青水時(青時)

文筆。小説、短歌など。#鉄道短歌 当湘鉄道(架空鉄道)を創作中。 tw→@madobe…

青水時(青時)

文筆。小説、短歌など。#鉄道短歌 当湘鉄道(架空鉄道)を創作中。 tw→@madobenoumibe

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最近の記事

青藤木葉『彗星標本』感想

 私事ながら、とても大切な、大好きな歌人さんである青藤木葉さん。彼女の待望の歌集が発行されたということで(昨年十一月の文学フリマ東京が初出ということです)、まずは心から祝福申し上げます。  以下、いくつかの連作から一首か二首程度引用して感想を述べさせて頂いておりますが、完全に私個人の趣味嗜好によって選び、煩雑な感想を述べさせて頂きました。この点何卒ご海容くださりますと幸甚です。 Ⅰ ・トロイメライ 逢うために薔薇の螺旋を降りてゆく 記憶はいつから思い出になる?  時間に重量

    • 鉄道短歌を募集します【4番線】

       ご無沙汰しております。初めましての方は初めまして。  鉄道を題材にした短歌をよく詠んでいる青時(あおとき)と申します。  さて、この度はタイトルの通り皆様から鉄道を題材とした短歌を募集し、ネットプリントの形で発行致したく存じます。  本年は特に鉄道開業150周年という記念の年です。是非この機会に鉄道にまつわる短歌を詠んでみませんか? 【募集要項】 ①鉄道を題材とした未発表短歌一首or五首連作(連作は題名を記載してください) ②題詠「駅弁」(未発表、一首のみ) ※①と②

      • 鉄道短歌を募集します【3番線】

        初めましての方は初めまして。ご常連の方はお世話になっております。 普段から鉄道短歌ばかり作っているのに鉄道知識はゆるゆるの青時です。 さて、まだまだ寒い日が続きますが、暦の上では春。 鉄道短歌ネプリこと、鉄道短歌春報3に掲載する短歌を募集致します!! 鉄道にまつわる短歌でしたら何でも構いません。※未発表です また、春報と名乗っていますが、春を題材にする必要はありません。(3という数字は通番です) 日常使いの、或いは特別な日に利用する鉄道への思いを、短歌にして詠って

        • 透明な船に乗って

          ※但し書※  この小説は晴凪さん主催の妄想鉄路第2号に掲載された作品です。そちらのページからもお読み頂けます。(https://mizuhara-railway.jimdofree.com/%E5%A6%84%E6%83%B3%E9%89%84%E8%B7%AF/)  定期試験が終わった五月のとある木曜日、奈良原夕子は東鎌暗(ひがしかまくら)駅の改札口で薗景子を待っていた。午前十時に待ち合わせたが、夕子は乗り換え検索で指定された列車より一本前の列車に乗れたので、予定より少

        青藤木葉『彗星標本』感想

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        • 連作短歌供養
          2本

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          当湘鉄道設定こばなし~「透明な船に乗って」に寄せて~

           『妄想鉄路』第2号に寄稿した、「透明な船に乗って」(https://mizuhara-railway.jimdofree.com/%E5%A6%84%E6%83%B3%E9%89%84%E8%B7%AF/)に登場した架空鉄道である当湘鉄道について、現在ふんわり考えている補足設定などの若干を書きます。なお筆者は鉄道知識ががばがばなのでそのあたりはなんとなくご了承頂けますと幸甚です。 ●路線 ・当湘鉄道本線…当京(現在の東京駅)~六津浦駅(現在のだいたい六浦) ・東鎌暗線…六

          当湘鉄道設定こばなし~「透明な船に乗って」に寄せて~

          鉄道短歌を募集します【2番線】

           はじめましての方ははじめまして。素人短歌詠みの青時(あおとき、或いは青水時)と申します。普段から鉄道を題材にした短歌を鉄道短歌と称してツイッターに投稿したり同人誌に掲載したりしております。  まずは4月に発行した鉄道短歌ネットプリント、「鉄道短歌春報1」に作品をお寄せ頂いた皆様、また出力して頂いた皆様に感謝申し上げます。  お陰様で多様な鉄道短歌が一堂に会し、大変読み応えがあるネットプリントになったと思っております。  そして、この度、再び鉄道短歌を募集することとなり

          鉄道短歌を募集します【2番線】

          その灯火の色は

           全くの私事で恐縮だが、つい昨年までいい年して年齢=恋人いない歴だった私が恋なぞというものを正しく理解しているか甚だ不安ではあるが、性懲りも無く、  鉄道の話である。  今でこそ細々ながらも鉄道短歌や鉄道要素のある短編小説などに携わっている筆者であるが、幼少期から鉄道が好きだったわけではない。  では鉄道を明確に好きだと意識し始めたのはいつだったろうと記憶を遡ると、恐らく高校生の頃である。  当時、軽くもオタクであった私とその少ない友人たちの間で流行していたのが、擬人

          その灯火の色は

          当湘鉄道物語 序

          「あっつ~!」  奈良原夕子は昇降口を出るなり天を仰いだ。中間考査が終わったばかりの開放感もあって、少しだけ大げさにはなっていたが、確かに初夏にしては暑い日だった。 「丁度お昼過ぎで一番暑い時ですしね。」  後からやってきた薗景子も夕子の隣で空を見上げ、おもむろに日傘を開いた。 「入りますか?」 「ありがとう、助かる~。」  夕子も真夏は日傘を持っているが、初夏なのでまだ持ってきていなかった。黒地に蝶の刺繍が施された日傘に入ると、幾分生きた心地がした。 「いえ。それよりも、夕

