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竹取鉄道かぐや姫専用列車

月始発地球行き列車到着す 老駅長が藪で迎える

お客様は神様ですか竹藪で金がざくざく湧出します

姫だけの部屋の名前はルナティックロイヤルシャインスイートルーム

所望した切符は偽物ばっかりで青信号は灯ることなし

無期限の特急券を帝だけ渡しておきます(※乗車券なし)

「地球発月行き列車発車しますどなた様もお見送り下さい」

白雲の車輪紫雲をたなびかせ列車は昇る一路月へと

最高地の駅で廃札処理をせば不死の煙は絶ゆることなし

「この先は終点ですよかぐや姫」「月も知らない続きがあるの」

(「あみもの」30号,2020年6月下旬)

 妙ちくりんという言葉がふさわしい連作。「竹取物語」の大体ストーリーに沿ってかぐや姫の到来に鉄道要素を盛り込んで9首作歌してみました。

 こんなへんてこりんな連作の発端は、最終首をうたの日で出詠した時に連作の一首のようというご指摘を頂いたことです。(因みにシンデレラバージョンが先でした)

 特に解説する……ということもないですが(笑)、8首目の「最高地の駅」は富士山で、5首目の「無期限の特急券」=不老不死の薬を「廃札処理」(切符を誤発売などとして処理すること)したということになります。…だいぶ鉄道ッ気が強かったでしょうか;

 編集長からこのかぐや姫は泣かなそうと選評された通り、鉄道という要素を加えたことで竹取物語の情義的な部分は薄くなり、システマチックな部分が前面に出るような連作となりましたが、最終首でかぐや姫のしなやかな強さを夢に見て……そんな印象を詠いこみました。

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