フォローしませんか?
シェア
石楠花 直
2024年5月20日 11:19
マネージャーを含めて八人の駅伝部、誰一人怪我をする事が許されない。そんな状況の中、彼らが選んだ戦術は、インターハイを捨て全国高等学校駅伝競走大会一本に勝負を賭けると言う事であった。秋、長野県下において無名の上田北高等学校駅伝部は快挙を成し遂げる。全国大会出場の切符を勝ち取ったのだ。しかし、ゴール直後に彼らを襲ったのは、全国大会出場も危ぶまれる大悲劇であった。こんな状況の中、次々と駅伝部に襲い掛
2024年5月26日 15:32
楠太陽(くすのきたいよう)はスタジアムまでの送迎バスの中にいた。本来サッカー部の彼は駅伝部の応援スタッフとして最終中継所まで走って来た同級生の雅人を迎え入れ、襷を引き継いだ航平のジャージや私物を集めてゴールまで運ぶのが仕事だった。雅人は、区間新記録をたたき出し、襷を繋ぎ終えた安堵感からか隣の席で静かな寝息を立てている。太陽は雅人に自分のジャージを掛けると車窓から見えるスタジアムに目をやった
2024年6月10日 11:29
翌日の告別式は駅伝部とサッカー部、同級生は公休扱いで出席が許された。昌福寺住職の読経後、鎌田先輩の若い死に対して説教が述べられた。川島は今日も立っていられなかった。 進行役の方が低くて静かな声でゆっくりと語り掛けた。「最後のお別れです。どうか故人に持って行って頂きたい物がありましたら棺にお納め下さい。特にお手持ちのない方は、お配りいたしました生花を故人にお納め下さい」航平の思い出の品が次々
2024年6月24日 14:57
七番目のランナー 太陽は、この日練習を休んだ。中三の時インフルエンザに掛かり休んで以来、久しぶりの事だった。誰もいない教室で一人、便箋に文字を綴っていた。『この度一親上の都合でサッカー部を退部いたしたくお願い申し上げます』自分に嘘を吐いて必死で綴った退部届、「良い! これで良いんだ」自分に言い聞かせて、便箋を封筒に詰め様とした時だった。「相変わらず下手くそな文字だなー」その声に
2024年6月30日 16:37
選手登録の最終日の朝、雅人は悪あがきと分かっていたが駅前に行ってみた。しかし、横川たちの姿はなかった。引田が申し訳なさそうに首を振った。雅人が諦めて学校に戻ると始業のベルが鳴っていた。達也と太陽が何かを話しながら昇降口に向かい、それを見届けた桜井が駐車場を出るところだった。雅人は午前中の授業を、上の空で受けていた。昼食も取らず部室に向かった雅人は、皆が承認してくれたら正式にキャプテンに就任しよ