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世界文化遺産の地球科学的魅力(その3:座喜味城跡)

世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する座喜味城跡。

世界遺産「座喜味城跡」

沖縄島は「山がちな島」と「平らな島」がドッキングした地形です(ブラタモリ奄美参照)。座喜味城跡はその境界付近にあります。詳しくみると、沖縄島の北部から延びる付加体の地層(名護層)が土台になっていて、そのまわりを琉球石灰岩が取り巻いていることがわかります。

名護層の丘陵を削って築城された城跡

座喜味城跡の周辺には琉球石灰岩からなる段丘が広がりますが、城跡そのものは琉球石灰岩の段丘にはありません。付加体の基質(泥岩・砂岩)が露出する丘陵の頂部を削って築城されています。

一の郭(右側)と二の郭(左側)

城壁には琉球石灰岩が使われています。確かに城跡を取り巻く読谷の段丘を掘れば琉球石灰岩がいくらでも出てきましす。しかし名護層の堆積岩を削ったのであれば、それをそのまま使っても良さそうなものです。使いにくい理由が何かあったのでしょうか?

国土地理院の三角点(標高129.1m)

見晴らしが良いので三角点も設置されています。しかし、遠くからわざわざ御影石を運んでくるとは・・・。御影石には風化しにくい利点があるとはいえ、周囲に設置された琉球石灰岩の方が「地理的なセンス」があるように感じてしまうのは、私だけでしょうか。

本部半島を遠望

北東側を向くと、名護層の丘陵が沖縄島北部の中軸に向けて延びているのがわかります。遠方には名護湾と、さらにその向こうに本部半島が見えるのがわかります。本部半島は沖縄島で付加体を考える最適なところです。

慶良間諸島を遠望

南西側を向くと、東シナ海に顔を出す慶良間諸島が見えます。慶良間諸島には、沖縄島北部から連続する付加体が露出しています。つまり、座喜味城跡から望む北東側の景観と南西側の景観は、地質的には繋がったものなのです。

城跡のシンボルのようなリュウキュウマツ

座喜味城跡にはリュウキュウマツがたくさん植えられています(地形の観察には邪魔ですが)。他のグスクでリュウキュウマツが植えられているのは、今帰仁城跡くらいではないでしょうか。土壌と関係があるかもしれません。

砂岩には塩類風化によるタフォニ

城壁に付加体は使われていませんが、城跡を歩いていると出くわします。砂岩は間隙率が高く、塩類風化が進みやすい特徴があって、しばしばタフォニと呼ばれる蜂の巣状の風化が認められます。

捨てられたマスク

この日は観光客もちらほら来ていましたが、駐車場のナンバープレートから察するに、まだほとんどは沖縄県民でした。しかし、こんなところにマスクを捨てていく県民がいるのは残念なことです。グスクを築いた護佐丸も悲しんでいるのではないでしょうか。

調査日:2020年6月14日

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