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逃げる影

同じ夢を見る
その夢を一度見ると
毎日その夢を見るようになる

「逃げないと」
何かの使命感のような
ものに囚われてしまって

でもそこは
田んぼしかなくて
稲刈りをしたあとの
切り取られた株だけが
規則正しく並んでいる

後ろを振り返ると
もう手の届くそこにいるんだ
僕は君を知っている

今日も昨日も一緒だった
「なんで君が」と言いたいけど
声は出ない
焦る鼓動だけが
重低音のように響く

逃げも隠れもできなくて
君が僕を掴もうとするのを
必死にもがくしかできなくて
僕は空を泳ぐ
空を切り裂き開いていくような平泳ぎ

水よりも重い空気が肺に入って
僕を苦しめる
息が出来なくて
でも逃げなくちゃいけなくて
僕の両手は
重たい空気をかき分ける

後ろを振り返れば
君は泳げずに
その場で手を仰ぐ
地面からジャンプして
僕の足を掴もうとする

なぜ僕を捕まえようとするんだ
さっきまで一緒にいたじゃないか
何度か足に手が触れるが掴めない
重い空気、手も肺も限界

そこでいつも夢から覚める
涙目の僕の横で
君はすやすやと寝ていた

あとがき
私の体験談をもとにした詩です。
最後ホラーチックになったw
もう夏だからね😏


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