストももちろんIRの対象となります。

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個人投資家

個人投資家は自らの資金をみずから集めた情報に基づいて投資をする人たちです。

別途個人投資家向けIRの回に詳細にご説明しますが、個人投資家が運用する金額は一般的に機関投資家が運用する金額ほど大きくないので、一人ひとりの個人投資家に相対でIRを行うことは極めて非効率です。

したがって、個人投資家はIRの対象となるものの、その方法にはいろいろな工夫が必要であると考えてください。

まとめ

今回はIRの対象という観点から投資家の種類についてご説明しました。

まとめると、IRの対象となるのは、以下の投資家ということになります。

【IRの対象となる投資家の種類】
・セルサイドの機関投資家
・バイサイドのうち、アクティブ運用を行う機関投資家
・個人投資家

今後、各々の投資家に対するIRの手法についてご説明してゆきますが、各々の投資家の特徴に応じた効率的なIRを行うことが求められています。

次回以降の連載にご期待ください。

【(新版)経営企画担当者のためのIR/SR実践講座】
第1回:IR/SRってなんだろう?
第2回:IRの目的とは?
第3回:SRの目的とは?
第4回:(コラム)「東証市場区分変更」経営企画担当者が知っておくべきポイント
第5回:IRの対象とは?
第6回:機関投資家の種類とは?
第7回:個人投資家向けIRとは?
第8回:SRの手法とは?
第9回:(コラム)経営企画担当者が知っておくべき「コーポレートガバナンス・コード」とは?
第10回:IR支援会社が提供するIR/SRコンサルティングサービスとは?
第11回:実質株主判明調査とは?
第12回:実質株主判明調査を活用したIR/SR戦略とは?
【(旧版)経営企画担当者のためのIR/SR実践講座】
第1回:IRの目的とは?
第2回:IRの対象とは?
第3回:個人投資家向けIRとは?
第4回:機関投資家向けIRとは?
第5回:SRの目的と手法とは?
第6回:IR支援会社が提供するIR/SRコンサルティングとは?
第7回:実質株主判明調査とは?
第8回:実質株主判明調査を活用したIR/SR戦略

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