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マレフィセントの涙

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2023年10月の記事一覧

13滴目

13滴目

水溶液

溶けているのが
お砂糖なのか
塩なのかが
わかりません

だから
味を尋ねられたのが
たまらなく
うれしかった

味わってもいいのだと
甘くってもいいのだと

甘いのか辛いのか
解らない 
私の舌は
麻痺してばかになっているけれど
ゆるしてね

あなたは私に
溶けている

===

written by 古瀬詩織

12滴目

12滴目

結婚記念日

あなたと結婚して、よかった
13年目の正直

幸せ?

と聞かれたら
涙がこみあげてきて、
こたえられなかった

浄化されるのは
いつなのだろう

どれだけ待てば
どれだけ発酵させたら
蒸留されるんだろう
濾過されるんだろう

まだまだ樽に浸かっていなきゃ
いけないみたい

11滴目 あえて

11滴目 あえて

書籍

ことばはみんなのもの
所有され得ない
Twitterのように混ざり合うもの
会話のように混ざり合うもの

がしかし本は
一個となり
なぜか所有される
混ざり合わない個体

持って帰れないのが悔しい、
また会いたいのに。

家に置いておきたい、
いつでも会えるように。

私の「もの」にする言葉は
私の傍に居てほしいことば

手を伸ばせばすぐに届く
私の目に常に触れ
撫でることができる

敢え

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10滴目 ガラスを割る

10滴目 ガラスを割る

告発

 加害者になりたくないなんて綺麗事だった
  この告白は加害

  加害者になりたくないなんて
   甘ったれたことを考えていた
    それは道義的には許されない
    誰しもがそう思う
     そうして誰しもが蓋をする
そうして綿々と繰り返されてきた文化

まことしやかに囁かれ続けている噂は大抵
悲しいかな、皆が見たくない現実
日本人女性の2.5人に1人が性被害者
日本人女性の4人

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9滴目 月夜

9滴目 月夜

輝夜

いつか君を
この手に
其の美しい命を
此の穢れた手に

あなたの寂しさを
一身に受け止め続けた
穢れ担当のこの私が
この  手に

あなたには
その美しい命を
養うという輝く責任があり

私には
あなたの汚れを
担うという昏い役割がある

私は鬱に沈み
あなたは労働に明け暮れ

貴方も労働に明け暮れ
私は放蕩を尽くす

そう私は影であり光
穢れであり美

くるりくるりと
陰ったり光ったり

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8滴目 愛憎

8滴目 愛憎

あなたはしんだ

あなたはしんだことにしよう

さびしい人
最初から最後まで

なぜそんなことになったのか

最後は私が背を押した

あなたの傷は
私の傷

私の傷は
あなたの傷口

私のとどめが
とめどなく

ただわたしの
罪だけが
今後はながれていくだけでしょう

あなたの寂しさは
わたしの寂しさ

少年のあなたを
やっと抱きしめられる

どうしてそう
してあげられなかったのだろう

あなたが

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