【経営企画担当者のためのIR/SR実践講座】第2回:IRの対象とは?
前回、IR/SRとは何か?という基本的なことを説明した。
続く、今回はまず、IRの基本的なスタンスを確立するために、IRの対象という点について、広義のIR、狭義のIRの観点から見てゆきたいと思っている。
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広義のIRとは?
広義のIRとは簡単にいうと法定事項をモレなく対応するということだ。
IRにおいては会社法や金商法、上場規則等、多くの法令や規則にのとった運営を行う必要がある。
主な広義のIR業務には下記のようなものがあり、発行体によっては総務部が担当していたり、財務部が担当していたり、IR部が担当するケースもあり、扱いはまちまちだ
決算短信開示(決算補足説明資料の開示)
有価証券報告書、四半期報告書開示
適時開示など、さまざまな発生事項の対外開示
などの会社法や金融商品取引法関連、そして東証の上場ルールに基づいた「法定事項」の対応だ。
業務としては法定事項なため、この後ご説明する狭義のIRよりもある意味、実は優先順位が高かったりもするが、広義のIRは最低限上場企業として行わなければならないことであり、いわゆる狭義のIRの方がプラスアルファで行う必要性がある分、オリジナリティが強く存在するため、この連載ではそちらをメインに解説してゆこうと思っている(法定事項等は巷に書籍があふれているため、適宜そちらをご参照願いたい)。
ただ間違ってはいけないのは、法定事項である広義のIRの遂行ばかりに目を取られ、それでIRをした気になってしまっている担当者もいるが(実際に時価総額帯の低位なオーナー企業にありがちだ)、それはあくまでも法定事項であり、本質的な意味でのIRをしていることにはならない。
狭義のIRとは?
では狭義のIRとは何か?それは、いわゆる株主対応や投資家対応ということになり、前回ご説明した上場を維持することや、適正株価を形成するための活動であり、この連載のメインターゲットということになる。
まずは株主や投資家といった人々の属性や切り口などをご説明したいと思う。
株主・投資家の区分
株主や投資家を区分したいと思うが、切り口は複数存在する。
一色淡に株主をとらえることをせず、明確に属性を分けたアプローチが必要なため、今後のこの連載に必要な主な区分を以下にご紹介したいと思う。
既存株主と潜在株主の視点
これは今まさに自社の株式を保有している既存投資家と、現在はまだ株式を保有してはいないものの、将来的な保有を検討している潜在株主に区分される。
大まかに言えば、既存株主に対しては継続保有を促し、潜在株主に対しては新規保有を促すことが目的とされる(別の回で説明するが、一定の「流動性」が株式には必要なため、既存株主全員がずっと持ち続けるのは本質的には健康的ではない状況となる)。
個人投資家と機関投資家
また、保有主体別の属性の観点においては個人投資家と機関投資家に分けることができる。
個人投資家とは読んで字のごとく、一般個人による株式保有のことだ。
また、機関投資家とは別途詳細は説明するが、投資信託や私募ファンドなどを運用している投資ファンドや、年金資金などを運用する信託銀行や生命保険会社など、多数の人々のお金を集めて大きなロットで株式投資をしている機関のことを指す。
アクティブ投資家とパッシブ投資家
機関投資家を更に分解すると、投資運用を行っている機関投資家は主にアクティブ投資家とパッシブ投資家に大別される。
アクティブ投資家とは、積極的に発行体ごとの情報を収集し、その収集された情報をもとに投資判断を行い、割安と認められる発行体への投資(バリュー投資)や今後の成長性が認められる発行体への投資(グロース投資)を行う。
アクティブ投資のポイントは積極的に情報を集めるという点であり、発行体と密にコンタクトを取ろうとする投資家群でもある。
一方でパッシブ投資家は積極的に情報は収集しない。というのも、彼らの投資手法はインデックス投資と呼ばれるものが主であり、インデックス投資とはTOPIX等やJPX日経400のような、金融工学により算出される指標に連動したパフォーマンスに近似させるべく、対象指標のレプリカ(複製)を形成させることを第一義的な目的とすることから発行体独自の情報収集は行わない(行う必要がない)。
狭義のIRにおける対象とは?
詳細は次回連載以降に譲ろうと思っているが、狭義のIRにおいて積極的な情報提供の対象となるのは上記の区分においては①潜在・顕在双方の、②個人投資家と機関投資家となるが、③機関投資家の中ではアクティブ投資家のみということになる。
もっとざっくりと分類すれは2分される。すなわち、個人投資家とアクティブ投資家ということになる。
次回以降の連載では、IRにおける2分されたターゲットにいかに情報提供やコミュニケーションを行ってゆくか?という点についてご説明してゆこうと思っている。
T&AフィナンシャルマネジメントのIR/SRコンサルティングサービス
T&AフィナンシャルマネジメントはCFOサービスの一環としてIR/SRコンサルティングサービスをご提供している。
上場企業のみならず、将来的にIPOを志向している企業で、資本政策の立案から上場を意識した機関投資家との対話を考えられている起業からのお問い合わせを受け付けている。
経営企画担当者のためのIR/SR実践講座
第1回:IRの目的とは?
第3回:個人投資家向けIRとは?
第4回:機関投資家向けIRとは?
第5回:SRの目的と手法とは?
第6回:IR支援会社が提供するIR/SRコンサルティングとは?
第7回:実質株主判明調査とは?
第8回:実質株主判明調査を活用したIR/SR戦略
【(新版)経営企画担当者のためのIR/SR実践講座】
第1回:IR/SRってなんだろう?
第2回:IRの目的とは?
第3回:SRの目的とは?
第4回:(コラム)「東証市場区分変更」
第5回:IRの対象とは?
第6回:機関投資家の種類とは?
第7回:個人投資家向けIRとは?
第8回:SRの手法とは?
第9回:(コラム)経営企画担当者が知っておくべき「コーポレートガバナンスコード」とは?
第10回:IR支援会社が提供するIR/SRコンサルティングサービスとは?
第11回:実質株主判明調査とは?
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