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詩 『「おかえり」~君を迎える言葉』

作:悠冴紀

「おかえり」

その響きに対する憧れはなかった
今も変わらず 昔から

長い間 ずっと
帰りたい家がなかったためか

それを寂しいと 感じたためしもない

「おかえり」

その一言を聞いて抱くのは
違和感のみだった

自覚はある
醒めた人間だ


無い物ねだりの甘い期待に縋るほど
ロマンチストになどなれなかった

いかにも自分らしいと
つくづく思う

誰も帰りを待たない自由を愛し
清々しい充実感を抱いていた

与えられないものは自分で創り
創る過程が日常を豊かに満たし
必要に応じて施した自己暗示の鎧は
適切な時期に自己治療した

平穏とは程遠く 消耗の多い獣道
おかげですっかり尽き果ててしまったが

人が思うより ずっと楽しく
人が思うより ずっと幸せだった

「おかえり」

それを耳にすることへの違和感は
未だに全く消えていない

── そんな私でも
今は言いたい

「おかえり」と

何故だか無性に
言わずにいられないんだ

長い間 ずっと

自分とは何よりも縁遠く
興味の対象にもならなかったその一語

私と同じでは有り得ない君に向けて
今はとにかく 言わせてほしい

「おかえり」と

逆の立ち位置に来て
初めてしっくりときた

そうか……
私は言う側の人間だったのか

どうりで言われる側には
向かなかったわけだ

今こそ そのときだと
本能的にわかる

愛や絆とは別次元の話
とにかく 言わずにいられない

共に暮らして十五年

私とは異なる人間である君が相手だから
この機に改めて ちゃんと言おう

積み上げてきたものを確信に変え
凛と構えた家のように

「おかえり」

* * * * * * * * *

※ 2020年2月現在の作品。

 お互い改めて色々と考え直すキッカケになった入院生活から、相方がようやく帰還いたしました。唐突に訪れたまさかの危機と物理的距離が、皮肉にも何かの溝を埋めてくれたような気がしています。

 これから地道なリハビリ生活が続きますが、とりあえずは一安心。どんな状況でも甘い気休めの言葉なぞは決して投げかけることなく、いつでも度ストレートに現実と向き合わせようとする鬼キャラの私ですが、その鬼の底力でガッチリと支え、守っていきます💨(笑)

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注)シェア・拡散は歓迎します。ただし、この作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず「詩『「おかえり」~君を迎える言葉』(悠冴紀作)より」といった具合に明記するか、リンクを貼るなどして、作者が私であることがわかるようにしてください。自分の作品であるかのように配信・公開するのは、著作権の侵害に当たります!

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