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第1回:IR/SRってなんだろう? 【新版】経営企画担当者のためのIR/SR実践講座

こんにちは。
T&Aフィナンシャルマネジメントのさいとうです。
昨年8月から連載していた、『経営企画担当者のためのIR/SR実践講座』ですが、思わぬ反響をいただくことができました。

前回連載でもご説明していますが、旧来のIRや株主総会運営を中心とするSRは、正直経営から距離の遠い、半ば「閑職」のような存在であったのに対し、2000年代以降は一気にその重要性が増してきました。
一方で現在では、企業のエリートが集う経営企画部門において身に着けておくべき必須の知識・スキルとなっているようです。

今回、前回連載を完全リニューアルし、改めて(新版)として連載を開始することにいたしました。
理由としては、近年IR/SRを取り巻く環境が劇的に変化していることです。
また、前回連載での反響を踏まえたポイントなどを改めて盛り込んで新連載をスタートさせていただきたいと思っています。

前回に引き続き、本連載をお読みいただいた皆様からの忌憚のないご意見をお待ちしております。

【T&Aフィナンシャルマネジメント】
T&Aフィナンシャルマネジメントはベンチャー企業に特化した経営財務支援、クライアント目線に立った中小規模M&Aのご支援をしております。
また、上場企業をはじめとする大企業~中堅企業の経営企画をはじめとする経営管理部門のサポートなど、幅広なご支援をご提供しております。

IR/SRとは?

この連載をお読みになっていただいている方であれば、さすがにIRを「Integrated Resort(統合リゾート)」だとは思われていないと思います(笑)。

これからご説明するIRは「Investor Relations」の略であり、SRは「Shareholder Relations」の略のことをいいます。

IRやSRを日本語に訳すことは少ないと思いますが、強いて言えば、IRは投資家との関係性、SRは株主との関係性ということになるのでしょうか。
両者の違いは、「投資家」は現状においてまだ自社の株式を持っていない人も指すのに対し(現在株式を保有している株主も含みます)、「株主」は現在自社の株式を持っている人ということになり、潜在株主も含む投資家と、顕在株主との違いということになるかと思います。

IR/SRは、いかにして自社のステークホルダーの1つである「株主」や「投資家」という人たちと係るか?を考え、戦略的にリレーションを構築してゆく活動であるということになるかと思います。

IR/SRはなぜ必要か?

IR/SRの意義はいろいろありますが、端的に言えば、「上場企業として株主対応が必要だから」ということになります。

企業には上場企業と非上場企業といった区分がありますが、上場企業は株式市場に自社株式を上場し、広く多くの投資家から資金を集めています。
したがって、上場企業は投資家に自社の状況を正しく伝達することが法令その他で義務付けられています
また、不特定多数の投資家がお金さえ払えば対象会社の株式を購入できる状態にあるわけなので、自社の株主となる投資家の利害関係も様々です。
高い配当を要求する投資家もいれば、株価の値上がりによる利益を追求する投資家もいます。
また、企業価値の向上を目的として、強固なガバナンス構築を要求する株主もいます。

したがって、IR/SRは狭義には、上場している以上、法令などで定められた状況の報告を株主にすることであって、広くは利害関係が交錯する株主と交流し、自社への理解を深めることが目的ということができます。

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IRの目的

ここまでIR/SRと、両者を統合してお話していましたが、これからはIRとSRを分けてお話しようと思います。

先ほどご説明のとおり、IRは投資家に向けた活動であり、SRは株主に向けた活動と大きく分けることができます。

ここではIRの目的について簡単にご説明します。

IRの最大の目的は「適正株価の形成」にあります。
株式は市場取引されており、基本的に売買の需給バランスで株価が形成されます。

業績が上がると思う人が多ければ株価は上がるはずですし、反対であれば下がるはずです。
ただ、不特定多数の投資家が平等に売買できる環境であればよいのですが、上場企業から適切に情報が提供されないと、投資家の持つ情報にバラツキが生じます。
このバラツキのことを「情報の非対称性」というわけですが、IRの最大の目的は、適時適切、かつ平等に企業の情報を開示し、投資家に伝達することで、正しい株式の需給バランスを確保するこことで、適正株価形成に寄与することであるといえます。

よくIRの目的を「株価を上げること」というIR担当者がいます。
たしかにIRに時間と人的リソース、金銭的負担を割いたにも関わらず株価が下がってしまっては一見、本末転倒のようにみえます。
ただ、先ほどのご説明のとおり、市場取引される株式は、正しい情報に基づく需給バランスで価格が決定されるので、IRの巧拙によって株価が高く捏造されることは望ましい状況とはいえません。

SRの目的

一方のSRの目的は何でしょうか?
SRは、既存株主との関係性と説明しました。

SRもIRと通ずるところが多いのですが、基本的には既存株主を中心に自社の情報を開示し、理解を深め、自社への信任を取り付ける活動ということができます。

SR活動を恒常的にしっかりと行っていないと、株主総会に上程した議案に想定外の反対票が集まってしまうこともあり、否決されてしまうリスクもあります。

詳細は連載の別回でご説明しますが、SRは継続的に「株主との対話」を実践し、自社への理解と信任を集め、企業経営の安定性を確保することが目的となります。

まとめ

新連載初回の今回は、IR/SRの簡単な説明と、目的をご説明しました。
冒頭申し上げました通り、IR/SRは特に上場企業の経営者や経営企画担当にとって知っておかなくてはならない知識・スキルということができます。
昨今のコーポレートガバナンス改革や株式持ち合い解消の加速化の流れと相まって、企業経営を取り巻く環境は大きく変化しています。
次回連載から、より詳細にIR/SRについてご説明してゆきます。
本連載がお読みいただいた皆様のIR/SR理解の一助となれば幸いです。

スライド1

【(新版)経営企画担当者のためのIR/SR実践講座】
第1回:IR/SRってなんだろう?
第2回:IRの目的とは?
第3回:SRの目的とは?
第4回:(コラム)「東証市場区分変更」
第5回:IRの対象とは?
第6回:機関投資家の種類とは?
第7回:個人投資家向けIRとは?
第8回:SRの手法とは?
第9回:(コラム)経営企画担当者が知っておくべき「コーポレートガバナンス・コード」とは?
第10回:IR支援会社が提供するIR/SRコンサルティングサービスとは?
第11回:実質株主判明調査とは?
第12回:実質株主判明調査を活用したIR/SR戦略とは?
【(旧版)経営企画担当者のためのIR/SR実践講座】
第1回:IRの目的とは?
第2回:IRの対象とは?
第3回:個人投資家向けIRとは?
第4回:機関投資家向けIRとは?
第5回:SRの目的と手法とは?
第6回:IR支援会社が提供するIR/SRコンサルティングとは?
第7回:実質株主判明調査とは?
第8回:実質株主判明調査を活用したIR/SR戦略

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