マガジンのカバー画像

キリスト教およびキリスト教徒

42
運営しているクリエイター

#キリスト教

古今東西の文明を包み込む京都「祇園祭」──禁教時代に「聖書物語」を飾った函谷鉾(「神社新報」2002年1月14日)

古今東西の文明を包み込む京都「祇園祭」──禁教時代に「聖書物語」を飾った函谷鉾(「神社新報」2002年1月14日)

 日本三大祭りのひとつ、京都・八坂神社の祇園祭について書こうと思います。

 昨年(平成13年)9月11日のアメリカでの同時多発テロ事件に端を発するアフガニスタン戦争はすでに最終局面を迎え、今度は他のイスラム諸国を標的とする第二段階に進みそうな気配です。「文明の衝突」という表現を否定する人は多いのですが、そうした側面は否定しても否定し切れないようにも思います。

 テロ事件の容疑者にはアフガン人は

もっとみる
影をひそめた「国家神道」批判──「終戦記念日」カトリック大司教談話を読んで(平成22年8月29日)

影をひそめた「国家神道」批判──「終戦記念日」カトリック大司教談話を読んで(平成22年8月29日)

 日本のカトリック教会(司教団)は、過去30年間にわたり、広島の原爆記念日から終戦記念日までを、平和のための祈りと行動の期間と位置づける「平和旬間」と定め、平和アピールを続けてきました。

 今年は司教協議会会長の池長潤大司教名で談話が発表されました。その内容は、これまでと同様、カトリック2000年の歴史を偽るかのような観念的で危険な平和主義ですが、「国家神道」批判が影をひそめたのは目新しい傾向で

もっとみる
市有地内神社訴訟で最高裁が憲法判断か?(2009年9月17日)

市有地内神社訴訟で最高裁が憲法判断か?(2009年9月17日)

 最高裁大法廷がどうやら来春にも、政教分離問題に関する重要な憲法判断を示すことになりそうです。

 このメルマガの読者ならご存じのように、日本の政教分離政策は異様なダブル・スタンダードが続いています。つまり、こと神道に関しては完全分離主義、厳格主義が押しつけられ、それ以外の宗教については、ゆるやかな分離主義、限定分離主義に任されています。

 たとえば、憲法89条は、宗教団体のために公金を支出した

もっとみる
御代替わりを攻撃する日本キリスト教協議会リポートの不信仰(令和3年2月28日、日曜日)

御代替わりを攻撃する日本キリスト教協議会リポートの不信仰(令和3年2月28日、日曜日)

▽1 聖書は「王」への敬意を要求している

日本のプロテスタント教会・教団・関係団体で組織される日本キリスト教協議会(NCC。東京・新宿区)が今月23日、令和の御代替わりについて「総括」する文書を発表した。

取りまとめたのは靖国神社問題委員会(委員長=星出卓也・長老教会牧師)で、いわゆる靖国問題をテーマとする特別委員会によるリポートであるところに、すべてが言い尽くされている。端的にいって、本来の

もっとみる
キリスト者に育てられ、キリスト教国の影響を受けられた昭和天皇──天皇・皇室の宗教観 その3(「月刊住職」平成27年11月号)

キリスト者に育てられ、キリスト教国の影響を受けられた昭和天皇──天皇・皇室の宗教観 その3(「月刊住職」平成27年11月号)

 中国や朝鮮では、王朝が交替するたびに国の宗教が代わった。だが日本では、万世一系の天皇を中心に、諸宗教が平和共存する多元的宗教空間が保たれた。

「およそ禁中の作法は神事を先にす」(順徳天皇『禁秘抄』)を原則とする皇室では、仏教に帰依された天皇もまた神道祭祀を厳修された。「私をおいてほかに神があってはならない」(十戒)とする一神教世界ではあり得ない現象だ。近代になると、皇室はキリスト教文化を積極的

もっとみる
「戦前の迫害」はあったのか──教会指導者と行政による歴史の改竄(平成19年6月10日日曜日)

「戦前の迫害」はあったのか──教会指導者と行政による歴史の改竄(平成19年6月10日日曜日)

 メルマガを読んでくださっているクリスチャンの読者から、戦前のキリスト者が受けた「迫害」について、何度かメールをいただきました。たいへんありがたいことです。正直にいえば、私も以前はこの読者と同様に、キリスト者たちがつらい体験をした、という歴史をほとんど疑いもなく信じていました。

 けれども、戦時中、著書が発禁処分になるなど、当時の代表的神道人が受難を経験していたということを知り、歴史の事実は常識

もっとみる
「大和撫子の恩人」パトリック・バーン神父──厳寒の北朝鮮で殉教す(平成20年6月14日号)

「大和撫子の恩人」パトリック・バーン神父──厳寒の北朝鮮で殉教す(平成20年6月14日号)

(画像はバーン神父。メリノール会HPから拝借しました。ありがとうございます)

 敗戦後、靖国神社の焼却が噂されていたとき、「殉国者はすべて靖国神社に祀られるべきだ」とマッカーサーに答申し、同社を救い、一方、キーナン検事に何度も面談して昭和天皇訴追の断念、天皇制の存続を認めさせたビッテル神父のことはよく知られています。

 しかし、もう1人、日本を救ったカトリック神父がいることはあまり知られていな

もっとみる
帝国憲法発布を記念する讃美歌づくり?──完全な礼拝の自由を得る(平成19年12月5日水曜日)

