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蔵語り~紡ぐ~IN田村合名会社

田村合名会社さんは、全国でも珍しい漁港の近くにある蔵元さんです。
その山川港は砂嘴によって外海と区切られているため波が入りにくく、荒天時にも穏やかで、台風接近時などは避難港としても利用されているそうです。
蔵から海岸までの距離は数百メートル。
海がこんなに近い蔵元さんもなかなかないと思います。

白い建物が山川駅です

案内人は桑鶴 良さん

今回案内してくださったのは、田村合名会社の桑鶴 良さん。
社長であるお父様はこの日、会議があるとの事で息子さんの良さんに蔵を案内して頂きました。

一次仕込みの説明を丁寧にしてくださる良さん

2024の新焼酎の仕込み真っ只中!

職人さん達が集中して芋切りをされていました。
良さんが仰るには「芋は新鮮なものだけを使用します、必要以上には削りません、なぜなら芋の旨味と栄養は、へたや皮の部分に豊富に含まれているからです」との事。
そして、収穫されたばかりのさつまいもは、遅くとも3日以内には仕込むそうです。
新鮮なさつまいもを綺麗に洗い、必要以上には旨味を削がない。
昔からの田村合名会社さんの芋焼酎造りの基本だそうです。

ベテランの職人さんによる芋切風景

希少になってきた黄金千貫を使用

田村合名会社さんが使用するさつまいもは、山川の「徳光(とっこう)」という地域で収穫された黄金千貫です。
芋焼酎が好きな方はご存じかもしれませんが、2018年頃から全国的にさつまいもの「基腐病」が流行り、黄金千貫の収穫量が激減してしまいました。
今や黄金千貫ではなく、基腐病に強い【 みちしずく 】という新しい品種にシフトしている蔵が多くなっております。
ですが、山川の徳光地域で収穫されるさつまいもは、でんぷん質も多く、甘みが強いのが特徴で、さらに徳光はシラス台地で水はけのよさから、土壌に病気が蔓延せず今でも引き続き【 黄金千貫 】を仕込みに使用できてるそうです。
多くの蔵元さんでさつまいもの確保が大変な中、田村合名会社さんは「芋は、有難いことに豊作だったので、選りすぐりの芋を使って仕込んでいます」との事。
そして、桑鶴社長自ら契約している農家さんの畑を周り、芋の出来を見ながら仕込みをされているそうです。
田村合名会社さんの強みは、この地元産の豊富な黄金千貫に一理あるのかもしれませんね。

吊り上げられた収穫仕立てのさつまいも
豊富に湧き出る天然水

蛇口から冷たい天然水

田村合名会社さんの仕込み水は天然水。
蛇口を回せばふんだんに冷たい天然水がジャバジャバと出てきます。
しかも!真夏でも17度程度の水温しかないので、「暑いなと思ったら、この水を飲んだり体温を冷やしたりと作業以外の熱中症対策などにも助かります」との事。
常に天然水が蛇口から出てくるこの環境、うらやましい限りです。

冷却棒で熱を持った麹を冷まします

とても希少な和甕による甕壷仕込み

行儀よく並ぶ創業以来から使用されている田村合名会社さんの和甕たち。
もう、この和甕は日本では製造されておらず、大事に修繕を重ねながら仕込みに使用されてるそうです。
甕壷仕込み純黒と鷲尾は、一次、二次とすべて甕壷仕込みとなります。

一次仕込みの和甕
生き生きと焼酎造りについてお話してくれる良さん

ボランティア精神いっぱいの良さん

実は私、山登りが趣味なのですが、鹿児島では薩摩富士と言われている「開聞岳」で登山する際、登山グループの友達が連れてきたのが良さんでした。
若さもあって誰もその健脚に敵わず、私は遅れに遅れ、足手まといでした。
その節はありがとうございました(笑)

初対面の人たちにも常に気配りと、挨拶を忘れない、体育会系の見本のような良さんですが、実はボランティア精神の塊!
地元のサッカーチームの監督を引き受け、週に3日は子供たちにサッカーを教えています。
そんな子供たちが大好きで優しく、ボランティア精神もいっぱいの良さんですが、焼酎の仕込みに関しては、一切の妥協はせずに、疲れ果てて帰っても、夜中に麹の温度を測り、蔵に泊まり込むこともあるそうです。

明治時代から伝わる和甕

不安にはなる、けれど「変えない」

お酒の若者離れや、焼酎を飲んでくださる世代の高齢化など、焼酎業界は大変厳しい時代に突入しています。
良さんは、そんな時代を見据えて高価なお酒ではなく、品質は良いけど日常的に飲んでもらえる価格体の酒造りを心掛けているそうです。
ジンやウィスキー、香り系焼酎など、新しい取り組みをされている蔵元さんが増えているのを肌で感じ、焦りも感じたりもするそうですが、「僕は変えません」と語ってくださいました。
自分たちが造る芋焼酎こそ、長く愛されていく味と信じ、100年以上の長きに伝わる伝統をそのまま継承していく姿勢をこれからもずっと変えないでいきたいと仰っていました。

焼酎造りはもちろん配達までこなします

黒麹の先駆けとなった田村合名会社さん

皆さんは焼酎ブームを覚えていますか?
平成12年頃から火が付いた芋焼酎ブーム。
取り扱いが難しかった黒麴、ブームの前は白麴が主流でしたが、改良を重ねた「河内菌黒麴」を大口酒造さんと田村合名会社さんの2社で試験的に取り扱いを始めたそうです。
そこから、「黒麹は飲みやすい!」「さっぱりしているけどコクがある」など、評判がよくそのまま焼酎ブームへと突入していきました。
一歩間違えれば、品質そのものを変えてしまうリスクを負いながら、当時の女性杜氏の「桑鶴ミヨ子さん」の先見の明には感服致します。

麹の力で発酵
熱を持つ麹を冷却する
20年を超えるベテラン集団
新焼酎の仕込み中
レギュラー銘柄を仕込むステンレスタンク

焼酎愛と家族愛

田村合名会社さんの代表銘柄の「純黒」は、社長がイラストを描き、叔母である妹さんが習字で文字をデザインしたそうです。

家族の仲もよい良さん、祖母であり女性杜氏としてその名を世に知らしめた桑鶴ミヨ子さんの事も時折、面白おかしくお話してくださいました。
私も当時のミヨ子さんの伝説のような女傑ぶりを聞き、憧れをいだきました。いつかお会いできる日がきたらと思います。
サッカーのコーチをしていたり、精力的に様々なイベントに出店や参加をされる良さんは休日もあわただしく、たまに一日ゆっくりできるお休みの日もミヨ子さんがどこか遊びに行きたいと言えば、運転して一緒にでかけたりと、良さんが大事に育てられたからこそ、その恩を忘れることなく、優しく親切にできるのかなと勝手に思ってしまいました。

ここ(山川)はとても良いところです」と語る良さんの横顔には、並々ならぬ焼酎愛と家族愛を感じることが出来ました^^
ありがとうございました。

桑鶴 良さん・焼酎家はしぐち

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