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夜の01:08、魔法のライブ

春の風がそよそよと吹く夜、窓辺に佇む彼女はスマートフォンを手に01:08を待つ。今宵も、彼女の日課が始まる。その世界には顔も知らない、どこかの誰かの何気ない日常が小さな花を咲かす。

毎晩01:08から始まるライブ。たった一人か二人のファンのため、彼は歌い、語りかける。彼の優しい声が、寂しい夜を包み込む。彼女は居場所を求め、その時間に思いを浸す。

今日もやってくるいつもの時間。ささいな日常の話しから始まり、心の奥底に触れる言葉を綴る。時間はゆっくりと流れ、彼女はその音色に耳を傾ける。

01:08の意味を彼が語る。
「この時間は僕が生まれた時間です。この時間にライブを始めるのは、毎日新しい自分に会うためなんです」と。この時間にこだわる彼にまた一つ心を動かされる自分がいた。
「いやなことがあれば脱ぎ捨てて、いいことがあればよりよい自分に脱皮するように。あなたには新しい自分に変われるタイミングありますか?もしなければ、僕が生まれたこの時間に毎日一緒に、新しい自分への魔法をかけましょう」

彼女の心は彼の声に包まれ、安らぎに満たされるこの瞬間をまた明日の為に。顔も知らない、どこかの誰かが、01:08に彼女の心に織りなす夜の魔法を紡ぎだす。
あなたは私を知らなくていい。私が知りたいだけだから。


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