帝国憲法発布を記念する讃美歌づくり?──完全な礼拝の自由を得る(平成19年12月5日水曜日)

 ブログの読者のお一人である佐藤雉鳴さんが、2冊目の著書を出されました。前回の本は『本居宣長の古道論』、今回は『繙読「教育勅語」』で、勅語に記されている「中外」の解釈が1世紀以上にもわたって、「国の内外」と誤読されている、戦前の日本が誤解された一因がここにある、と指摘しています。

 そのエッセンスは勅語衍義批判という形で人形町サロンに掲載されていますので、ご興味のある方はどうぞお読みください。

もっとみる
信仰を忘れた聖職者たち──性犯罪、献金横領、そして政治的暴走と目を覆うばかり by 木下量煕+斎藤吉久(「正論」平成19年11月号)

信仰を忘れた聖職者たち──性犯罪、献金横領、そして政治的暴走と目を覆うばかり by 木下量煕+斎藤吉久(「正論」平成19年11月号)

▢1 投票日当日の政治講演ミサ

 参院選投票日当日の平成19年7月29日、さいたま市のカトリック浦和教会(司教座聖堂)で行われる聖日ミサに、多くの信徒たちが注目しました。埼玉、栃木、群馬、茨城の四県で構成されるさいたま教区の最高責任者であるT司教が、ミサの説教を利用して政治講演を行うとの情報が走ったからです。

 教会の教義(カテキズム)は、政治に直接介入することは聖職者ではなく、信徒の任務だと

もっとみる
告白の文化と禊祓の文化──キリスト教と神道の違い(平成19年5月7日月曜日)

告白の文化と禊祓の文化──キリスト教と神道の違い(平成19年5月7日月曜日)

 私小説作家でもエッセイストでもないので、個人的なことや、主観的なことは書くまいと心に決めているのですが、今回のタイトルにあやかって少しだけ「告白」しますと、家人が思わぬ事故に遭い、緊急入院、手術という慌ただしい日々が続き、このブログ(メルマガ)もすっかり間が空いてしまいました。幸い軽傷で済みましたが、私も家族も仕事と生活のリズムが取り戻せないままでいます。

 そんなこんなで古い話になってしまい

もっとみる
日本の稲作儀礼にも似た英国のクリスマス・イブ(「神社新報」平成17年1月24日から)

日本の稲作儀礼にも似た英国のクリスマス・イブ(「神社新報」平成17年1月24日から)

「マンダンガスは病院行きのために車を一台借りてきてゐた。クリスマスには地下鉄が走ってゐないからだ」

 ベストセラー「ハリー・ポッター」の一節である。舞台は英国ロンドン。地下鉄が走らないとしても、魔法使ひなら魔法を使へばよささうなものだが、人間の世界にゐるときはそれができず、やむなく車を借りる羽目になったらしい。だが、なぜ地下鉄が走らないのか、説明はない。

 じつをいへば、ドーバー海峡の海底トン

もっとみる
コロンブスは英雄か犯罪者か──カトリック戦略が招いた悲劇(「神社新報」平成12年9月11日号から)

コロンブスは英雄か犯罪者か──カトリック戦略が招いた悲劇(「神社新報」平成12年9月11日号から)

 来月(10月)12日は、アメリカでは「コロンブスの日」である。1492年のこの日、クリストファー・コロンブスが「新大陸」を「発見」したというので祝日と定められている。官公庁や銀行、学校は休みで、ニューヨーク5番街などでは華やかなパレードが繰り広げられる。

 11月のサンクスギビング・デー(感謝祭)や7月の独立記念日の賑わいとはほど遠く、ほとんど行事らしい行事のない地方もあるが、他方、中米では近

もっとみる
「ニュー・ミレニアム」を考える──畑作文化に由来する循環的時間観念(「神社新報」平成12年1月10日号から)

「ニュー・ミレニアム」を考える──畑作文化に由来する循環的時間観念(「神社新報」平成12年1月10日号から)

 昨年(平成11年)来、ちまたは「ミレニアム」であふれている。

 某洋酒メーカーが売り出した「ミレニアム・ワイン」に始まって、有名でパートには「ミレニアム・コーナー」が設置され、「西暦2000年」にあやかった商品がところ狭しと並べられている。

 消費低迷で不況にあえぐデパート業界がワラにもすがる思いで打って出た商法なら同情しないでもないが、「ミレニアム」の起源がキリスト教にあることは明らかで、

もっとみる
神饌になった南蛮菓子「金平糖」──靖国神社創立130年とザビエル来日450年(「神社新報」平成11年8月16日号から)

神饌になった南蛮菓子「金平糖」──靖国神社創立130年とザビエル来日450年(「神社新報」平成11年8月16日号から)

 先月(7月)上旬、2万灯を超える灯籠の飾り付けなど、みたままつりの準備で大わらわの靖国神社を訪ねました。同社では金平糖(こんぺいとう)が神饌として神前に供され、参拝者に授与されると聞いたからです。

 はて、金平糖といえば、もともとはポルトガル語で、たしかキリスト教の宣教師が信長の時代に日本に伝えたのではなかったか。それがなぜ、よりにもよって、外国との戦争で非命にも戦陣に散った戦没者をまつる靖国

もっとみる