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ペット用家電をつくる。第3話「資金集めの秘策」

ついに、小型犬・猫用自動給餌器PETLYの製造パートナーが見つかりました。

キックオフミーティングでは、担当者各自の役割明確化、調達部品のリストアップや初年度の製造計画のすり合わせなどを中心を行いました。

PETLYの発売時期は2014年7月にしようと私が決めました。7月は私の愛猫みるちゃんの誕生月だから、パパから娘へのプレゼントにしたかったというシンプルな理由です。

ハードウェア開発の中でも、小型犬・猫用自動給餌器という製品は、とにかく部品を必要とする誰もやりたがらないプロダクトです。電子基板やモーターを駆動させてフードを給餌する構造上、とてもリスクの高いビジネス。そのため、当時のペット用自動給餌器はインポート品が主流で、国内のオリジナル企画の製品は5製品にも満たないビジネス環境でした。さらに国内のペット市場は、約1.5兆円のマーケットですが、自動給餌器市場というのは、当時は5億円もなかったと記憶しています。(現在でも自動給餌器は10億円程度)大手が参入するはずもない小さな市場。しかも事業立ち上げに大きな資金も必要とするため、賢い人なら決して手を出さないでしょう。しかし、私にはPETLYが将来、精度の高い食事ログの取得や、ペットサービスのハブとなり、ペットヘルスケアの重要な鍵となる確信がありました。

描く未来に最短でたどり着くためにも、初代PETLYをなるべく既存の部品(ネジ、滑り止めのゴムなど)を使って開発コストを抑える方法を模索していましたが、それでもデザイン性を強みとするには、オリジナル部品が数十点に及ぶことが判明し、金型の製作費用や、電子基板や回路設計なども含めると総額は、数千万円必要になることを知りました。

見積書を見るたびに胃が痛くなる毎日が続きましたが、開発・発注をすすめるための着手金(総額の半金)を支払うタイミングも決まった以上、自分を信じました。なんとしてでも集めてみせると。

さて、その資金をどう集めるか。

スタートアップ、スモールビジネスの資金調達は、主にこの3つが挙げられます。

当時読んでいた参考図書もご紹介します。

・クラウドファンディング(国内ではCAMPFIREMakuakeなど)
・デット・ファイナンス(銀行融資、親や友人からの借入も含む)
・エクイティ・ファイナンス(第三者割当増資)

そこで僕が選んだ方法は、個人投資家やベンチャーキャピタル、事業会社からのエクイティ・ファイナンスの1本で推し進めるという選択でした。ただし、知り合いに投資家という存在は誰一人もいない状況なのに。

手元資金は残り約100万円、投資家の知り合いもいなかった私が何をしたか。

3Dプリンターの成形品(中身空っぽ)を敏腕フォトグラファーに撮影してもらう

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PETLYのWEBサイトを気鋭のWEBデザイン会社につくってもらう

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PETLYのコンセプト動画を映像クリエイターに撮ってもらう

私の考えた資金調達を達成するための作戦は、日本の投資家にPETLYのコンセプトを届けるため、投資家だけをターゲットにした、フェイスブック広告を出すこと。ターゲットは30代〜50代の港区や渋谷区に住む、iPhoneユーザーの男性。広告予算10万円。まさに賭けでした。(当然、問い合わせフォームに送るとか著名な投資家にFBメッセージ送ることもやりましたが、全く既読にならず。。)

発売までは、投資家に情報を届けることしか僕の頭になかったので、フェイスブック広告と同時にプレスリリースを配信しました。幸いにも、ペット業界には当時なかった簡素・簡潔なデザインが話題を呼び、ペット系メディアやビジネス系メディアなどにも取り上げて頂いたことも影響し、すぐに投資家からメッセージをいただきました。ご面談機会を頂いた後、事業計画書を使ってディスカッションを重ねた結果、着手金の資金をご出資いただけることになりました。その後、事業会社からも出資オファーをいただき、初回生産分を発注できる資金をなんとか確保することができました。

さらっと書きましたが、まぁ大変でした(笑)製造委託先への着手金の支払当日の午後に長野で製造委託先とミーティングでしたが、東京駅の三井住友銀行ATMの残高照会を何回やっても残高は悲惨な状態。。新幹線に乗り込む15分前に着金があり、すぐに振込完了して電車へ乗り込んだ頃にはもう胃が痛くて、ヘロヘロでした

営業担当からの「梁原社長、入金確認が取れました!ありがとうございます!」の一言に僕も含め、プロジェクトメンバー全員が胸をなで下ろした様子でした。私がやった資金調達の方法は決してオススメはしませんが、どんなプロジェクトを進めるときも、何を実現させたいのか可視化し、適切な人に情報を届けること。

これは、いまでもプロジェクトを進める上で大切にしている考え方です。

つづきます。



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