          当湘鉄道物語 序

          夏の雨

          竜宮の門をくぐれば海の街きみと渡った島を背にする 片瀬江ノ島駅の楼門をくぐり抜けると、どんよりとした曇り空が垂れ込めていた。折角の湘南というのに最悪の天候だが、むしろ自分の心情を現しているようで、そんなに気にならなかった。それに、ひゅるりと吹いたなまあたたかい風に目を向ければ、弁天橋越しには相模湾に浮かぶ江ノ島が見えた。長谷川さんの好きな景色がそこにはあった。 江ノ島に行ったカップルは別れる。 長谷川さんは去夏、そんな噂を知りながら恋人とデートし、そして今年の初夏頃に別れた

          インクブルーの夢

           私と初めましてではない方には申し訳ないほどであるが、性懲りも無く、鉄道の話である。  私が鉄道に興味を持ち始めたのは高校生の頃であったと思うが、大学に入学してから鉄道サークルに入部するほどには鉄道が好きになっていた。丁度夜行列車が続々と廃止されていた時期で、この話もその最末期のことである。夜行列車の中でも、特にブルートレインの、それも日本初の豪華寝台特急と称された北斗星の乗車経験は、今でも幸せな乗車記憶として時折思い出す。しばしお付き合い願いたい。  翌日に定期運行引退

          インクブルーの夢

          鉄道短歌を募集します【1番線】

           はじめまして、素人短歌詠みの青時(あおとき)と申します。  普段から鉄道を題材にした短歌を鉄道短歌と称して作成することが多いのですが、この度、皆様から鉄道短歌を募集し、ネットプリントを発行することと致しました。  鉄道といえば勿論科学技術の結集であり経済の動脈でありますが、一方では参詣列車など宗教的な側面を有していたり近現代の文学にも登場したりする文化でもあると言っても過言ではないと思います。  そんな多様な性格を持つ鉄道を、最近は時世によって苦しい経営状態が続く鉄道

          鉄道短歌を募集します【1番線】

          終日鉄道界隈 2番線

          高らかに詠うドレミファインバータ赤い翼で駆ける海空 さびしがりなきみへ届けるプレゼントサンタとしての京浜急行 全身で光を放つ誰一人迷わぬように電車は走る 座席にてミカンを剥けば立ちこめる夕日の匂い「次は湯河原」 それぞれにときめく星を包みこみ列車は結ぶ光のリボン 平常は魔法ではない一つずつ安全の星灯す指差喚呼 山間に汽笛一声澄み渡り鳥の心地で想うふる里 それぞれの命を運ぶ路としてどこまでもゆけ銀の血脈 真っ青な電車に乗れば観覧車、高層ビルも海原に浮く 帰るべ

          終日鉄道界隈 2番線

          ツキアカリ

           私が高校生の頃に初めて買ったCDがRie fuさんのツキアカリというシングルだった。当時まだできたばかりだった地元のツタヤでそれを探し求め手に取ったことは今でも鮮明に覚えている。  当時深夜アニメを見ることが好きだった私はDARKER THAN BLACKという作品を視聴しており、そのエンディングテーマがこの曲だった。  劇中のヒロイン的な立場の静かな女の子が、星空の映る白く淡く灯る月見草のような花開く湖面に座っている、本編のサスペンスアクションチックな演出とは真逆の穏

          終日鉄道界隈

          あさぼらけ夢か現か靄の中汽笛一声品川を出る あけぼのに溶ける流星追いかけて上り列車は朝を集める 朝ぼらけ普通列車は夢の中仔羊たちをやさしく揺らす 発車ベル歌う新幹線ホームへと駆け上がり夏が始まる 前髪はリップは爪は、きみの待つ街に着きますドア開きます 気動車は夏雲吐きつ海へ出る 車内に満ちるあをのプリズム 山間に汽笛一声 機関車の鼓動と共に加速する夏 機関車は入道雲を吐きながらあをき真夏の輪郭となる 煌めいて鉄路は伸びる蜃気楼 きみと永遠へと歩き出す 無機質

          終日鉄道界隈

          竹取鉄道かぐや姫専用列車

          月始発地球行き列車到着す 老駅長が藪で迎える お客様は神様ですか竹藪で金がざくざく湧出します 姫だけの部屋の名前はルナティックロイヤルシャインスイートルーム 所望した切符は偽物ばっかりで青信号は灯ることなし 無期限の特急券を帝だけ渡しておきます(※乗車券なし) 「地球発月行き列車発車しますどなた様もお見送り下さい」 白雲の車輪紫雲をたなびかせ列車は昇る一路月へと 最高地の駅で廃札処理をせば不死の煙は絶ゆることなし 「この先は終点ですよかぐや姫」「月も知らない続

          竹取鉄道かぐや姫専用列車

          青として、恋のような

          最初から一人ぽっちの恋だから 大海原で赤い糸噛む 三日月の舟ごと沈む切なさはシーツの波に寄せては返す うつつとは思えぬ夜の逢瀬から庭の白露止めどなく編む 思い出すのはその広い春のような背中ばかりで 雨柔らかに あなたとの距離は百里を越えるから洗面台で月を映して 車窓から海が見えたら青として生きよ 終点三崎口駅 (「みずつき」9,2020年初夏)  初投稿連作でした。今思えば脈絡の無い水関連の短歌を集めただけのデコボコな印象の連作ですが、一首ごとはそれなりに思い入

          青として、恋のような