待てされた犬の気持ち

話を遮られたくないのと同じベクトルで
他人の話を遮りたくもない。

だからか、だからじゃないかわからないけれど、
「伝えたい」「伝わってほしい」が前に出て
いつも以上に表情が豊かになる。

私はそこからコミュニケーションをした実感を得る。

ああ、今日はコミュニケーションをしたな。
単純にことが進めば、探し物をしている人に声をかけられ、
ここにあるよと教えるだけだったのに。

探し物をする人は、とても流暢なわかりやすい説明で
探し物の存在を開示した。
私の答えは「私は知らない、あの人なら知ってそう」
と、既に出ていた。
もう本当に次の相槌のタイミングで言い出しそうになったけれど、
魔法にかかったように言い出すことができず。

流暢な説明はその後も途切れることもなく、
ただただ私がモコモコする。
なんなら言葉の勢いに負けそうになり、思わず前のめりにさせられる。

もう、この勢いを止めるには、目や眉毛を使って
もどかしいんだよという顔をするしかなかった。

心なしか
探し物の人に微笑まれた気がする。