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【経営企画担当者のためのIR/SR実践講座】第6回:IR支援会社が提供するIR/SRコンサルティングとは?

前回までの連載でIRとは何か?SRとは何か?そしてその実務上のポイントは何か?ということについて書いてきたので、今回は少し道を外して、「IR支援会社」という存在と、彼らの提供するコンサルティングメニューについて書いてみたいと思う。

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IR支援会社の起源

この連載でも数回にわたって説明しているように、日本の証券市場においてIRやSRというものに脚光が浴び始めたのは2000年に入ってからといっても過言ではない。

というのも、それ以前は護送船団方式の中で金融機関による事業会社株式の政策保有や、事業会社間の株式持ち合い等が存在し、自社の状況をわざわざ外部にわかりやすく説明する必要もなく、あえてIRをする必要がない状況が続いていた。

もちろんバブル時代には株式投資が活発に行われており、投資家は会社から提出される情報をもとに投資銘柄を決めていたのだが、会社から提出される情報はあくまでも「法定」される情報がほとんどであり、現代のような、手をかえ品を変え、のような情報提供は皆無であったに等しい。

また、2000年以降はインターネットの勃興もあり、ウェブを用いた情報提供等、IRを行うインフラ整備が進んでいった時代でもある。

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初期のIR支援会社

現在も宝印刷プロネクサス等のディスクロージャー会社が存在するが、2000年代初期においてはこういったIR刊行物の発行支援会社がメインだった。

主に有価証券報告書や株主総会の招集通知といった法定書類の作成支援が中心であり、現在においてもそれら法定書類に加え、株主通信や統合報告書、CSRレポートといった刊行物に強い。

加えてそれらの会社はIRサイトとったwebサイトの構築支援にも長けており、何れにせよ紙媒体、web媒体を問わずディスクロージャーツールの作成支援が中心となっている。

実質株主判明調査を中心とするIR支援

その後、株式の政策保有や持ち合いが解消され、発行体の株主構成が大きく変化することになった。

従来は銀行やシンパの事業会社といった「安定株主」が発行済株式の太宗を保有している状況であったものの、機関投資家や個人投資家といった見知らぬ「第三者」の株主が多くを保有することとなった。

では、実質株主判明調査とは何か?

企業の有価証券報告書に記載されている株主を見てみるとわかることだが、株主欄には「マスタートラスト信託銀行」や「ゴールドマンサックス」といった金融機関の名前が並んでいる

これら金融機関は株主でありながらも「カストディアン」と呼ばれ、機関投資家に代わって株主名簿に登載されている面々である。

したがって議決権行使や売買の判断はバックにいる機関投資家によってなされることになり、IRやSRの対象となる機関投資家の名前はカストディアンの名前を知ってもわからないのである。

そこで実施するのが実質株主判明調査なのだが、調査は主に海外機関投資家の二重課税を避けるために信託銀行から提供される免税登載やヒアリング調査、そして公募ファンドの運用報告書を取りまとめて把握する手法をとる。

実質株主判明調査を行うことで発行体は自社の「本当の」株主を把握することができ、IR/SRを効果的にできるようになるのだ。

現在は信託銀行を始めIR支援会社が実質株主判明調査を提供しているが、国内の萌芽となった会社はアイ・アールジャパンだろう。

アイ・アールジャパンは2000年代初頭から実質株主判明調査を国内発行体に提供し、数々のプロキシーファイトやM&Aにおける調査に大きな影響力を行使してきた存在だ。

IR支援会社のコンサルティングメニュー

IR支援会社は日本IR協議会のIR支援会社紹介ページにリスト化されているのでご参照願いたい。

ここではIR支援会社の主なサービス内容をご説明したい。

上述の通りIR支援会社のメインメニューは実質株主判明調査が基本だ。

実質株主判明調査に基づき、既存株主とのエンゲージメント支援や新規株主の発掘を支援する。また、海外ロードショーと呼ばれる、海外機関投資家面談のアレンジなども行う実質株主判明調査がないと、そういったIR/SR戦略をそもそも構築できないとっても過言ではない。

SR分野においては判明調査により判明した実質株主に対する総会上程議案の説明支援やコーポレートガバナンスコードに乗っとったガバナンス構築支援等を行う。

総じて言えることは発行体のIR専門部署や総務部門と連携し、発行体のIR/SR支援を行うことになる。

また、IR支援会社が提供するwebサービスは発行体のIR/SR推進には必須アイテムであり、例えばアイ・アールジャパンが提供するIR Proでは運用報告書等を利用した公開情報ベースに簡易な判明調査を提供しており、自社と他社の株主構成等を比較し、今後のIR施策等を構築することができる。

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まとめ:IR支援会社の導入は必要か?

IR支援会社の導入は必要か?という疑問に対する答えはイエスともノーとも言い難い。

本気でIRを取り組む理由が明確であるならばIR支援会社の導入を検討しても良いが、予算的に厳しい会社や、株主構成上そこまで真剣にIRを実施しなくても良い発行体であればファイストゥフェイスのコンサルティング導入はtoo muchかもしれない。

ただ、最低限自社の株主の実質保有者を手触り感だけでも得ておく必要があると考える会社は、IR支援会社が提供するwebサービスだけでも導入することをオススメする。

公開情報ベースでカストディアンの裏側にいる実質株主すら知らないというのは、企業のリスク管理上問題だと言わざるを得ない。

T&AフィナンシャルマネジメントのIR/SRコンサルティングサービス

T&AフィナンシャルマネジメントCFOサービスの一環としてIR/SRコンサルティングサービスをご提供している。

上場企業のみならず、将来的にIPOを志向している企業で、資本政策の立案から上場を意識した機関投資家との対話を考えられている起業からのお問い合わせを受け付けている。

経営企画担当者のためのIR/SR実践講座
第1回:IRの目的とは?
第2回:IRの対象とは?
第3回:個人投資家向けIRとは?
第4回:機関投資家向けIRとは?
第5回:SRの目的と手法とは?
第7回:実質株主判明調査とは?
第8回:実質株主判明調査を活用したIR/SR戦略
【(新版)経営企画担当者のためのIR/SR実践講座】
第1回:IR/SRってなんだろう?
第2回:IRの目的とは?
第3回:SRの目的とは?
第4回:(コラム)「東証市場区分変更」
第5回:IRの対象とは?
第6回:機関投資家の種類とは?
第7回:個人投資家向けIRとは?
第8回:SRの手法とは?
第9回:(コラム)経営企画担当者が知っておくべき「コーポレートガバナンスコード」とは?
第10回:IR支援会社が提供するIR/SRコンサルティングサービスとは?
第11回:実質株主判明調査とは?

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