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原典を読みながら環境・農業問題について考えてみる

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聖書や日本書紀、平家物語などを読みながら、「日本」について外国人に説明するにはどうしたらいいかとか、農村部の論理と都会人の論理がどう違うかと言ったことについてのヒントを考えていま…
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2023年1月の記事一覧

大根はなぜ商品になるか?

大根はなぜ商品になるか?

アダム・スミスの国富論は、「労働はすべての商品の交換価値の真の尺度である」と述べています。

すなわち、

ひらたく言うと、「商品を作るのに、これだけ手間がかかっている、だから、この値段になる」と言う話なわけです。

ところで、ソビエト社会主義共和国連邦=略称・ソ連は、1991年に崩壊しました。
ソ連崩壊について、マルクスの「労働価値説」の間違いだったと言う人がいるようです。

自分は8時間働いた

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「交換」は「自愛心の刺激」から起きるのか、それとも「返礼の義務」から起きるのか

「交換」は「自愛心の刺激」から起きるのか、それとも「返礼の義務」から起きるのか

アダム・スミスは「交換」を引き起こす原理を「自愛心の刺激」に求めています。

つまり、わかりやすく言えば、「肉、酒、パンをくれたらお金をあげますよ。そうすれば、あなたはそのお金で好きなものを買えますよ」と言うことによって、私たちは「肉、酒、パン」を手に入れている。
それぞれが自分の利益を追求する結果、「交換」が生じていると言うのです。

ところがマルセル・モースの「贈与論」には、「交換」が起きる理

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「一人前の分前」があるから「取引、交易、交換」が成り立つ

「一人前の分前」があるから「取引、交易、交換」が成り立つ

「国富論」の中でアダム・スミスは

「分業と言うものは、・・・(中略)・・・人間の本性上のある性向、すなわち、ある物を他の物と取引し、交易し、交換しようとする性向」と述べています。

そして、
「この性向はすべての人間に共通なもので、他のどんな動物にも見出されないものである」

と言っています。

例えば、
「同じ兎を追う二匹のグレイハウンド犬は一種の協同作業をしているようなかたちを取ることがある

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雑草やハーブによる猛寒波対策の可能性

雑草やハーブによる猛寒波対策の可能性

10年に一度の猛寒波。
結局、最低気温は-7.1℃にまで低下したようです。

アメダスのグラフは、午前6:10、6:20ともに-6.5℃になっているとしています。この間に-7.1℃になったようです。

畑の野菜たちはけっこう元気でした。
ニンジンは動画のように葉が一部霜枯れしたものの、けっこう青々していました。
やはり、草が地面に生えていることが放射冷却現象を防ぎ、保温効果を発揮しているようです。

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日本の環境再生型農業政策はけっこう進んでいるかもしれない~課題はあるけど・・・

日本の環境再生型農業政策はけっこう進んでいるかもしれない~課題はあるけど・・・

アメリカで環境再生型農業に5千億ドル(=1ドル130円換算で65兆円)規模の予算案が構想されているとの報を読みました。

思ったのはクリントン政権時代の「情報ハイウェイ」構想です。アメリカ全土に光ファイバーを張り巡らすと打ち上げられた構想です。

日本の場合、そう言う派手な打ち出しはなかったのですが、結局、日本中どこでも動画が見れるぐらいの状態にはなっています。

温暖化対策の件もそうで、日本は1

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萬葉集冒頭歌、「掘り具」の意味はこれだったのか?

萬葉集冒頭歌、「掘り具」の意味はこれだったのか?

見沼菜園クラブ・たんぽぽ農園近くの土手で自生しているカラシ菜を採っている人に会いました。

漬物にするのだそうです。

株ごと抜いて、カッターで根を切り、葉の部分だけにしています。

萬葉集冒頭歌「御籠よ、御籠もちよ、御串よ、御串もちよ、この岡に菜摘ます子(籠と掘り具をもって、この岡に菜を摘みに来た娘)」

になぜ御串(掘り具)が出てくるのか、謎でした。

今回、土手でのカラシ菜収穫をみて、その疑

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御成敗式目にみる百姓の権利

御成敗式目にみる百姓の権利

「日本中世の歴史1・中世社会の成り立ち(木村茂光)」によると御成敗式目第42条に「百姓逃散の時、逃毀と称して損亡せしむること」と言う禁止規定があるとの事。
「逃毀」と言うのは、百姓の妻子の抑留や資財を奪い取ることを言うそうです。
つまり、農民が「逃散(=どこかへいなくなる)」した場合、その家族を拘留したり、財産を没収したりすることは鎌倉幕府の法律上、禁止だったと言う事です。
そして、「もし召し決っ

