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JTA機内誌特集「『ジオ琉球』の旅」

2021年3月24日の学長記者懇談会で配布する資料の記述(本文のみ)を貼りつけます。PDF版はこちらからダウンロード可能。

https://www.u-ryukyu.ac.jp/news/21518/

研究・教育・社会貢献のリンク

国立大学に勤める研究者教員にとって,研究・教育・社会貢献の業務は不可分のものである。筆者は,教育学部,理工学研究科,島嶼防災研究センター,さらに総合環境学副専攻のさまざまな業務にあたっており,アジア・オセアニアなどで地形学の研究を進める一方で,その教育へのフィードバックを行い,地球科学(地理学および地質学)的な魅力を一般の方々に発信するアウトリーチ活動も続けてきた。アウトリーチに関する代表的な報告としては尾方(2011,2017,2019,2020)などがある。

地方国立大学に,その地方に根差した研究・教育・社会貢献が強く求められることは論を待たないが,地球科学,とくに地誌学(Regional geography)や地史学(Historical geology)のセンスで行うアウトリーチは重要である。それらの分野の専門家は,その土地を分析的に理解するスペシャリストであるとともに,その土地を総合的に理解するジェネラリストでもあり,俯瞰的なセンスに優れている。

特集「『ジオ琉球』の旅」の概要と経緯

琉球大学が包括連携協定を結んでいる日本トランスオーシャン航空の機内誌(2021年3-4月号)において,地球科学者として,特集「『ジオ琉球』の旅」(合計14ページ)の監修と執筆を行った。特集は,見開きの扉に続き,冒頭の概説「琉球の島々,その成り立ちを探る旅へ」,個別の事例として「南大東島」「与那国島」「久米島」,さらに「沖縄本島地形注目ポイント」で構成されている。

編集長によれば,もともと地球科学をテーマにした本格的な特集を企画したいという意図があり,テレビ番組の影響などで地理や地質のファンが増えている現状から,タイミング的にふさわしいと考えたとのことである。地球科学に関連する特集としては,2005年1-2月号の「島々の成り立ちを探る」があったが,新たな知見を踏まえた特集が望まれていた。2017年7-8月号の特集「幻の島へゆく」で地形学的な解説に取材協力した経緯もあり,筆者に依頼があった。

沖縄に特化した機内誌としては,いかに多角的に沖縄を扱うかが求められる。地球科学的な魅力は,その一角として価値が評価されたのであろう。

地球科学をベースにした「自然史探求の旅」

日本トランスオーシャン航空の社長は,今回の特集を「自然史探求の旅」と表現している。研究者としての筆者の意図も,まさにその通りであって,琉球弧の新たな科学的魅力を伝える機会になった。将来的には,自然史をテーマにした国立の博物館を沖縄につくるという話題もあり,沖縄の未来に新しい可能性を拓く特集になったといえよう。

引用文献

尾方隆幸 (2011): 琉球諸島のジオダイバーシティとジオツーリズム. 地学雑誌, 120 (5), 846-852.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/120/5/120_5_846/_article/-char/ja


尾方隆幸 (2017): NHK「ブラタモリ」にみる地球科学のアウトリーチ効果. 地理, 62 (6), 4-10.
http://www.kokon.co.jp/book/b288048.html


尾方隆幸 (2019): 幕張メッセでブラタモリセッション. Japan Geoscience Letters, 15 (4), 6-8.
http://www.jpgu.org/publications/jgl/


尾方隆幸 (2020): 琉球王国の聖地「斎場御嶽」―マスムーブメントがつくった世界遺産―. 地理, 65 (2), 46-49.
http://www.kokon.co.jp/book/b497986.html

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