夏の終わりのアムステルダムで。
8月も半ば。まだまだ夏らしくあって欲しいけれど、その終わりが近づいているのを感じとれるように、だんだんと肌寒くなるオランダ。
日本のお盆がすぎた週末、アムステルダムでは年に一度、運河を会場に開催されるコンサートがある。
"Prinsengrachtconcert" ーPrinsengrachtは運河の名前で、そこで行われるクラシックのコンサートだ。
初めてオランダで夏を迎えた去年、このコンサートのことを教えてもらった。クラシック、そこまで興味ないかもなあなんて思ったのが最初の印象で、当日は相方家族の勧めでテレビ中継を一緒に観た。
そんなに乗り気ではなかった私だったが、会場の様子を見て、一気に印象が変わって、一瞬にして引きこまれた。
ステージの周りの運河は、観賞しにやってきた人々のボートで埋め尽くされ、運河の横の通りにも大衆が押し寄せている。運河沿いの家々の窓からは、住民たちが顔を出し、音楽と共に土曜の夜のひと時を過ごしている。
こんなにこのイベントはアムステルダムに住む人々に愛されているのか。
観衆と音楽が一体となって進むコンサートに、そこまで興味がなかったクラシックも、思っていた何十倍も魅力的で素晴らしい音楽に聞こえてきた。
圧巻は、最後の'Aan de Amsterdamse grachten'という曲を、会場の皆で合唱するフィナーレ。
アムステルダムの市旗、ランプ、花火を人々が掲げて、アムステルダムという街の素晴らしさを讃える歌を、人々が体を揺らしながら歌う。
テレビを通してでも伝わってくるその高揚感と、Amsterdamer(アムステルダムの民)としての誇りに、なんだか胸が熱くなって、いつかはこれを生で体感したい、と思った。
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それ以来、'Aan de Amsterdamse grachten'をよく聴くようになり、オランダ語の歌の中で唯一、最初から最後までハミングできる曲になった。
そして今年は、今日、コンサートが行われた。残念ながら会場に行くことは叶わなかったけれど、テレビの中継が始まるのを楽しみにしている私がいた。
終わらせなければならない仕事を抱えたパソコンと共にテレビの前に着席したものの、結局最後までパソコンは開くことはなかった。
ほかのものは一旦忘れて、全力で堪能したいと思える贅沢な時間。
今年も素敵な一夜だった。
"Prinsengrachtconcert" ーこれがオランダ・アムステルダムでの夏の楽しみの一つ。
来年こそはきっと会場で。
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