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民衆が自ら「百姓」と名乗りだした時代

民衆が自ら「百姓」と名乗りだした時代

「日本中世の歴史1・中世社会の成り立ち(木村茂光)」に12世紀頃から荘園の住人と言う呼称に代わり「百姓」と言う呼称が多くなってくることが述べられています。

民衆が要求をする際、「住民等解」、「百姓等解」、「百姓等申状」等の文書を出したようです。
その文書の表題が時代によって変化するとのこと。
同書は、「平安時代後期が『住民等解』の時代であることに対比して言うならば、鎌倉時代・南北朝時代は『百姓等

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バイオマス資源の状況と肥料・堆肥としての利用可能性

バイオマス資源の状況と肥料・堆肥としての利用可能性

畜産廃棄物や食品工業の廃棄物など、肥料・堆肥・エネルギーなどに利用可能なものを「バイオマス資源」と言うようです。
少し古い資料ですが、2005年頃とみられる農水省の家畜排せつ物の発生と管理の状況によると、

日本のバイオマス資源の発生量は年3億4千万トンとのこと。

バイオマスをめぐる現状と課題は、内訳を
家畜排せつ物 (約8,800万トン)
 再利用 約90% → 約90%
 ・堆肥利用に加え

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「冥土の飛脚」の「菜」はどんなものだったのか

「冥土の飛脚」の「菜」はどんなものだったのか

近松門左衛門の「冥土の飛脚」(1711年上演)に「背戸に菜を摘む一七、八が」と言う文言が出てきます。

この「菜」はどんなものだったのでしょうか。

季節は「空に霙の一曇、霰、交じりに吹く木の葉ひらり」とあり、枯れ葉が舞う晩秋の時季だと思われます。

場所は「畦道をすぢりもぢりて藤井寺」とあり、現在の大阪府藤井寺市近辺と思われます。

「菜を摘む」と言うと百人一首にもある「君がため春の野に出でて若

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農業は工業ほど分業できない

農業は工業ほど分業できない

アダム・スミスの「国富論」は、分業が生産性を向上させるとしています。

スミスは、ピンづくりについて「この仕事のための教育を受けておらず、そこで使用される機械類の使用法に通じていない職人は精一杯働いても1日に一本のピンを作ることもできなかろうし、20本を作ることなど、まずありえないであろう」

と書いています。

ところが、十人が分業して働いている工場では1日に48000本以上のピン、一人当たり4

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近松作品に登場する脇差しと刀狩りの実態

近松作品に登場する脇差しと刀狩りの実態

近松門左衛門の「淀鯉出世滝徳(1704上演)」には、廓の遊女「吾妻」が、客の「竜田の藤」を脇差しで刺し殺す場面が出てきます。

この脇差しは、「竜田の藤」の持ち物で「竜田の藤」は身分としては「武士」でなく「町人」です。

この描写は、「刀狩り」の実態を考える上で興味深いものがあります。

豊臣秀吉の「刀狩り」の結果、武士以外の農民や町人は全く武器を持てなくなったと言うことはないらしいです。

例え

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商品作物としての「米」の登場

商品作物としての「米」の登場

井原西鶴の好色一代男巻一に香煎、置き綿が登場してきます。
香煎は米を焦がし、陳皮、ウイキョウ、山椒などの香料を混ぜたもの、置き綿は真綿で作った飾り帽子のことなのだそうです。

京都の銘酒:舞鶴・花橘も登場しています。香煎・清酒は「米」を原料としていて、米の商品作物化を伺わせます。
もちろん、農民は年貢を取られていたので、商品作物としては作っていなかったとは思いますが・・・

また、置き綿については

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好色一代男にみる江戸時代の清酒の発展

好色一代男にみる江戸時代の清酒の発展

井原西鶴の好色一代男に、舞鶴・花橘と言う京都の銘酒が出てきます。

戦国時代の吉利支丹宣教師フロイスは、日本人がバテレンがワインを飲むのを見て、あんな冷たいお酒を飲んだらお腹をこわすと心配して日本酒を差し入れてくれたと言う話を書いています。

木の桶に白く濁った生温かい液体が入っていてと言う描写に、「有難迷惑」と言う気持ちが入っているように思います。

「文化の違い」を感じさせます。

ところで「

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