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メンデルスゾーンの交響曲

突然ですがメンデルスゾーン(1809~1847)の代表作と聞いて、一番最初に思い浮かぶものはどれでしょうか?

やはり、ヴァイオリン協奏曲ホ短調でしょうか。『夏の夜の夢』から結婚行進曲を挙げる方もいるかもしれません。ピアノ経験者でしたら無言歌春の歌』も候補に挙がるでしょう。

最初に彼の代表作を挙げる時に、交響曲を挙げる方は意外と少ないのではないでしょうか。彼の遺した交響曲は弦楽のための交響曲が12作(他に交響的断章が1作あり)、フルオーケストラで書かれたものが5作残されています。そこで、ここではメンデルスゾーンの遺したフルオーケストラで書かれた5作品を簡単に紹介していこうと思います。

フェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn Bartholdy)

1 交響曲第1番 ハ短調 Op11

弦楽のための交響曲を12作と交響的断章を作曲した後の1824年に作曲された作品です。この時メンデルスゾーンわずか15歳の時の作品です。15歳でこのような作品を遺せるのは天才といってよいでしょう。2管編成で書かれており、書法は先人の作曲家たちの影響がまだ強く残っています。

  • 第1楽章 ソナタ形式(ハ短調)

  • 第2楽章 緩徐楽章 ソナタ形式(変ホ長調)

  • 第3楽章 メヌエット(ハ短調)

  • 第4楽章 ソナタ形式(ハ短調ーハ長調)

という構成をしており、古典派のような構成を持っています。第3楽章のメヌエットは通常の3/4拍子ではなく、6/4拍子で書かれておりスケルツォ的な性格も持ち合わせています。

2 交響曲第5番 ニ長調(ニ短調) Op107

続いて紹介するのが交響曲第5番です。何故いきなり第5番を紹介するのかというと、交響曲第1番の次に完成された交響曲がこの第5番なのです。メンデルスゾーンの交響曲の番号は出版順に付けられています。すなわち、この作品がメンデルスゾーンの交響曲で一番最後に出版された、ということになります。この作品と、次に紹介する交響曲第4番はメンデルスゾーンの死後に出版されました。

作曲されたのは1830年。後に1832年に改訂されています。宗教改革(Reformation)という標題が付けられています。この作品が作曲された前年にはメンデルスゾーンはバッハ(1685~1750)のマタイ受難曲の復活上演を行いバッハの再評価に貢献しました。

ルター(1483~1546)によるコラール『神はわがやぐら』、ドイツの讃美歌であるドレスデン・アーメンが引用されているのが特徴です。

  • 第1楽章 序奏付きソナタ形式(ニ長調ーニ短調)

  • 第2楽章 3部形式(変ロ長調)

  • 第3楽章 緩徐楽章(ト短調)

  • 第4楽章 ソナタ形式(ト長調ーニ長調)

の構成です。2管編成ですが、コントラファゴットが使用され、古楽器のセルパン(金管楽器)という楽器が使用されます。現在ではテューバで代用されていることが多いです。またトロンボーンが使用されているのも特徴です。メンデルスゾーンの交響曲でトロンボーンが使用されているのはこの作品と、交響曲第2番しかありません。

セルパン

先程も述べましたが、ルターのコラールやドレスデン・コラールの引用、第1楽章がアーメン終止(サブドミナント終止)で締めくくられるなど、宗教的な色合いが濃いが交響曲でもあります。舞踊楽章はここでは第2楽章になりますが、スケルツォと表記はされていませんが、内容的にはスケルツォでしょう。

3 交響曲第4番 イ長調 Op90

次に作曲されたのが交響曲第4番です。1833年に完成されました。メンデルスゾーンの交響曲では人気のある作品の一つです。メンデルスゾーンがイタリア旅行中に作曲を開始したとされ、親族にあてた手紙にもこの交響曲のことを『交響曲「イタリア」』と紹介していたことから、イタリアの愛称が付けられています。後にメンデルスゾーンはこの愛称を初演時には用いることは無くなっていました。

奇数楽章が長調で偶数楽章が短調で作られており、長調と短調の交錯が目立ちます。また第4楽章にはイタリアの舞曲であるサルタレッロが用いられており、非常に情熱的な楽章になっています。長調で始まり短調で作品を締めくくるという珍しい構成です。短調で始まり長調で締めくくる作品は数多くありますが、その逆は少ないでしょう。

  • 第1楽章 ソナタ形式(イ長調)

  • 第2楽章 緩徐楽章 ロンド形式(ニ短調)

  • 第3楽章 3部形式(イ長調)

  • 第4楽章 ロンド形式(イ短調) 

という構成です。第3楽章はメヌエットとともスケルツォとも表記されていません。間奏曲風な穏やかな楽章となっています。この交響曲でも2管編成が用いられています。第1楽章は神戸電鉄の近接メロディにも使用されています。

4 交響曲第2番 変ロ長調 Op52

4番目に作られた交響曲がこの第2番となります。1840年に完成しました。

この交響曲の特徴は何といっても合唱が用いられるというところです。2管編成のオーケストラに2人のソプラノ独唱、テノール独唱、混声合唱に加えオルガンも用いられています。歌詞は旧約聖書からとられておりメンデルスゾーンによって「讃歌 - 聖書の言葉による交響カンタータ」という題を付けており、通称『賛歌(Lobgesang)』と呼ばれています。

通常の交響曲と構成も異なっており、第1部第2部に分けられています。第1部は器楽のみによる演奏、第2部からは合唱、独唱、オルガンが参加します。演奏時間1時間越えの大作です。

ベートーヴェンの交響曲第9番が作曲された後の合唱付き交響曲としては、比較的早めに登場した作品です。この作品が作られた前年にはベルリオーズ(1803~1869)も合唱付き交響曲『ロメオとジュリエット』を作曲されています。

5 交響曲第3番 イ短調 Op56

最後に完成された交響曲がこの第3番にあたります。完成したのは1842年になりますが、作曲自体は1830年に始まっていました。スコットランドへの旅の中でこの作品のアイディアを着想していましたが、メンデルスゾーンが多忙であったこともあり、長い間放置されようやく1842年に完成したという経緯があります。このような作曲動機から『スコットランド』の愛称がついています。

作品の特徴としては第1、2、3楽章がattacaアタッカ(休みを設けず、そのまま次の楽章へ進むこと)の指示がされており、全楽章休み無しで曲が進行していく点です。しかし各楽章は明確に終止が置かれており、連続性は薄いです。

  • 第1楽章 序奏付きソナタ形式(イ短調)

  • 第2楽章 スケルツォ風 ソナタ形式(ヘ長調)

  • 第3楽章 緩徐楽章 ソナタ形式(イ長調)

  • 第4楽章 ソナタ形式に長めのコーダ(イ短調ーイ長調)

という構成です。

余談ですが指揮者クレンペラー(1885~1973)はこの第4楽章のコーダが気に入らなかったようで、このコーダをカットし、自身が作った独自のコーダで演奏しているものがあります。興味ある方は聞いてみてください。

クレンペラーによるコーダ部分は42:57~ぐらいから

6 終わりに

今回はメンデルスゾーンの交響曲を簡単に紹介しました。それぞれの作品に個性があって、なおかつ難しい構成もとっていないので比較的親しみやすい作品が多いのではないかなという印象です。メンデルスゾーンも腕のあるメロディメーカーだったので旋律も耳に残るものも多いのではないでしょうか。

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