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8滴目 愛憎
あなたはしんだ
あなたはしんだことにしよう
さびしい人
最初から最後まで
なぜそんなことになったのか
最後は私が背を押した
あなたの傷は
私の傷
私の傷は
あなたの傷口
私のとどめが
とめどなく
ただわたしの
罪だけが
今後はながれていくだけでしょう
あなたの寂しさは
わたしの寂しさ
少年のあなたを
やっと抱きしめられる
どうしてそう
してあげられなかったのだろう
あなたが抜け殻に
なる前に
抜け殻
亡き骸は 抜け殻
とうとう成虫になって
飛び立って行ったあなた
幼虫だったあなたの罪を咎めた
蛹の私
これからは
成虫のあなたに
私は
罰されるのか
無邪気な幼虫の罪を
蛹になった私が
罰するべきでは
なかったのではないか
幼虫だった私達
あの頃は意識などなく
ただ世界があった
あの頃に罪など在っただろうか
蛹は罪だらけだけど
文学が私を生かし
文学があなたを殺した
私は小汚い
どこまでも
小汚さをただただ浴びながら
一列になって
成虫になるために
一列に整列をして
文学の完成
文学の完成のために人が死ぬなど
あってはならない
あってはならない
たとえあなたが死んでも
文学は完成しません
物事には順番があるのです
ししゅう
私が死んだらきっと 開いてもらえるのでしょう
本とはそういうものなのです
体とはそういうものなのです
そこをぐっと我慢して
正気を保たねばならないのです、きっと。
あなたは生きていた
私の知らないところで
あなたは生きていた
そう思いたかった
私の知らないところで
あなたは死んでいた
そう思いたかった
私の知らないところで
あなたは笑っていた
そう思いたかった
私の知らないところで
あなたは泣いていた
そう思いたくなかった
そう思っていたのに
解っていたのに
私があなたの涙をぬぐってあげることはできなかったから
誰かがあなたの涙をぬぐってくれることだけを期待して、
でも
私は夢見過ぎていたのでしょうね
誰かがあなたの隣にいてくれますように
それだけは確実に祈っていました
あなたが死ぬか私が殺されるかだ
できれば私を殺してほしかった
自分を殺すのではなく
そのぐらいのつもりで
私に向かってきてほしかった
ダイイングメッセージ
きっとあなたは残す
遺書の中に
それとわからぬように
わかるように
1番の理解者であった私が
どうして
2番の理解者になったはずの私が
はずみで
1番の理解者にバトンを渡したつもりが
渡し損ねた
私のミスを糾弾するでしょう
男とはそういういきものだと
知っていた私の過失を
私を罵倒しながらも
私を守ろうとした
あなたの最後の優しさをふいに
冷たく
愚かに
結局女に責任があるのかもしれない
生命への責任は
女に
あなたが死の淵から
私のように
図太くしぶとく
生き返ってくれたらと祈るけど
きっとあなたは
私ほど図太くしたたかでないでしょう
最後の最後で男はやさしいのです
女のために死ねる
男はそういう優しい生き物です
女はそれをわかっていないといけません
男がそういう
かわいい存在であることを
許す許さないと
揺れ続けた私が
結局どちらにもとどまれないことが
正解であったと。
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written by 古瀬詩織
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