Takayuki Ogata

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Takayuki Ogata

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地球科学者からみた首里城火災

琉球大学総合環境学副専攻の巡検で、首里城の建造物が焼け落ちてから初めて現場を訪れた。火災の跡は生々しく、痛々しいものであったが、観光地としての首里城公園を考えても、残念さを拭えなかった。 首里城跡はユネスコ世界文化遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」のひとつにも指定されているように、琉球王国の歴史・文化を考える大変貴重なサイトだ。しかし、ここ数年にわたって日頃から感じ続けてきたことではあるが、ビジターに提供する情報が、ほぼ歴史・文化的な内容だけという課題がある。 修学旅

    • 月刊「地理」新連載(2021年4月号掲載のインタビュー記事)

      2021年4月号からリニューアルされた月刊地理で、新連載がスタートしました。 Q1 どんな番組でしたか? NHKブラタモリに案内人として3回出演しました。第32回沖縄・首里(2016年2月27日放送)第67回奄美の森(2017年3月25日放送)、新春・沖縄スペシャル(2020年1月1日放送)です。 Q2 どんな場面で登場されたのですか? 地球科学の専門家として案内することが私のミッションだったので、歴史や生物のストーリーに地理学や地質学の話題が関係してくる場面が出番で

      • JTA機内誌特集「『ジオ琉球』の旅」

        2021年3月24日の学長記者懇談会で配布する資料の記述(本文のみ)を貼りつけます。PDF版はこちらからダウンロード可能。 https://www.u-ryukyu.ac.jp/news/21518/ 研究・教育・社会貢献のリンク 国立大学に勤める研究者教員にとって,研究・教育・社会貢献の業務は不可分のものである。筆者は,教育学部,理工学研究科,島嶼防災研究センター,さらに総合環境学副専攻のさまざまな業務にあたっており,アジア・オセアニアなどで地形学の研究を進める一方で

        • 書評『最新科学が映し出す火山』

          萬年一剛(2020)『最新科学が映し出す火山―その成り立ちから火山災害の防災,富士山大噴火』.KKベストブック. 書評の初出:日本地理学会発行「地理学評論」vol. 94, no.2, pp.101-102. 火山地質を専門とする第一線研究者によって執筆された本書は,一般向きでありながら,地理学研究者や地理教育関係者にも大いに役立つ内容に仕上がっている.本書から学べるポイントとして,評者なりに,①火山を理解する基礎である岩石学的知識をおさらいできること,②火山に関する最新

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        地球科学者からみた首里城火災

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その7:斎場御嶽)

          世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する斎場御嶽。コロナ禍で閉鎖が続き、6月27日に再び公開されましたが、三庫理入口からは閉鎖のままでした。最高位の拝所のみは、これを機に一般公開をやめても良いような気がしないでもありません。 世界遺産「斎場御嶽」 今年の元日に放送された「ブラタモリ×鶴瓶の家族に乾杯 新春沖縄スペシャル」でも訪問した斎場御嶽。私は地球科学担当として地形学的なプロセスに絞って解説しましたが、そこでのキーワードはマスムーブメント、すなわち「崩れる・

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その7:斎場御嶽)

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その6:今帰仁城跡)

          世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する今帰仁城跡。 今帰仁城跡は、石灰岩の上に、石灰岩によって築城されたグスクです。しかし、琉球石灰岩とは無縁の、沖縄には珍しいグスクです。少なくともこれまでに連載してきた世界遺産に指定されたグスクに、琉球石灰岩と無縁なものはありません。沖縄のグスク全体を見渡す知識は私にはなく、憶測でしかないのですが、おそらく多くのグスク、もしかしたらほとんどのグスクが琉球石灰岩の上(主に段丘の縁)にあり、石垣にも琉球石灰岩が使われているのでは

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その6:今帰仁城跡)

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その5:中城城跡)

          世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する中城城跡。 世界遺産「中城城跡」 琉球石灰岩の縁にあることが多い琉球王国のグスクたち。座喜味城跡(その3参照)、勝連城跡(その4参照)に続き、中城城跡も例に漏れずでした。 露出する琉球石灰岩 中城城跡の敷地に露出する琉球石灰岩。一部は人工的な石垣に埋められて(?)います。 グスクの土台になる琉球石灰岩 琉球石灰岩が厚さ5mほど露出しています。露頭の上に城壁が載っているのも見えます。この露頭のすぐ下に島尻層群との不

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その5:中城城跡)

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その4:勝連城跡)

          世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する勝連城跡。 世界遺産「勝連城跡」 琉球王国のグスクは琉球石灰岩の上につくられていると思われがちですが、丁寧にみていくとそうでもありません。確かに石垣は、今帰仁城跡を除けばほとんど全てが琉球石灰岩で組まれています。しかし、だからといって、その立地も琉球石灰岩とは限りません。むしろ、琉球石灰岩の段丘は平坦なので、段丘面そのものは戦略上の理由でグスクには向いていないのです。 勝連城跡からみた中城湾港 掘削船「ちきゅう」も立

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その4:勝連城跡)

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その3:座喜味城跡)

