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お客様との距離を図る。《近すぎず遠すぎない接客》

 1か月前に鎌倉へ行きました。素敵な小路をたくさん歩き、そして思い知りました。体力の無さ。愕然とした猫目はそれから毎晩散歩をするよう心がけ、扁桃腺炎になろうと散歩へ行きまして悪化。そうして未だに鼻水が止まらない猫目です。みなさん。こんにちは。気温差がまた激しいですね。風邪など気をつけてください!(風邪引きに言われたくないと思いますが)

 さて本日は『テーマを語ります』の第五回目とおもいきや、まさかの七回目でした『お客様との距離を図る。近すぎず遠すぎない接客』をテーマにお話しを進めていきます。

 本テーマをくださった方は、ホテルマンとして経験の長い方で、接客するのが大好きな男性です。お話を聞くとその熱意をじわじわ感じます。さっそく本題です。接客について。

お・も・て・な・し

 よく耳にする言葉おもてなし。突然ですが皆さんは「おもてなし」の意味をご存じでしょうか? 有能なる辞書・広辞苑さんに「もてなし」の意味をお尋ねいたしますと以下の3つ。

①としなし。とりつくろい。たしなみ。
②ふるまい。挙動。態度。
③取扱い。あしらい。待遇。

広辞苑無料検索サイトより

 一般に言われている「おもてなし」の作法は「目配り」「気配り」「心配り」など。 日本のサービズはこういう「おもてなし」精神に優れており、世界で見てもトップレベルと言われています。

 外国のスーパーで釣銭の飛んでくるのは日常茶飯事。飛んでくるといっても小さく弧を描くくらいですが。日本ではそんなことはお客様が許しません。「ちょっとお釣りの渡し方が雑なんだけど」先日ドラックストアに立ち寄った際にそのような台詞を耳にしました。

 おもてなしの心を持つ。つまり相手(お客)を思いやる。そういう気持ちは質の高い接客には必要不可欠と言えるでしょう。

接客と販売のちがい

 先に整理しておきます。接客と販売の違いについて。以外と混沌としていますこの2つですが、どちらもお客様を相手にするもの。その点に目立つ大差はありません。違いは「受動的」か「能動的」かというスタイルにあります。

① 接客の場合は【受動的】であること。

 これはつまり基本的に自ら動くことなく、お客様の方からやって来る。例えばコンビニにお客様が来店されたとき。わざわざ「このメロンパンが新商品なんですよ~。先週も新商品になってましたけどね~」なんて店員自らお客様のもとへ商品を売りには行きません。

 お客様がメロンパンをもってレジヘ向かい、そこではじめて接客をします。これは完全なる受け身の例ですね。スーパーやドラックストアも同様。お客様が欲しいものを探し、求め、そしてレジへ購入しにやって来る。

 ちなみにテーマパークも接客の部類です。世界一すばらしい接客を受けられると言われているディズニーランド。そのリピーター率はなんと97%です。ディズニーランドはあらゆる点で夢の世界です。キャスト(スタッフ)とお客様との感動の物語がいくつも存在しています。

②販売の場合は【能動的】であること。

 能動的とは自らいろいろと考え、行動を起こすということ。来店されたお客様のもとへ積極的に商品を売りに行きます。高度なコミュニケーションが必要とされています。まさか車の販売店にやって来たお客様を最後まで「どうぞお好きに選んでくださいね~。欲しいのあったらカウンターへお申し付けくださいね~」など。そのような放置スタイルは基本的にしません。

 他にもペットショップがこれに該当します。お客さまとコミュニケーションを図り、相談を受けたり、アドバイスをしたり。ときに商品となるものをおすすめしたり。そのように店員自らが動くこと。それが販売です。

ちょうどいい距離感

 接客と販売との違いを把握したところで「接客」を中心としたお話に戻ります。接客において「ちょうどいい距離感」とは、どのような距離感を指すのでしょう? 猫目が思うにそれは心地よい距離感です。

 心地よい距離・・・と言われても困りますよね。かなり曖昧な定義です。そもそも人の感じる心地よさの距離は千差万別あって科学的に証明されていない。・・・そう思いきやどっこいあるのです。その名もパーソナルスペース。なんだか恰好いい響きです。

 パーソナルスペースは別名「パーソナルエリア」「個人距離」「対人距離」とも呼ばれています。これらはproxemics(プロクセミックス)近接学の分野らしいです。そのような分野があるなど猫目は今日まで知りませんでした。ぜひ詳しく見ていきましょう。

