詩 『風の泉』
作:悠冴紀
ライン川のほとりで
人知れず傷付いた足を癒すライオンを見た
ナイル川のほとりで
人知れず涙を拭う隼を見た
ボルガ川のほとりで
人知れず疲れた翼を休める鷲を見た
望んだ勝利を得た果てに
「独り」という代償の重みを知り
目指した理想の向こう側に
壊れた文明の廃墟を見る
枠組みの中の王者たち
かつてすべてであった王冠を背に
風の泉に帰り着く
雲分ける風に吹かれるとき
あるがままの現在を知る
泉の水面に触れるとき
優も劣もない未来を知る
かつて不落と思われた
巨大な要塞の跡地から
幼い草木が芽吹きだす
堅い守りの城壁の
崩れた瓦礫の下から
白い大地が鼓動を始める
闇にあらず 光にあらず
そこは冷厳なる風の泉
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※ 2002年(25歳当時)の作品。
以前、この詩を読んだ人物の一人から、旅の話題を期待して「この詩の中のライン川やボルガ川やナイル川っていうのは、実際に行ったことのあるところ?」 と、真顔で尋ねられたことがあるのですが、この作品は、そういう旅行記や見聞録の類いではありません (^ ^;)
どこの川で何を見た~、というのはあくまで暗喩。世界の様々な地で猛威をふるった権力者たちの果てと、彼らの踏み荒らしていった後の世界に思いを馳せて描写した象徴文学系の一作です。
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