          世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する座喜味城跡。 世界遺産「座喜味城跡」 沖縄島は「山がちな島」と「平らな島」がドッキングした地形です(ブラタモリ奄美参照)。座喜味城跡はその境界付近にあります。詳しくみると、沖縄島の北部から延びる付加体の地層(名護層)が土台になっていて、そのまわりを琉球石灰岩が取り巻いていることがわかります。 名護層の丘陵を削って築城された城跡 座喜味城跡の周辺には琉球石灰岩からなる段丘が広がりますが、城跡そのものは琉球石灰岩の段丘に

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その3:座喜味城跡)

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その2:玉陵・識名園)

          世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する玉陵と識名園。コロナ禍により完全な貸切状態でのウォーキングになりました。 首里城跡の隣にある玉陵は、安謝川と安里川の谷に挟まれた高台で、その南に位置する識名園は、安里川と国場川の谷に挟まれた高台です。いずれも新第三系島尻層群の泥岩を第四系琉球層群の石灰岩が覆っています。このパターンを知っておくと、沖縄島中南部の地質はどこでも理解できます。 玉陵:玉陵は、琉球石灰岩で建築された、王家・王族の墓。 世界遺産「玉陵」 琉球

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その2:玉陵・識名園)

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その1:首里城跡)

          世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する首里城跡。ブラタモリ(沖縄・首里)でも案内した私のフィールドのひとつです。 首里城跡は、新第三系島尻層群の泥岩と、第四系琉球層群の不整合がつくる崖に囲まれ、その不整合からは、湧水として地下水が流出しています。また、泥岩が露出する斜面では、乾湿風化によって細片化された粘土鉱物が地すべりを発生させ、首里の高台をつくっています。これらはブラタモリでも解説したとおりですが、その概略はこちらの記事の地形断面図にまとめてあります。

          世界文化遺産の地球科学的魅力(その1:首里城跡)

          タイ・ミャンマー国境の難民問題

          タイ北部のメーホンソーンに行ってきた。北と西でミャンマーと接していて、流域としては、アンダマン海に注ぐサルウィン川水系にある。東に位置するチェンマイは、タイランド湾に至るチャオプラヤー上流域で、流域が異なる。 メーホンソーンに入るには、チェンマイから8時間くらいかけてバスで行く、同じルートをレンタカーで自走する、バンコクから長距離バスを使うなどの方法があるが、年休を使った今回は時間が限られていたので、バンコク(ドンムアン)からノックエアのプロペラ機で飛んだ。週に3便運航して

          タイ・ミャンマー国境の難民問題

          カセサート大学で農学を考える

          カセサート大学(タイの国立大学)シラチャ校に来た。この大学はもともと農業大学からスタートして、現在も農学系の世界的な名門大学と評価されている。タイ国内にいくつかのキャンパスがあり、シラチャ校はそのひとつ。 カセサート大学シラチャ校 チョンブリー県のシラチャは、国際的な貿易港のレムチャバン港を背景に、工業都市として急速に成長した。もともとは田舎の漁村だったのだろうが、いまは大量のコンテナが出入りし、その取扱量はタイでナンバーワン。日本企業の進出も盛んで、日本人街といえるよう

          カセサート大学で農学を考える

          アイランドホッパーでサンゴ礁巡検

          グアムとハワイ(ホノルル)を結ぶ、通称アイランドホッパーと呼ばれるユナイテッド航空の路線がある。ユナイテッド航空がアジア太平洋のハブにしているグアムからだと、ミクロネシア連邦のチューク、ポンペイ、コスラエ、さらにマーシャル諸島のクワジェリンとマジュロに立ち寄る、まるで各駅停車のような路線で、直行便の倍くらいの時間をかけてグアムとハワイを週に3往復している。 わたしは琉球弧の自然環境に関する基礎的な講義で、サンゴ礁を教えている。サンゴ礁を扱うからには、ダーウィンが1842年に

          アイランドホッパーでサンゴ礁巡検

          与那国島のいわゆる「海底遺跡ポイント」

          海外メディアからのインタビューがあるため、わたしの見解を整理しておく機会にします。この記事は随時加筆訂正する予定。 BBC REELにて公開されましたhttps://www.bbc.com/reel/video/p0884j4s/the-truth-behind-japan-s-mysterious-atlantis- 1.八重山層群の砂岩・泥岩 新生代新第三紀中新世(約2000万年の前後)に、ユーラシア大陸から運ばれた砂や泥が、現在の南琉球近海に厚く堆積した。この海成

          与那国島のいわゆる「海底遺跡ポイント」

          久高島でブラタモリ

          NHK「ブラタモリ×鶴瓶の家族に乾杯 新春!沖縄スペシャル」関連記事。斎場御嶽~百名ビーチはこちら 斎場御嶽でブラタモリ(その0) 斎場御嶽でブラタモリ(その1:寄満) 斎場御嶽でブラタモリ(その2:大庫理) 斎場御嶽でブラタモリ(その3:三庫理) 百名ビーチでブラタモリ 「神の島」と崇められる久高島。ブラタモリ(#67 奄美の森)で「平らな島」とカテゴライズした、サンゴ礁が隆起した平坦な島。タモリさん・鶴瓶さんが目指したゴールは、標高17.5mの、琉球石灰岩か

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