パーソナルスペース

 パーソナルスペースとは端的にいうと「他者が近寄ることで不快を感じる空間」をいいます。パーソナルスペースはその人間の関係性(家族恋人友人上司など)や、男女の差でも変化します。パーソナルスペースには4つの距離が存在しています。

1 密接距離(0ー45cm)
  ごく親しい関係に許容
2 個体距離(45ー120cm)
  相手の表情を読み取れる距離
3 社会距離(1.2ー3.5メートル)
  容易に会話が可能な距離であり、商談に用いられる距離
4 公衆距離(3.5-7メートル)
  複数人の顔を見わたすことのできる距離

 これら4つの距離の中で「お客様とのちょうどよい距離」はどこに位置しているでしょうか? そうです。太線引かせていただきました「3」の社会距離です。つまり接客の距離感として1・2メートル大まかに言いまして1メートル離れるくらいの距離が適切というわけです。しかしこれには個人差があります。個人差というのはその相手(お客様)との関係性のこと。

 関係性が深ければ深いほど距離感は縮まり(1メートル)、反対に初対面など浅い関係性では距離感は遠く(3メートル)なるということです。

職種によってさまざま

 上のパーソナルスペースで見てきた距離ですが、そうは言えども実際に、その距離感は職種によってさまざま。コンビニではコンビニの距離感があります。レジを通して相手と向き合うのにおおよそ1メートルくらいでしょうか。スーパーなども同じです。では、マッサージの施術を行うお店ではどうでしょう。

👧「あのどうしてそんなに離れているんですか?」
🐺「はい。わたくし社会距離であるところのお客様との距離1メートルを厳守しております」
👧「いやいや。それじゃあマッサージにならないでしょう」
🐺「いえ。いま、まさにお客様に『氣』を送ってマッサージをしております」
👧「帰ります」

 マッサージそのものを売りものとするマッサージ店の施術者がパーソナルスペースに従い、お客様との距離を1メートルあける。そんなことは通常ありませんよね。サービズを提供する職種によってお客様との距離感は異なる。これは、それぞれの職種による一般的な「概念の距離」とも言い換えられます。

物理的でなく心理的に

 お客様との距離感を図る。それは何も物理的な距離だけとは限りません。そういう距離には物理的なものの他に「心理的な距離」が重要であると思います。心から距離を縮める。こちらの方がより信頼を得られるように思います。そういう心の距離を縮めていくために、心のコミュニケーションを図ります。

 うまくコミュニケーションをとるコツ。それは「とにかく相手の話を聞く」ことです。そのために、まずは「相手の興味のあるものや関心のあることを見極め、それを引き出す」ことがポイント。

 自分の話ばかりでは相手は退屈してしまいます。それがどれほど専門的・学術的な事柄であれど、絶えず話し続けては相手もうんざりしてしまう。接客は大学の講義の場ではありません。主役は教授でなく、お客様です。自分の専門知識をひけらかすよりもお客様のお話を聞くことが肝心です。

 コミュニケーションとは意思疎通を意味します。相手の意思を尊重しましょう。たまにアパレルショップで自分(店員さん)の好みや流行りのスタイルなどをところん語る方がいらっしゃいます。が、正直いいます。

 お客様はそんなことよりも「自分に合う服が知りたい」のであり、他の誰に似合うかどうか。誰が着ているのがどうか。を、知りたいのではありません。そんなことは雑誌やSNSを見ればわかることなのです。

 さらに言うと、店員さんの服の趣向を聞きたいのでなく、「自分の趣向を話したい」「聞いてもらいたい」のです。相手の話を積極的に引き出すことで円滑な会話が成立します。「○○なんですよ!」でなく「○○なんですか?」と質問をする。そうすることにより会話も続きます。

 しかし注意が一点ございます。むやみやたらと質問をするのは止めましょう。しつこく問いただすのは禁物です。どんどん心が離れていってしまう可能性があります。なるべく自然に。他愛ない会話からはじめるのが最適です。 

十人十色のお客さま

 いくらパーソナルスペースを厳守したところで、実際のお客様は、皆さま、人間でいらっしゃる。するとここに個性が発生します。個人差でなく「個性」です。つまりお客様によって距離感の「心地よさ」は異なる。

 職種の概念を問わずして、そうした個性は上位に立ちます。同じサービズ、同じ距離を保っていてもお客様によっては「遠い」と感じることもあれば「近い」と感じることもあるわけです。これを見分けるのはとても難しい。これに至っては経験を積むしかないと思います。

 お客様は十人十色。そのことを頭の片隅にいろいろな方法・いろいろな距離感を試してみる。失敗することもあるでしょう。クレームだってもらいます。そうしたことから反省し、改めて考えることで次へ繋がります。試して反省してそれを生かすことで接客スキルはあがっていきます。おおよその距離感もつかめるようになります。

さあ、探偵になろう!

