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世界文化遺産の地球科学的魅力(その5:中城城跡)

世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する中城城跡。

世界遺産「中城城跡」

琉球石灰岩の縁にあることが多い琉球王国のグスクたち。座喜味城跡(その3参照)、勝連城跡(その4参照)に続き、中城城跡も例に漏れずでした。

露出する琉球石灰岩

中城城跡の敷地に露出する琉球石灰岩。一部は人工的な石垣に埋められて(?)います。

グスクの土台になる琉球石灰岩

琉球石灰岩が厚さ5mほど露出しています。露頭の上に城壁が載っているのも見えます。この露頭のすぐ下に島尻層群との不整合が出てくると思われます。

井戸が示す地下水面

敷地内の井戸を探せば地層の境界もみえてきます。グスクにも水は必須です。琉球石灰岩に覆われていて、崖の湧水が使えないなら、水がある位置まで掘らなければなりません。降りてみると、島尻層群と思われる地層があったようにみえました(蚊が凄まじく詳細は確認できず)。

中城城跡から知念半島方面

森林になっている斜面は、ほぼ全てが島尻層群の泥岩です。地すべりを繰り返して斜面が後退しつつあるのがわかります。この地形的特徴は、中城湾を取り囲む一帯(うるま市~沖縄市~北中城村~中城村~西原町~与那原町~南城市)に連続しています。NHK九州・沖縄で2014年のこの時期(梅雨前後)に放送された防災の番組では、この場所から地すべりを解説したのでした。

島尻層群が風化した地すべり地形

地すべりによる地形は、凹形の特徴的な断面をつくります。泥岩が乾湿風化で破砕され、粘土の多い表土に降雨がもたらされ、地下水面が上がって摩擦力が低下することによって滑った地形です。

発掘・修復現場の琉球石灰岩

城壁には琉球石灰岩が使われています。島尻層群の上位にわずかに載っていた石灰岩が切り出されたのでしょう。グスクの場所を作り出すためにも、露出する石灰岩を削って、平坦にする必要があったはずです。

グスクに必要なものはいくつかあります。ひとつは水ですが、もうひとつは崇拝所です。久高島と首里を望む方角にも琉球石灰岩が積まれています。

水を求めて

久高島を望んで

首里を望んで

調査日:2020年6月21日

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