 とつぜんの『探偵』見出しに目が点のあなた。猫目が風邪にやられたとお思いのあなた。違いますよ。結論ですよ。接客のお話をしています。これから探偵のお話をしようと、そう思っているのではありません。勘違いなさりませんよう。 

 質の高い接客を取得し、お客様に「おもてなし」の精神で向き合う。そのためには心の距離を図ることが大切です。心の距離を近づけるためにコミュニケーションをとる。コミュニケーションはお客様との意思疎通に成り立つ、信頼関係でもあります。

 コミュニケーションをうまく図るには会話が必要です。そういう会話では自分の話よりも相手の話を重点的に!そして中心的に!「私はあなたに興味があるのです」との姿勢で挑みます。なんだかそれでは胡散臭い。そう思いますよね。しかしご心配なく。相手が楽しそうに話し出すところを見ているうち、心の底から相手に興味が湧いてくるものです。

 相手の話を大部分に、しかし自分の話をまったくしないのは不思議です。というよりもそれでは会話が成立しません。相手の話をほとんど自分の話1割でまいりましょう。そしてお客様は十人十色。百人居たら百通り。個性を見分けるのは非常にムツカシイ。ならば普段からの習慣が大切です。

 出ました。結局は習慣が大切との結論です。質の高い接客そしてお客様との心地よい距離感を図るために日頃なにをするべきか。そうです。

 探偵になればいいのです。

Ⅰ お客様をよく観察しましょう
(まじまじと目をこらしてお客様を追うのは、失礼であり気味が悪いです。ここはひっそり何となしに脇目にお客様の動向を観察します)

Ⅱ 状況を把握します
(お客様の行動を正確に把握するよう努めます。たとえばホテルのエントランスにてお客様が外をチラホラ、しきりに見ている。外は雨が降り出しそうなどんよりとした雲行き。そういえば今日は夕方から雨予報だったな、との思考を働かせます。)

ⅲ 経験値から推測(予測)
(お客様の行動や発言から、お客様の求めているものをこれまでの経験から推測・予測してみます。ホテルのエントランスのお客はきっと雨に降られることを心配している。いや待て。でも誰かを待っているのかもしれない。)

Ⅳ 先回りをしましょう
(予測し、行動に移します。お客様から「excuse me」と声をかけられる前に先回り。エントランスのお客様へ傘をもっていこう。もしも誰かと待ち合わせしていたとしても……傘をもっていって怒られることはないだろう。なんなら傘を2本もって行っちゃう。「夕方から雨が降るみたいですね。もしよろしければ傘をどうぞ」と手渡す。そういうスタッフにお客様は頬をほころばせ、感動することでしょう。そのタイミングで待ち合わせの相手が現れる。傘を2本とも渡します。「よろしければお使いください」)

Ⅴ 捕まえます
 
犯人つかまえて逮捕する。のではありません。驚きによる感動でお客様の心をキャッチ。お客様の心をつかみます。信頼度は右肩あがりです。

 さて。これらⅠ~Ⅴはすべて探偵の思考・行動に沿ったものです。「探偵になる」つもりでⅠ(観察)Ⅱ(状況把握)ⅲ(推測)Ⅳ(先回り)Ⅴ(捕まえる)の順に行動していきます。これらを習慣化させることでお客様へ質の高い接客を提供または、心地よい距離を図ることに繋げていく。

 ホテルエントランスの例は猫目が以前、旅館にて実際におこなった行為です。猫目の場合はお客様のひとりごと「雨ふりそう」を聞き取り、フロントのPCにて天気予報を調べ、傘をもって声をかけました。これにお客様は何度も「ええ~。いいの~。ありがと~」を繰り返してくれました。お客様からの「ありがとう」ほど接客において嬉しいものはありません。

 おっと。自分のことばかり話してしまいました。あなたの思う接客とはどのような接客でしょうか? 最適な距離感とはどのくらいのものでしょう? 

 あなたがお客さんとして「感動」したことは何でしょうか? 猫目はそういうことにとても興味があります。とくに感動の体験を聞くのは貴重なことですよね。自分が受けて嬉しかったサービズや、感動したシーンを、次はあなたがお客様へ。そういう循環が接客の質をおおきく高めていきます。

 本日もお付き合いいただき、ありがとうございました。


松下幸之助(実業家・発明家・Panasonic創業者)

『一方はこれで十分と考えるが、もう一方はまだ足りないかもしれないと考える。そうしたいわば紙一枚の差が、大きな成果の違いを生む。』

2022年06月18日

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